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#371.クラシカルなフロックコート

Posted by KINN Tailor on 03.2018 オーバーコートの話   0 comments   0 trackback
 先日、久し振りに「フロックコート」のご注文を頂きました。
 お客様がご希望のデザインの写真をお持ちになったのですが、かなりクラ
シック
なタイプで、私は以前見た事はあったものの、実際に仕立てた経験が
ないタイプの物でした。
 今回は、そのフロックコートについてお話したいと思います。

 まず簡単に説明しますと…下のイラストのタイプが基本のフロックコート
のデザイン
になります。
 1800年代は、このデザインでダブルとして前の釦を全て掛けて着ていまし
た(一番上は飾り)。
フロック基本形

 その後、デザインはそのままで前を拝み釦にしてシングルとして着るよう
になり(左下のイラスト)、現在でも一般的にはそのような着方となってい
ます。この着方ですと上着を着ていてもベストが見えますし、釦から裾まで
が綺麗に開きます
ので、全体的に華やかな雰囲気になります。それがフロッ
クコートの人気の秘密と言えると思います。
フロックの現代&今回
 右のイラストが今回ご注文頂いたデザインで、特徴はダブルにした際に全
ての釦が掛かるようにしている
事と、袖口にカフが付いているという点です。
 私はこのデザインのフロックコートを実際に見た事がありませんでしたが、
お客様がお持ちになった写真はそのようなっていましたので、きっとこれが
フロックコートのクラシックなのだと思います。
 ただ、実際にお召になる際にはシングルとして…というご希望ですので、
その辺りの風合いの違いがどうなるかは、後日仕上がってからご覧頂く事
にしたいと思います。

 次にベストです。ベストはダブルで襟付きのデザインです。
    フロックベスト**
 特徴としては、上着と同じように前身の中央に縦の縫い目がある…という
点です。
 昔の礼服は全てそうでしたが、上着の端をワナにして裁っていたため前身
の中央に縫い目線
が入っていました。現在ではこの裁ち方はフロックコート
だけですが、昔はベストも端をワナにしていたのかも知れません。
 今回は、「そこまでする必要は・・」という事でしたので、縫い目線だけ
入れたデザイン
にしました。

 いつも礼服を作らせて頂く時には、特別な気持ちになります。
 今回は、既になくなってしまった昔のデザインのフロックコートを作らせ
て頂く機会に恵まれ、お客様以上に私がワクワクしている感じです。
 既にお客様にお許しを頂いていますので、完成した際には本ブログで紹介
させて頂きます。

#370.藍染の絹の話

Posted by KINN Tailor on 19.2018 生地の話   0 comments   0 trackback
 以前このブログで、藍で染めた絹生地の話を紹介した事があります(#39.
藍染の絹)。

 この生地は、繭から糸を紡ぐ事から始まり、糸を染め、手機で織って布に
する迄の工程が、全て手作業で行われます。
 #39.でも書きましたが、糸は鹿児島で紡ぎ徳島で藍染めをし、八王子
で織る
・・という段取りですので、特殊な技術だけではなく、手間も時間
もかかっている生地なのです。
 特に、本来の生地幅は58㎝なのですが、私の要望で75㎝迄広げて織って
貰っていますので、更に労力を掛けている事になります。

 あるお客様にこの生地を紹介したところ、大変気に入られて、すぐに一着
仕立てられました。
 そして暫くしてから「あの藍染めの絹でもう一着…」というご要望を頂き
ましたので、問屋さんに連絡したところ「これが最後の一反になります…」
と言われてしまいました。
 残念な事に、職人さんが高齢のためにお辞めになってしまった・・との事
でした。

 この藍染の絹も長い間使わせて頂きましたが、もう手に入らないというの
が何とも残念で、多少織りが違う58㎝幅の物がもう一反ある…と聞きました
ので、併せて取り寄せました。

 「藍染の絹」で仕立てた一着をご覧いただきます。

◇お客様の藍染絹ジャケット
シルク正面**

 藍独特の色味が絹という素材と合う事で、光沢のある美しい上品な藍色
変化した、素晴らしい逸品です。この生地がなくなってしまった事は、返す
返すも残念でなりません。

 問屋さんが、この生地を納めにみえた時に古風な大島紬を一緒に持って来
てくれました。
 こちらは模様を織るのにかなり苦労された・・と仰っていただけあって細
かい見事な柄に仕上がっています。
「これで、シャツでもどうでしょう?」・・と言われましたが、大変高価な
生地ですし、この柄を活かすのはやはり和服ではないか…と思いますので、
取り敢えずお預かりしている状態です。

