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#418.袖の話 その参

Posted by KINN Tailor on 21.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 袖の仮付けが終わりましたので、今回は「本縫い」と「綴じ」について
説明します。

 まず「本縫い」ですが、私は穴糸を使って返し縫いにします。
 この時一番気を付けなければならないのは、糸を強く引き過ぎない…と
いう点です。
 手縫いの場合目が粗い気がして、糸を強く引き過ぎてしまう事があるよう
ですが、手縫いの良さはミシンのように縫い目が硬くなり過ぎない事です
ので、それを忘れないようにして下さい。
 手縫いは苦手…という方がいらっしゃると思いますが、アームホールは小
さいのでミシンを掛けるのは意外と大変です。
 手縫いで真っすぐに縫う事ができるのであれば、手縫いをお勧めします。
手縫いですと様子を見ながら縫っていけますし、慣れればミシンよりも遥か
に楽な事がお判りになると思います。

◾︎本縫いの糸」を入れていく
070705056**

 袖の本縫いの次は、いよいよ綴じを入れていきます。
 綴じはジャケットの手縫いの中で、最も難しい作業と言われています。
身頃と袖肩パッド裏地など、沢山の違う素材の物をまとめて止めなけ
れば
なりません。
 こちらも本縫いと同様に、糸を硬く入れ過ぎると袖が動かなくなってしま
います。袖の綴じが上手くできたか否かで、後々の着心地に大きく影響して
きます。

◾︎垂れ具合を確認する
袖3-1**
まず袖が付いている所に片手を入れ、もう一方の手で上から抑えて袖付け
 の状態を確かめ
ます。
 縫い目に問題がなく袖が綺麗に落ちているようでしたら、綴じに入ります。

◾︎押さえ躾を入れる
袖3-2**
綴じの時に意外と厄介なのが、裏地です。
 裏地を綺麗に収めるために、裏地が弛んででいないか確認しながら、まず
 身頃に躾糸を入れます。
次に、袖付けの縫い目に躾糸を入れます。縫い代は袖側に倒します。
 表側から裏側までしっかり糸が通るように押さえます。

◾︎袖周りに綴じ糸入れる
袖3-3**
躾糸を2本取りにして綴じていきます。裏地側から先程縫い目に入れた躾糸
 をガイドに縫い目ギリギリの所に糸を入れます。
糸の入れ方は、裏地側を長く、袖の内側は短く糸が出るようにします。
 は布に対して直角に入れるのではなく、斜めに入れるようにします。
 そうすると生地の中に長く糸が入るのでループが長くなり、伸縮が効くよう
 になります。
糸はキツくせず、ゆったりと入れます。
 糸を細かく入れ過ぎるのも、硬くなる要因ですから気を付けて下さい。

070705060**
*躾糸2本取りで、ゆっくり入れていく。     
070705070.jpg
*綴じが入りました。

 次回は、「仕上げアイロン」について解説します。

〈つづく〉

#417.袖の話 その弐

Posted by KINN Tailor on 07.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 今回は、袖付けについて説明したいと思います。

 通常は、アームホールの大きさに対して山袖側で2cm、下袖側で1.5cm
程大きくなるようにします。
 山袖側を大きくするのは、袖山を丸く綺麗な形にする為の措置で、下袖側
腕を動かし易くする為に必要な「ゆとり」となります。
 袖が細いのは見た目は綺麗で良いのですが、腕は想像以上に動きがありま
ので、その事を考えると下袖側も大きめにする必要があります。
袖弐イラスト1

 袖を身頃に付ける前に、山袖側を丸くする作業をします。
 イラストにあるように、b' からc' の間に糸を入れて縮めます。糸が入って
いる所は実際に縫う所よりも上になりますので、大きくした 2cm分引いても
丁度良くはなりません。ですので身頃の の長さと、縮めた状態の b'
c’の長さを確認しながら引くと良いと思います。
 糸を引いた後は縮めて丸くなった山にアイロンを掛けます。ウールやカシ
ミアなど柔らかい生地は、あまり考えなくてもすぐに綺麗な形になりますが、
硬い生地は綺麗に丸くならず、シワがよってしまうことがあります。こうした
生地の場合はいきなり丸くしたい所にアイロンを当てるのではなく、もっと
下の方から・・・腕側から山に向かってスチームを掛けながら少しずつ丁寧
に形を出していく
と上手くいくと思います。

◼︎糸を入れてアイロンを掛けた状態
070705042**

 袖山が形になったら、身頃と縫い合わせていきます。

 まず印を合わせて躾糸で止めていきますが、様子を見ながら細かめに針を
入れた方が良いです。理由は袖は殆ど全てがカーブなので細かく入れないと
綺麗なラインが出ません。
 躾糸を入れた後に垂れを見て、(下図のように)何か問題があったらこの
時点で解決します。

