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#268.金洋服店とモーニング その弐

Posted by KINN Tailor on 22.2016 礼服の話   0 comments   0 trackback
 まだ正式な礼装がフロックコートだった時代、元々ダブルであるフロック
コートをシングル風に少しラフに着るのが流行した事で、 父は「フロック
コートをモーニングコートに作り替えたがる方
が現れるのではないか・・・」
という予想を立て、そのためのフロックコートの裁断を考えました。
 少し技術的な話になりますが、どういう事か説明したいと思います。

 モーニングの場合は一般的なジャケットと同様に、前身頃に見返しを付け
ます。見返しの上の部分は襟の表側になり、下の部分は内側に入る訳です。
一方フロックコートの場合、襟の部分にはタツを付け、スカートの部分は返
る量を広く裁断して折り返します(スカートの部分はワナになっている)。

イラスト**1

 つまり、フロックコートの場合はタツの切り替え線がありますが、モーニ
ングにはありません。そこで父は、(下図のように)フロックコートの襟の
部分
にタツを付けるのではなく、モーニングの襟のようにし、スカートの方
フロックのままワナになるように裁断しました。
 この裁断で違うのは、タツの切り替え線があるかどうか…ですが、襟には
拝絹を付けますので線自体あまり目立たず、無くても違和感がないのです。
 最初に裁断をする時に、モーニングに直す時必要な見返し用の布を別に取
っておけばモーニングに変える事ができるという訳です。

イラスト**2

 実はこの裁断法は、後年大変役に立ちました。
 昭和3年に昭和天皇即位の御大礼が行われた際、フロックコートのご注文
が13着あったそうですが、御大礼から3~4年の間に全てモーニングに直す
ご依頼
があったと言いますから、父の予想は見事に的中したのです。

 御大礼の話で少々余談になりますが・・・
 当時御大礼の式典は京都御所で行われましたので、父も京都のある華族の
お宅へ滞在させて頂き、その方や宮様方の礼服のお世話をしたそうです。
 滞在は数日間だったそうですが、父の話を聞くと、何から何まで私達とは
全く違う別の世界というか…夢の国の話を聞かされているようでした。
 そして全ての行事が終わり東京に帰る時、父は出張費とは別にお手当を頂
戴したそうなのです。その上書きには「絹五匹」とあったそうです。絹織物
は2反を1匹と呼ぶそうですから、絹10反分のお礼という事になります。
 この上書き一つとっても、やはり世界が違うなぁ・・・と思ったものです。
因みに中身は一般に流通しているお金だったそうです。

〈つづく〉


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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