※もし興味の有る方がいらっしゃいましたら、ご連絡頂きたいと思います。

◇藍染絹の大島紬
シルク生地**

シルク生地寄り**

シルク箱**

#.369 カラーの話

Posted by KINN Tailor on 05.2018 カラーの話   0 comments   0 trackback
 前回、硬く仕上げるカラー(スティフ カラー)についてお話をしました
が、あのカラーを仕上げる器具のイラストを見て「おや?」と思われた方も
いらっしゃったのではないでしょうか?
 私の説明不足でしたが、そもそもあの器具は、取り外しができるカラー
時に使用する物なのです。今は殆ど使われていませんが、以前の礼服には、
このタイプのシャツを着用していました。
 昔は、カラーは硬くピンと張った状態であるべき…と考えられていたから
でしょう。確かにその方が綺麗で折り目正しい印象になるかも知れませんが、
カラーを仕上げる職人さんが減ってしまった為か、取り外しが面倒だからか、
そこまでキメなくても良くなったのか・・理由はわかりませんが、いつしか
お目に掛からなくなってしまいました。

 どのような構造になっているのか、知りたい方もいらっしゃると思います
が、残念ながら私の手元にそのタイプのシャツがないので、イラストでその
取り付け方をお見せします。
カラー1**
 まずシャツですが、カラーを上から乗せられるように土台が付いています。
次にカラーを止める為のスタッズ前用は先端が丸い形をしています。後用
は先端が上下
します。そして硬く糊付けしたカラーです。
カラー2**
 取り付け方ですが…スタッズ土台に取り付けます。前の方は土台が二重
になっていて、その間に差し込むようにします。
 土台にカラーを乗せ、後側のスタッズの先端を下げて固定し、前側のカラー
の両端を重ねてスタッズで留めます。これで完成です・・が、燕尾服やタキ
シードの場合は前釦も取り外し式でしたから、カラー、釦、袖口のカフなど、
全て取り付けるとなると少々手間だったかもしれません。

 英国では今でも使われているようで、あるカタログに載っていましたので、
ちょっとご紹介します。
カラー3**

 このカラーについては、ちょっとしたエピソードがあります。
 随分昔の事ですが、お客様がシャツをお召になった後ネクタイを締めよう
としたけど、滑らなくて締められない。その日は大切な用事があるのでどう
にかならないか…という連絡が入りました。
 幸い遠くのお客様ではありませんでしたので、至急ご自宅に伺い見せて頂
きました。
 拝見したところ、カラーは堅く仕上がっていましたが、光り方が足らない
ように見えましたので、「これは砥石で磨かなかったのか、磨きが足りない
のだな・・」と思いました。
 そこで綿を丸めてカラーをこする事にしました。30~40分は磨いたでしょ
うか・・カラーの表面がツルツルになり、無事にネクタイを締める事ができ
ました。
 やはり、きちんと磨く技術を持ったクリーニング職人さんが仕上げないと
上手くはいかないな…と、痛感したものです。

 最後に、スタッズ(後ろ用)が手元にありましたので紹介します。
カラースタッド開** カラースタッド閉**
この状態で穴に差し込み… 留める

#368.麻のクリーニングの話

Posted by KINN Tailor on 22.2018 裏地の話   1 comments   0 trackback
 前回「麻」の話をしましたが、ご存知の通り麻は服だけでなく、テーブル
クロスやカーテンなどにもよく使われています。
 真っ白な麻のクロスでセットされたテーブルは、如何にも清潔な感じがし
て良いものです。

 私が港区から現在の広尾へ越して来てまもなく、駅の近くにクリーニング
を見つけました。そこは、主にレストラン用のリネンを洗っているお店で、
白い物を洗うのが得意…との事でした。リネンだけではなく綿のシャツなど
も扱っていました (今でこそ礼服のシャツは綿が主流ですが、麻のシャツ
を好まれる方も当時は多くいらっしゃいました)。
 そしてシャツのカラーを硬く仕上げるのが、この店の特徴でした。ところ
が、この"カラーを硬く仕上げる"…というのがなかなか難しいらしく、私共
のお客様の中にも、いつも出しているクリーニング店では上手く仕上がらな
い…という理由から、私共へ持ち込まれる方もいらっしゃいました。
 現在は殆どいらっしゃいませんが、昔は私共に服のプレスやシャツのクリ
ーニングを依頼される方も多くいらっしゃいました。・・と言っても、私共
でクリーニングができる訳ではありませんので、仕上げが上手なお店を探し
てお願いしていました。

