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#365.土筆ヶ岡養生園 その参

Posted by KINN Tailor on 10.2018 懐かしい話   0 comments   0 trackback
 入院も長くなってくると、患者同士が仲良くなり、色々と話をする機会も
多くなりました。
 患者が居る棟は全部で3棟ありました。1棟にだいたい10名位が入院して
いて、それぞれの棟の中でコミュニケーションを取っている…という感じで
した。

 ある日、隣の棟で俳句好きな人が冊子を作っている…という事を聞き、私
が居た棟でも作る事になりました。当時は俳句を嗜む人が多く、私の棟にも
俳句の会をやっていた人が居て、その人が冊子に「踏青(とうせい)」とい
う名を付けてくれました。春の青草を踏んで遊ぶ・・という意味だそうです。
 俳句の会のお知らせも回って来て、「俳句の会に来ると、ハイク退院でき
ます
」・・・などと書いてありました。
 私は子供でしたから俳句を詠む事はできませんでしたが、会には時々遊び
に行ったものです。

 そう言えば、看護婦さん達を"あだ名"で呼んでいた事も思い出しました。
私の棟の担当看護婦さんは4名居て、その看護婦さん達に皆であだ名を付け
ていたのです。
 一番古株の主任さん、はそのまま「主任さん」「赤い顔した」倉沢さん、
「背高ノッポ」の木村さん、そして「チクリのおばさん」中村さん・・今の
ように捻ったあだ名ではなく、殆ど"そのまんま"です。
 「チクリのおばさん」中村さんについては、本人は「注射ばかりしている
看護婦さん」という意味で皆が呼んでいると思っていたようですが、実は
注射が一番下手で痛かったので、そのあだ名が付いたのでした。

 当時まだテレビはなく、楽しみと言えばラジオ放送でした。私が持って行
ったラジオが一番良く聴こえたらしく、向かいの部屋にいる看護婦さん達も、
それを聴いて話題にしていました。
 ある日、「ナイチンゲール賞の発表」というニュースをやっていました。
これは、功績が認められた看護師に与えられる名誉ある賞ですが、何と!
うちの主任さん(紅林リンさん)が受賞した…というニュースがラジオから
流れて来たのです。壁は薄く、仕切りは襖ですから、どの部屋にいた人にも
このニュースが届き、「服部さん、今受賞者はクレバヤシさんって言ったわ
よね!…うちの主任さんよね!」と言いながら私の病室に集まって来て、大
騒ぎになりました。
 この時、当の主任さんは外出中でしたが、私も主任さんの事がとても好き
だったので、夕方戻られた時にすぐにお祝いに行きました。この事が入院中
で一番嬉しかった出来事
だったかも知れません。

私の棟**

 私は血管が見えにくい体質で、毎朝打つ静脈注射がとても辛く(チクリの
おばさん
が打っていたせいか?)、その時だけは暗い気持ちになっていまし
たが、それ以外の時間は、他の患者さん達と仲良く、楽しく?、穏やかに過
ごしていました。 
 他にも・・戦時中でしたから防空演習などがあり、うちの棟からは比較的
元気だった私が代表として参加したりしました。

 そして入院してから9か月~10か月位たった頃でしょうか・・。病状が悪化
する様子は見えなかったため退院をする事になりました

〈つづく〉


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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