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#61.父の思い出 その弐

Posted by KINN Tailor on 23.2012 父の話   0 comments   0 trackback
 先週に続いて、もう少し父の話を聞いて下さい。

 父はとても研究熱心な人でしたが、紳士服以外の事にも興味があったのか、
いろいろと「工夫」をする事がありました。
 印象に残っている一つに…「洋服の生地を使って和服を作る」というのが
ありました。つまりミシンを使って縫った…という訳ですが、なぜこのよう
な事を思いついたか?…はわかりません。時代的に、母がいつも和服を着て
いたからかも知れません。
 和服用のコートも作っていました。下図のように袖の所が丸く「舟形」に
なっています。後に聞いたところによると、どうやらこの「船形コート」
作ったのは、父が日本で最初だったようです。
舟形コート**

 今では何でもないデザインのコートですが、当時としてはとても変わって
いたようで、母がこれを着て外出すると、皆が珍しがって話しかけられる事
が多く、「何とも恥ずかしい」とよく言っていた記憶があります。

 当時の父は、洋服組合の副理事長をやっていたせいもあるのでしょうが、
自分の職人さんにだけでなく組合の仲間にも、海外で仕立てられた服を見せ
ては、その縫い方の説明などをよくしていました。
 若手の方などは、よく仕事の相談にもいらしたようです。

 普通の洋服屋さんは、燕尾服の注文が入ることは滅多にないようですが、
たまに、「服部さん!燕尾服の注文を受けてしまったので、ちょっと教え
て下さいませんか」…という事もあったようです。
 こういう時も随分丁寧に教えていたのですが、時々私に・・・
「おい、ちょっと燕尾の型紙を作って差し上げなさい」と言いつけてきた事
もありました。

 父は洋服業界全体のレベルを上げたい…という気持ちも随分あったように
思います。
 父が服を作っている時の事を思い出してみると、仮縫いができると鏡の前
に行って服を羽織ってみて、タレ具合や身体の動きについて来るか…などを
見て、また直し、また羽織る・・・という事を繰り返していました。
「良いものを作りたい」気持が、とても強かったのだと思います。
 ある日私に「プロとして仕事をするということは、その仕事を好きでなけ
ればダメだよ。好きでなければ長続きしないよ」と言ったことがあります。
まさにこの言葉通り、服作りが好きで、最後まで作り続けた人だったと思い
ます。
       *   *   *   *   *

 この時計は、店を改装した時に洋服組合のお仲間から贈っていただいた物
です。「明治時計社」製で、卓上時計なのに振り子時計です。
時計
 この時計は広尾の店にも飾って、ずっと使っていましたが、しばらく前に
金属の部分が擦り減って動かなくなり、部品も今では作られていないという
事で修理不能になりました。
 動かなくなってはしまいましたが、父がお仲間から頂いて大切にしていた
記念品なので、今もインテリアとして店の片隅に飾ってあります。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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