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#46.ピンの話

Posted by KINN Tailor on 10.2011 アクセサリーの話   0 comments   0 trackback
 服の仮縫いをする時に、余りやシワが出た所にチョークで印を付けたり、
「ピン」を打って様子を見たりします。この、何気なく使っている「ピン」
ですが、実は仕立ての仕事ではとても大切なものなのです。
 ピンの素材は、真鍮か鉄です。
 真鍮は鉄に比べるとやや柔らかいので、硬い布に刺したりすると曲がって
しまうことがありますが、鉄のように折れてしまう危険性はありません。
 長さや太さも種類があり、生地の状態で使い分けます。
 紳士服のテーラーの場合は、扱っている布がかなり厚い場合がありますの
で、真鋳のやや長めのピンを使うことが多くなります。
 私は、通常2種類のピンを布の厚さに応じて使い分けています。

        ピン 写真*

 ピンで最も大切なことは「刺しやすい」ということで、そのためには先が
鋭くないといけません。
 随分と古い話になりますが…フランスからピエール・カルダン氏が初めて
来日された時のことです。
 ある方のご紹介でお目にかかりましたが、それは丁度受講生の前でゴース
とピンを使ってワンピースの形を作る実技を見せていた時でした。
 その際に、主催者側が用意していたピンが刺しにくかったらしく、「ピン
が悪い、ピンが悪い」と言っていました。そこで、紹介者が私に「今、ピン
を持っていませんか?」と聞きに来まして、たまたまいつも携帯していた仮
縫い用のピンを渡したところ、「これは良い!」とカルダン氏は喜んでくれ
ました。
 後で調べたところ、私のピンはイギリス製の物で、図aの形、会場の物は
図bの形でした。当時の日本製は図bの形だったようです。

        ピンの画 a.b*

 数年後に、紹介者がカルダン氏の工房を訪ねたところ、あの時のお礼に
とピンを大きな封筒に一杯下さいました。
 それは図aの形でしたが、素材は鉄でした。カルダン氏の話ですと、工房
で仮縫いをする時は一度使ったピンは捨ててしまうとのことでした。仮縫い
が終わって、抜いたピンは全て床に落としてしまい、後でマグネットを使っ
て拾い集めて捨てるのだそうです。ですから、鉄製だった訳ですね。
 この、カルダン氏が下さったピンは、せっかくなのでしばらく使っていま
した。気をつけて使っていたせいか折れることはあまりなかったのですが、
残念なことに錆びてしまいました。
 現在私は日本製の真鋳のピンを使っています。今の日本のピンは先が細く
とても使い使いやすくなっているのですが、ピンの箱には「絶対に錆びない
真鍮製ニッケルメッキ」と印刷されています。
 確かに、「先端が細い、折れにくい」と同様に「錆びない」もピンを選ぶ
上での大切な要素です。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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