Loading…
#004.ツレデ

洋服の専門用語の中で、外国の名前をそのまま使っているものも多くあり
ますが、少し変わった形で使われているものもあります。そんな例をご紹介
しましょう。
英語で糸のことを「スレッド=thread」と言いますが、これが日本の音に
なって「ツレデ」と云われるようになりました。
ところが、面白いことに「糸」は全部「スレッド」の筈なのに、日本では
ボタン付けに使う太い麻の糸だけが「ツレデ」という名前で呼ばれるように
なりました。
麻のツレデは、ボタン付け用の糸としてはとても良い特徴があります。
引っ張る力に対して大変丈夫である…ということです。次に麻の性質として
擦れるとケバが立つということがあります。
ボタンを付ける時、服地にボタンを付け、その間を糸で巻いていくのです
が、これが柱のようになります。この柱のまわりにケバがでることによって、
ボタンホールが擦れてしまうのを防ぐ効果があるのです。実に良く考えられ
ていますよね。
でも、最近では麻を使わずに化繊の糸を使っているところが多いようです。
確かに、引っ張る力に対しては化繊の方が麻よりも強いと思いますが、化繊
は摩擦にも強いですから、自分がケバ立ってボタンホールをカバーする…な
んていう芸当はできないのではないかな? と余計な心配をしてしまいます。
残念なことに、今は麻のツレデが入手できない状況なので、私も手持ちの
ツレデがなくなったら、いずれ化繊糸に切り替えることになるのでしょう。
そして、とても傑作!だと思うのが、この化繊のボタンを付ける糸の名前
が「ツレデール」ということです。
若い方がいきなり「ツレデール」だけを見たら、いったい何が語源なのか
きっと解らないでしょうね。

*縫っている内にツレデがずれないように、糸をよってから付けます。
trackbackURL:http://kinntailor.blog98.fc2.com/tb.php/9-a59ed479