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#270.金洋服店とモーニング その四

Posted by KINN Tailor on 07.2016 礼服の話   0 comments   0 trackback
 今上天皇は、満18歳の時に立太子礼をなさいました(立太子の礼をもって
皇太子になられます)。
 前回、戦後数年経って店を再開してから割とすぐに立太子礼のお話を頂い
たように書きましたが、陛下の年齢を考えると昭和27年に立太子礼を行った
事になりますので、実際にお話を頂いたのは昭和26年頃という事になります。
 それまで華族や大使などの洋服をお作りしてきましたが、まさか皇室から
ご発注があるとは思ってもいませんでしたので、我が家では喜ぶというより
は大変驚いた!…という感じでした。

 まず礼服をお作りする前準備として、三つ揃いをお仕立てする事になりま
した。殿下が丁度紺色の生地をお持ちでいらっしゃいましたので、その生地
を使いました。
 お納めした後は礼服の準備に取り掛かるものと思っていたのですが、父が
お納めした三つ揃いを殿下は大変お気に召して下さり、礼服の前にもう一着
背広をお仕立てする事になりました。
 昭和26年ですから既に貿易は再開していましたが、まだあまり良い生地が
入ってくる状態ではありませんでした。父は御殿場に疎開させていた生地
東京に戻し、主にそれを使っていたようです。殿下の2着目の背広もその中
から選んだ生地で、確かネズミ色の生地だったと記憶しています。
 私は20歳から正式に店の一員として仕事をしていましたので、この大変に
名誉なお話を頂いた時は仕事を始めたばかりの頃でしたが、取り敢えずどう
いった形にせよ"仕事に加われた"事は幸運でした。

 礼服は燕尾服モーニングコートディナージャケットをお作りしました。
生地は父が持っていた物で間に合いましたが、燕尾服とディナージャケット
に使う拝絹地が無くて困りました。通常は付属屋さんが扱いますが、当時は
まだ品物が充分ではなく、特に拝絹地などは品薄でした。
 そこで、以前から知り合いだった「越後サベリ」さん(拝絹地の生産者)
に連絡をして事情を話したところ、大変名誉に思って下さり、「幸い戦前に
作った物
がありますよ」と言って、わざわざ新潟から上質の拝絹地を1巻、
私共の店まで持って来て下さいました。
 そういった方々のお力沿えもあり、礼服は無事にお納めする事ができたの
です。

 立太子礼昭和27年11月に皇居の賢所(かしこどころ)で行われ、その
際は衣冠束帯をお召しになられました。その後は勲章を授与される際にお
納めした燕尾服をお召しになられました。
 翌日の新聞一面にそのお姿が載っていたのを見て、自分はまだ父の手伝
い程度ではありましたが、大変感激しました。
 立太子礼が無事終わり、店の者誰もが何となく「やれやれ終わった」と
ホッとしていた時に・・・何と!更に大きなお仕事のお話を頂いたのです。

〈つづく〉


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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