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#55.前突きオーバーコート

Posted by KINN Tailor on 12.2011 オーバーコートの話   6 comments   0 trackback
 前回に引き続き、オーバーコートのお話です。

 以前は全体的に生地が肉厚だった…とお話しましたが、オーバーコート用
の生地は特に厚くできていました。
 よく使われていたのはメルトンでしたが、この布地で特に厚く織られてい
たものは、切り口が玉のように丸まった感じになり、そのままでもホツれて
きません( “玉ラシャ”と呼んでいました)。
 この性質を利用して、「前つき」という技法が使われていました。
 ご存知の通り、服の前の部分は表地(身頃)と見返しを縫い合わせて返す
訳ですが、縫い目のところは縫い代がありますので、表地・縫い代・見返し
4枚重ねになるのでとても厚くなってしまいます。
 そこで、これを何とか薄く作ろうという工夫をした訳です。

 一つの方法は前を「わな(見返しを身頃につなげておく)」にするのです
が、これは自由な形を作るのが難しいので何にでも向く訳ではありません。
そこで「ほつれ難い布の性質」を利用した縫い方が工夫されたのです。
 つまり前身の布地を前の端で切ってしまわず、少し裏(見返し側)へ回る
だけ広く切ります。
 裏の部分…つまり見返しは前の端より少し引っこんだところで切っておき、
この2枚の生地の端を突き合わせにして、糸でからげてゆくのです。

      前突き画 a*

 つまり図a.のようになり、前の端は布地2枚の厚さになりますから、大変
薄く感じられる訳です。
 今では手でからげる…などという仕事は、あまりやらなくなってしまい
ましたが、出来上がりはとても綺麗なものです。

 さて、ここで一つ問題なのは、ラペルがある場合どうするか?…です。
 つまり、図b.のように返り点から上は見返しの方が表へ出る訳ですから、
切る位置をずらさなければなりません。
前突き画 b*

 そこで、身頃は返り点から下を出し内側で見返し側はラペルの部分を
広くして返る側でからげる
…というテクニックが使われたのです。器用な
日本人ならではの仕事なのかも知れません。
 ご注文されたお客様の中には、この「突き合わせを綺麗にからげている」
技を人に自慢する…なんていう方もいらっしゃったようです。
 12月に入り急に寒くなりましたが、本当に寒い日は少し重量のあるコー
トが懐かしく思い出されます。風邪など召されませんよう皆様ご自愛下さい。

こんにちは
お嬢さん作のマント&ポンチョ
とても素敵ですね
・・・・・・・・・
重さで思いつくのが
重いほうが何となく暖かく感じる
という事です
今流行りの軽量◯◯やライト◯◯
確かに暖かいのですが、
私にはどうにも物足りなく
厚手のコートの出番と相成ります
重さを敬遠される方も居られますが
肩~アームホール~胸の部分を
掴まれるようなサイズ&仕立であれば
重さは感じません
目下お気に入りはUSネイビーの
ピーコート(ジャケット?)です
US34という小さいサイズなので
フィット感のおかげで
決して重く感じません
・・・・・・・・・・・・・
ブログ楽しみにしております

2011.12.12 21:58 | URL | のぼる #- [edit]
のぼる様

 コメントありがとうございました。
マントとポンチョおほめ頂いて恐縮しております。
コートの件ですが・・・
確かに厚くて重い生地の場合、大きく作るほど
余分な布地を動かしている感じになりますので
肩まわりと袖付けのフィットが最も大事になって
くるのだと思います。
今後とも宜しくお願いいたします。
2011.12.15 13:38 | URL | 服部 晋 #- [edit]
イクオリティのドロップ寸は如何程でしょうか?
2011.12.18 23:47 | URL | みうら #- [edit]
みうら様

 ご質問ありがとうございます。
イクオリティのドロップですが、
6で考えていますが、胸をややタイトに
設計していますので、5~6とお考え
下さい。

宜しくお願いいたします。
2011.12.20 10:57 | URL | 服部 晋 #- [edit]
貴重な仕立てのお話おりがとうございます。
確かに分厚い生地で、見返し有りの場合、
表地と見返しは、通常端部へ持ってこざるを得ず、
(でければ、端部から内側へ入った部分に膨らんだラインが入ってしまう。)
そこは生地4枚分の厚さとなりもっさりしたエッジの服に
なってしまいます。(それも味かもしれませんが)
既製品で、超分厚い生地を避けるのはそのへんの理由もかるのかもしれませんね。
これを避けるには、服部さんの仰るように、
折り返した見返し側で突き付けて、からげるしかなく、
それには超厚い生地では玉ラシャが必須になっていたというところでしょうか。
ウールはフェルト化する性質があるので、
現代でも手を掛ければ玉ラシャは製作可能だと思うのですが。
2011.12.23 23:51 | URL | リカルド #- [edit]
リカルド夙川様

 いつもコメントありがとうございます。
玉ラシャとは呼ばれていませんが、現在でもホツレにくい
メルトンは作られていますので、前突きにすることはできます。
ただ、厚い生地そのものが好まれるかどうか、、の方が問題
だと思います。

今後とも宜しくお願いいたします。
2011.12.26 11:36 | URL | 服部 晋 #- [edit]


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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