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#261.仕事の仕方 その弐~無駄針~

Posted by KINN Tailor on 28.2015 縫製の話   0 comments   0 trackback
 前回「玉止め」の話をしましたが、私は縫い仕事をする際に必ず玉止めを
する訳ではなく「無駄針」をする事もあります。
 無駄針というのは、図のように何針か余分に糸を重ねて入れる事ですが、
きちんと入れれば糸が抜けてしまう事はありません。

無駄針 躾**

 玉止めでなく無駄針にする時というのは、仮に止めておく時や玉のアタリ
が出ない
ようにしたい時です。
 まず仮に止めておく時・・・主に仮縫いの時ですが、玉止めはせず縫い始
めと縫い終わりに無駄
針をします。
 仮縫いの場合は必ずそれを解く訳ですから、お客様にフィッティングして
頂く時にきちんと止まっていてくれれば玉止めの必要はありません。仮縫い
にはシロモを使いますが、このシロモはなかなか強い糸なので下手に玉止め
をすると、(前回書いたように)生地を傷めてしまう可能性がありますから、
私は無駄針にしているのです。

 今迄色々な所で技術指導などしてきましたが、仮縫いの時に玉止めをする
人がとても多い
のには驚きました。「シロモで玉止めをすると、やっかいな
事が起こるよ!」とアドバイスするのですが、どうも無駄針だと心配なのか
…玉止めをするのが習慣になってしまっているのか? 玉止めし続ける人の
方が多いようです。
 子供の頃に畳屋さんが来て、畳表の取り替えをしていたことがあります。
面白かったので見ていたら、縫い終わりの所で止めの玉を作らなかったので、
「最後の止めはしないのですか?」と聞いたところ「えぇ、縫い糸が太い事
もありますが、無駄針をいくつか入れるとそれで止まるものなんですよ!」
と教えてくれました。まだ、洋服の勉強はしていませんでしたから「へぇ~
そんな事もあるんだ・・.」と妙に感心したものです。
 その後洋服の勉強を始めてから、この無駄針という言葉が頭の中に残って
いたようで、私の中では「無駄針は使える!」という不確かな自信のような
ものがありました。実際に仕事で使ってみますと具合が良く、無駄針は私に
とってとても有効な処理の仕方となりました。ですから仮縫いは勿論、表に
響かせたくない場合・・・具体的には「ハ刺し」ですとか、ポケットを芯に
固定する時
の止めなどは玉止めはしません。
「ハ刺し」は、それこそ職人によってやり方が様々です。職人の拘りが出る
作業かも知れません。私は手縫い糸でハ刺しをしますが、ミシン糸でする人
も大勢います。
 以前、ミシン糸で入れる人に「ミシン糸は手縫い糸よりも細いけど大丈夫
ですか?」と聞いたところ「沢山糸を刺しますから、細い糸でも大丈夫です。
それに糸のアタリが出るのが嫌なんです」という返事でした。ですが、その
人はハ刺しの縫い終わりには玉止めをしていました。ハ刺しは何本もの糸を
使いますから玉止めも幾つもできる訳なのですが、それがアタルのはいいの
かな?…と、ちょっと疑問に思ったものです。

 面白いもので、職人それぞれの拘りで仕事の仕方は様々ですし、どれが正
しい訳ではありませんが、自分と違う仕事の仕方を聞くと、「なる程・・」
と感心たり「えっ?」と首を捻ってみたり・・・まだまだ自分の知らない事
が沢山あるものだ…と関心します。
 私が玉止めをしない他の例を幾つかご紹介して、本年は終わりにしたいと
思います。

釦つけ**
ループ**

      *   *   *   *   *   *

 今年もブログをお読み頂きまして、誠にありがとうございました。
 皆様、よいお年をお迎え下さい。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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