 その広尾駅の近くにあったお店は、綺麗に洗ってくれるだけでなく、カラ
ーも希望通りに硬く仕上げてくれました
ので、「良いお店に出会ったなぁ」
と喜んでいました。以来、数年はお願いしたでしょうか・・・。
 ある日、またシャツのクリーニングをお願いしにお店に行くと、「誠に申
し訳ありませんが、カラーを仕上げる道具を使える職人が年をとって辞めて
しまったので、お受けできません」…と言われてしまいました。
 その時にお店の人が、カラーを仕上げる道具を見せてくれて、どうやって
仕上げるかの説明をしてくれました。
 残念でなりませんしたが、辞めてしまったのであれば仕方がない・・と、
説明だけ聞いて諦めて帰って来ました。
 後でよくよく考えてみたら、そいういった技術を持った職人さん達もどん
どん減っていくでしょうし、その道具自体もいずれなくなってしまうでしょ
うから、何故その時に無理を言ってでも道具を譲って貰わなかったのか!
と、大いに後悔しました。
 実際私にできたかどうかは不明ですが、貰っておけば良い記念になった
かも知れず、つくづく残念でなりません。そんな時に"もう一押し"してみる
ところが無い…と言うか下手なのが私の欠点かな、と思っています。

 最後に、そのクリーニング屋さんに説明された糊付の方法を紹介します。

麻のクリーニング**

#367.麻の話

Posted by KINN Tailor on 08.2018 生地の話   0 comments   0 trackback
 今年はいつもの夏に比べ、麻服のご注文を多く頂きました。

 昔は「夏と言えば白の麻服」というのが定番で、春頃から麻ばかり仕立て
ていた記憶があります。ところが近年、夏用の「モヘア」(アンゴラヤギの
毛)が増えてきて、麻に比べシワになりにくい特徴があったため、麻に取っ
て代わって使われるようになりました。
 また、全体的に薄い生地が好まれるようになった傾向もあり、ただでさえ
シワができやすい麻は、薄くすると更にシワができてしまう事が敬遠されて
しまったのか…生地その物が減ってしまいました。

 麻の需要が減った時期は、20年位続いたでしょうか・・私は、シワになる
特徴も"味"があって良いと思っていましたので、何となく淋しい思いをして
いたのですが、薄い生地の流行りもどうやらひと段落したのか…最近また昔
のように肉の厚い麻の生地が見本に載るようになりました。
 麻の復活を内心喜んでいたところ、たまたまお客様のご要望と上手くタイ
ミングが合った訳です。

 そんな流れの中で、あるお客様から「大麻」について知りたい…というご
要望がありましたので、少しお話します。
 ひと言で「麻」といっても種類があります。衣料として使われているのは、
亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)の3種類です。
 私が今まで扱ってきた麻は亜麻から採れる繊維で「フラックス」と呼ばれ
ている物で、輸入生地では主流のようです。苧麻は日本では良く使われて
いるようで、小千谷縮(おじやちぢみ)などがあります。
 大麻についてはあまり知識がなかったため、少し調べてみたところ・・・
日本ではかなり古い時代から使われていて、特に神道では「ぬさ」と呼ばれ
"お清め"をする素材として用いられてきたそうです。麻の中では堅い部類
で、麻縄や麻袋に使われる事も多いようです。
 最近では、一般的な服地の布としても出回っていますが、フラックスに比
べるとやや堅い
仕上がりで、質問なさったお客様も実際に見本を見られて、
やはり「堅い」という印象を持たれたようでした。
 麻は質感が良く、肌に触れた感触が何となく"ひんやり"しているのが魅力
です。この流行が続いてくれる事を願います。

     *   *   *   *   *   *

 先日久々に、お得意様から真っ白の麻のスーツをご注文を頂きました。

◇お客様のスリーピース(ダブル)

〈正面〉                〈ベスト〉
麻正面**   麻べすと**

〈寄り〉
麻 寄り**
・生地は、アルスター・ウェーバーズ(ULSTER WEAVERS)社(UK)製
 の100% Linen (700g)

・夏らしい爽やかな風合いと高級感の相まった、極めて良質な生地です。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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