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#272.金洋服店とモーニング その六

Posted by KINN Tailor on 21.2016 礼服の話   0 comments   0 trackback
 私は、前回のお話(昭和28年)の頃から3~4年の内に裁断法を勉強して、
父から店の裁断を任されるようになっていました。
 昭和34年の皇太子殿下のご成婚の際には、裁断は全て私がさせて頂きまし
たし、仮縫いの際にも父に同行して伺わせて頂きました。
 殿下は英国の2件のテーラー(ヘンリープールとキルガーフレンチ)で洋服
をお作りになっていらしたのですが、キルガーフレンチのカッターから「御
体形から言って2つ釦のダブルブレストがお似合いになるかと思います」
というアドバイスをお受けになったそうで、それ以来(現在でも)ダブル
好んでお作りになられるようになりました。
 ご成婚の際には燕尾服モーニングコートディナージャケットをお作り
になられましたが、ディナージャケットはダブルになさいました。

 ご成婚パレードは皇居から東宮御所(現在の常陸宮廷)迄を馬車でお通り
になられましたが、それこそ日本中の人々が喜びで胸を熱くしながら拝見し
た事と思います。

 さて、仕事の話に戻りますが・・・
 殿下から見せて頂いた英国の洋服は大変参考になりました。特にヘンリー
プール
でお作りになったモーニングは、形を整えるために肩や脇に入れる
ェルト類の使い方など勉強する箇所が多々ありました。それと同時に形、
布の使い方などは私共の仕事と大きな違いが無かったのでホッとしました。
 父には外国によく行かれるお客様がたくさんいらして、その時に作られた
服を見せて頂ける機会が比較的多かったようですが、礼服を作っていらっし
ゃる方は少なかったですし、時代によって作り方も変わりますので、この時
に拝見できた事は大変貴重な経験でした。

 その後父の助手として仕事を続けていく訳ですが、父と一緒にした皇太子
殿下のお仕事で思い出深いものがもう一つあります。それは、皇太子殿下が
フィリピンをご訪問
された時にお仕立てした服です。
 今年のお正月に陛下は2度目のフィリピンご訪問をなさいましたが、その
際の記念晩餐会にはディナージャケット(ダブル)で御出席になられました。
前回のフィリピン御訪問は昭和37年ですから、54年前になります。その頃
フィリピンの正装は白いスーツでしたので、父と一緒に白い綿でスーツを
お作りしました。
 それがもう半世紀も前の事になるかと思うと、随分時が経ったものだなぁ
…と、つくづく思います。

 父とは約18年間一緒に仕事をする事ができました。幸いにもまだオーダー
メイドの御注文
が今よりもずっと多い時代でしたし、職人さんもたくさん居
てくれましたので、内容の濃い18年だったと思います。

 次回は、父独特の礼服の作り方についてお話をしたいと思います。

〈つづく〉


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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