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#284.苦労した話 その弐 ~体形~

Posted by KINN Tailor on 20.2016 体形の話   0 comments   0 trackback
 少し前の事になりますが…あるご婦人のパンツをお作りした時、その方が
いわゆる日本人の標準体形とはかなり違っていたため、大変苦労した覚えが
あります。
 その方はある国の外交官婦人でした。ご主人は来日された当初からご縁が
あり洋服をお作りしていましたが、ある時「私の家内の服も作って下さい」
と仰いまして、お目に掛かる事になりました。

 第一印象はかなり背が高くスラッとした綺麗な体形の方…というものでし
たが、採寸をさせて頂くと、私の頭の中にあった一般的な寸法比例とあまり
にも差があったので驚きました。
 婦人物の場合は、W寸(ウエスト寸法)とH寸(ヒップ寸法)の差は18~
20cm位
です。ご承知の通り差が大きい程グラマラスな訳ですが、この方の
場合は何と差が30cm以上あったのです。正面から見た時には腰のくびれは
さほど目立った印象ではなかったのですが、横から見るとヒップがとても
高い位置から張っていました。
 これは正に人種的な差なのだ! と痛感させられ、今まで全く裁断をした
経験のない数値でしたので少々不安でしたが、結局このご依頼を受ける事に
しました。

 デザインはごく普通のストレートのパンツで、生地はグレーのフランネル
でした。「これは大変な事になった」と、その晩早速製図にかかりましたが、
普通の製図法の比例には収まらないので製図法そのものを変えないと駄目
・・・と判断しました。
 まず一番の問題は、前身頃に比べて後身頃をどの位深く作ればいいのか…
という事でした。図を使って説明します。
パンツ製図**
 普通 a.の寸法は、H寸-W寸÷4で出します。a.を拠点として後身頃を描いて
いきますが、普通は大体 a.=4cmの所が、この方の場合は7cm以上になって
しまう訳です。果たしてそんなにしていいものか悩みましたが、答えはノー
でした。
 まず 7cm以上にしてしまうと、あまりにも後身頃が倒れ過ぎてしまうので、
上手くないと思い、5cmで描いてみました。これではどうも足りない・・・
という事で6cmにしました。このやり方だとどれが丁度いいのかハッキリ決
められなくなりそうでしたが、採寸の時に普段計らない箇所の数字を採って
おいたのが役に立ちました。
 それは腰の一番くびれている所からヒップの一番張っている所迄の長さを
横から見て直線に計った数字
です。採寸をした時は、履き上がりがどの位か
を知りたかったから計っただけなのですが、この数字が製図b.になるので、
それを使ってa.の見当を付ける事ができたのです。
 結果的には6.5cmとなり、私が覚えていたお客様の体形とイメージが一致
しましたので、これで良しとしました。
 後はウエストがかなり細い方でしたからダーツを多めに取る事になるので、
いつもよりもダーツを長めに取り、ウエストからヒップのラインがスムーズ
になるようにしました。

 仕上がったパンツはとても綺麗で、お客様も大変喜んで下さいましたので、
苦労した甲斐がありました。
 この時の製図で、腰からヒップまでの長さ(b)を計っておいた事がとても
役立ちましたのでその後も実際に製図に使わない寸法 =「参考寸法」とでも
言うのでしょうか・・・それを沢山採っておくようになりました。
 次回はそのお話をしたいと思います。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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