◼︎よくある事例
袖弐イラスト2
・①、②は袖を付けた位置が合っていないだけですので、袖を外して a' 位置
 を移動させて付け直せば
解決します。
・③は山が高過ぎる(とんがり過ぎている)ので、山を削って付け直せば大丈
 夫です。
・④は少々問題です。山袖に余分な布が付いていれば、山を大きくすれば解決
 しますが、大抵は布が付いていません。その場合どうするか・・・
 下袖のカーブを深くして袖全体を上に上げます。当然ですがb、c の合印
 は合わなくなります。そして袖が上がった分、長さが足りなくなりますので、
 袖口を出して調整します。
*これはどちらかと言えば「あまりやりたくない」事ですので、製図の際に袖山
 の形には充分注意して下さい。

◼︎仮止めが終わった状態
070705047**

 次回は「本縫い」について解説します。

〈つづく〉

416.袖の話 その壱

Posted by KINN Tailor on 24.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 厳しい暑さが続いていますが、皆様お変わりありませんでしょうか・・。
 前回迄は少し夏休み気分で、"懐かしい話"などをして来ましたが、今週から
はまた"技術の話"をしたいと思います。

 私塾の生徒さんを始め、メールなどで質問が多いのが「」についてです。
 私が仕事を習い始めた頃に、ベテランの職人さん達が口を揃えて「袖付け
は難しい
」と言っていた事を思い出します。
 袖は特殊な形をしていますし、狭いアームホールに袖を付ける作業は、慣
れない内は苦労するものです。縫い合わせた時の糸の加減で、着心地や腕の
動き
が全く違ってしまう・・という点でも、"それなりの経験と技術"が必要
という事になります。
 そこで、袖付け綴じる時のポイントを説明したいと思いますが、その前
に…
「採寸も製図も間違えていない筈なのに、どうも袖が上手くいかない」とい
う事はないでしょうか。
 そのような場合、次の点を見直してみるといいかも知れません。

①アームホールのカーブ
アームホール**

 カーブを描く時に、腕を動かし易くしたい…という気持ちがあると、つい
カーブを深く描いてしまう事があります。ところがこれは逆効果で、カーブ
が深くなると袖は動かしにくくなります。
 特に腕は前に動かす率が高いので、後身頃のカーブが深過ぎてしまうと、
腕が前に出にくくなり、背中に横シワも出てしまいますので注意しましょう。

②袖のカーブ
袖**

 山袖と下袖でも、フリーハンドで描くカーブがあります。
 よくあるのが、山袖の前の張り出しが足りない、または下袖のカーブが深
過ぎる
ケースです。
 仕上がった袖を見ると、山が丸く見えるかも知れませんが、それはユキ綿
やパッドが入っているからで、腕の骨は肩より前に出ている分、張り出し
必要になる訳です。袖山の形をもう一度チェックしてみましょう。
   
 出来上がったジャケットの画像が送られてきて、質問される事もあります。
 写真を拝見すると「この服は袖山の高さが足りていない」と思う事がよく
あります。
 もし肩の縫い目が波を打ったようになったり、肩に問題がないのにツキが
出てしまう
場合は、袖山の高さが足りないのかも知れません。張り出しでは
なく、高さそのものが足りないのです。
 お客様が変わっても同じトラブルが出るような場合は、製図の描き方の見
直してみるのも一つの解決策だと思います。

 次回は、「袖付け」についてお話しします。

〈つづく〉

#415.習い事の話

Posted by KINN Tailor on 10.2020 習い事の話   0 comments   0 trackback
 新型コロナウイルスの影響が長引き、思うような事ができない日が続いて
います。4~5月は東京都の要請に従って、塾も休んでいましたので、時間を
持て余していました。

 子供の頃は、(以前にも紹介したように)飛行機を作ったり、鉄道模型に
凝ったりしたものですが、仕事を始めてからは正に"仕事だけ"の生活でした
ので、今回のようにポッカリ時間が空いてしまうと何をしていいものか・・
思いつきません。
 少し前には、頭の体操を兼ねてパズルなどをしてみましたが、どうも性に
合わない・・と言うか、多分そんなに好きではなかったようで、答えがわか
らなくなった時点で諦めてしまって続きませんでした。

 そんな時に、ふと「昔できた事を復習するのは?」と思い、漢字算数
のドリルを買ってみました。「オトナの為のやり直し」…という題名が付い
ている通り、なかなか上手くできています。
 ごく簡単なところからスタートしますので、間違える事もなく”イイ気分”
で進められます。
 漢字の方は、皆さんそうだと思いますが、「読めるけれど書けない字」が
多く、これもいい復習になると思って毎日少しずつですが続けています。

習い事

 最近、娘が「水墨画」を習い始めました。私は水墨画の経験はありません
が、父が習っていた事を思い出しました。
 父の時代は近所に洋服屋がまだたくさん有り、父がまとめ役のような立場
だったので、結婚式によく呼ばれて祝辞を述べたりしていました。
 祝辞の最後に新郎の名前の一文字を入れた短歌を読み、その場で短冊に
描いていました。
 これが結構評判になってしまい、呼ばれる度に頼まれるようになりました。
 そうなると父も張り切った…と言うよりは、失敗してはいけないと思った
らしく、前もって短冊に描くようになったのですが、そこに墨絵を添えたく
て、水墨画を習い始めたようです。
 ご存じの通り、水墨画は"墨の濃淡"だけで表現していきますが、これが
相当難しいそうで・・・筆の先を四角く整え、両側を濃く、内側が薄くなる
ようにスッと描き「葉」を表現する・・と父が言っていたのを思い出します。
 私は子供の頃に書道を習っていましたので、この機会に書道を習い直して
みるのもいいかも知れないと思いました。
 聞いてみると、水墨画教室はウチから歩いて15分位の所にあり、良い運動
にもなりそうです。早速見学に行ってみましたが、平日・午前中という時間
帯もあり、少人数で皆壁を向いて黙々と描いている感じですので、安心して
通えそうです。

 新型コロナの一日も早い収束を願うばかりですが、その間に身体も気持ち
も衰えないように、少し気分を変えて挑戦してみようと思っています。
 皆様も、コロナウイルス猛暑に負けないようにお過ごし下さい。

#414.御殿場での冒険

Posted by KINN Tailor on 27.2020 懐かしい話   0 comments   0 trackback
 今回も御殿場時代の話をしたいと思います。

 御殿場の家は、駅から箱根方面へ30分位歩いた所にありました。
 当時はコンビニエンス・ストアなどは勿論なく、買い物ができるお店は駅の
周辺に纏まっていました。
 ですから、何か必要な物があると自転車で買い物に行くのが常でした。
 私が11~12歳の頃、御殿場には疎開をしていた訳ですが、駅と家の間にある
牛乳屋さんの子供と仲良くなりました。
 いつも近所で遊んでいましたが、だんだん親しくなると「ちょっと遠くに
ってみようか・・」という話になり、自転車で出掛ける事になりました。

  自転車**

    二人共、荷台の付いた普通の自転車でした

 御殿場駅は、昔の東海道本線の東京〜沼津間で一番高い所(海抜500m)
にありましたし、家があった場所もほぼ同じ高さでしたので、どの方向に行
っても下り坂になる訳です。
 駅から東側は「旧御殿場」と呼ばれていて、学校などがありましたので良
く行っていましたが、西側は特に名のある建物がなかったので、あまり行っ
た事もなく、私達にとっては"未知の世界"でした。
 二人で相談をして「じゃあ西側を探検しに出かけよう!」という事になり、
ある日お昼ご飯を済ませて、午後1時頃に出発しました。

 御殿場は杉や檜の林が沢山あって、「一日中陽が当たらない道」と言われ
ている所もありましたので、子供の私達にとっては正に"冒険に行く!"…と
言った気分でした。
 駅を超えてどんどん走って行きます。下り坂ですから走るのは楽で、田や
畑や小さな川など田舎の景色を満喫しながら進んでいきました。
 どの位走ったでしょうか…時間にして1時間半以上は走ったと思います。
 どこまで走って行っても田や畑しかないので、だんだん風景に飽きてきた
事もあり、「そろそろ止まって休むか・・」という事になりました。
 止まってみると、走る事に夢中になっていて何もない所に来てしまった
・・という気分になり、そうなると(子供ですから)ちょっと不安になって、
どちら共なく、「帰ろう…」という事になりました。
 来た道を戻れば良いのはわかっていたのですが、ちょうど歩いてきた人に
「あっち(戻る方向)に行くと何処に出ますか?」と聞くと、「ここをずっと
行くと“御殿場”に行きますよ」と言われました。
 その言葉を聞いて、「しまった!」と思いました。つまり自分達は走る事
に夢中
になって御殿場の外まで来てしまったのです。来た道をハッキリ覚えて
いる訳でもなく、更に帰りは延々上り坂になる訳でから「これはまずい・・」
と思いました。
 帰り方を相談しましたが、二人共来た道を確実に戻る自信はなく、とりあえ
ず"鉄道の線路"を探す事にしました。
 この判断が我ながら良かったと思います。線路沿いの道の方が、下って来
た道よりは多少緩やかな坂になっていましたし、道に迷う事もありません。
 それでも上り坂には違いありませんので、二人共必死で自転車を漕ぎ、疲
れると自転車から降りて押して歩いたりしました。
 その内に列車が1本通り過ぎたのを見て、「これで無事に帰れる」と思って
ホッとしました。

 家に着いたのは午後6時過ぎでしたから、帰りは3時間以上かかった事にな
ります。線路沿いを走らず、来たままの山道を戻っていたら一体どうなってい
たか?…と思いますし、タイヤもパンクしなくて本当に良かったと思います。
 行きに観た景色は良かったですし、爽快で楽しかったのですが、その後は
二人で「遠出をしよう」…という話は二度と出ませんでした。
 その後東京に戻ってからはあまり自転車にも乗らなくなり、これといった
"冒険"もしませんでしたので、私にとっては貴重な経験でした。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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