Loading…

#237.仕事の勉強の話 その二十二 ~チョッキ③~

Posted by KINN Tailor on 06.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 チョッキの脇を入れた後は、襟ミツを作ります。

 チョッキの肩幅は狭いので通常イセ込みは殆ど入れません。ですから普通
は脇と同じように前身頃と後身頃を合わせてミシンで縫ってしまうのですが、
私の店では後身頃に1cmのイセ込みを付けていましたので、これも脇と同じ
ように表側と裏側を別々に縫っていました。
 裏地をイセ込むのはとても難しく、また狭い幅でイセ込む訳ですから大変
苦労しました。…苦労はしましたが、ある程度できるようになってからは、
もっと前肩にした方がより身体にフィットする…という気持ちが強くなった
ので、父と相談をしてイセ込み量を少し増やす事にしたところ、案外上手く
行ってかなり前肩にする事ができました。それ以来1.3~1.4cmイセ込む
にしています。

 次に襟ミツです。チョッキの襟ミツの所は「ミツ布」と呼ばれている幅の
狭い二つ折りの布地(表地と同じもの)を付けますが、このやり方も2通り
あります。

チョッキ 襟みつ**

 1つは、(図のように)前身頃を裁断する時にミツ布になる部分を一緒に
裁断
して使うやり方です。2つ目は表地をバイアスに裁ちミツ布として使う
やり方です。1つ目のやり方はミツ布が身頃に繋がっていますから、それを
好む方もいらっしゃいますが、襟ミツは首に沿ってカーブさせなければなり
ません。バイアスの方が綺麗にカーブさせられるので、私の店では2つ目の
やり方を採用していました。
 そして襟ミツの中心で繋ぎ合わせる箇所に沢山縫い込みを入れておくのも
当店の特長です。チョッキは肩に縫代を沢山入れておく事ができません。…
にも関わらずもし後でお腹周りが大きくなってしまったとすると、前身頃の
長さが足りなくなります。肩に出せる布は入っていませんので、ミツ布を長
くして、後身頃を作り直せばいい
訳です。
 先日、古くからのお客様が、お気に入りのチョッキを久し振りに着てみた
ところ、お腹周りがキツくなっていて着れない…とガッカリされていたので
すが、直る事をお伝えすると、とても喜ばれました。後身頃は裏地ですから、
表地がなくても作り直すことができるので、襟ミツの長ささえあれば直しが
可能
…という訳です。

 さて、チョッキには尾錠が付いている物とない物があります。これはお客
様の好みですから勿論どちらでも良い訳ですが、チョッキは下に着ている物
をまとめて安定させる
…という意味で尾錠は大切な役目を担っているのです。
 私の店では「#40.オリジナルの小物」で紹介した尾錠を使っています。父
が創業した時にフランスに発注して大量に作って貰った物で、ツメがあり、
金具には「KINN」と刻印されています。
 実は今の店(渋谷区)に移った頃に取り引きをしていた付属屋さんから、
「このタイプの尾錠は日本では作っていなくて困っているので、沢山あるの
なら分けてもらえないか?」と言われた事がありました。今は外国製の物が
簡単に輸入できるようになったようですが、当時はあまり手に入らなかった
ようです
 このツメのタイプは、布地が滑らなくて具合が良いのですが、その代わり
長い間使うと布に穴が空いてしまう事があります。でも、昔の服は傷んだら
その部分を作り直すのが当たり前
でしたから、特に気にする事ではなかった
のです。
 チョッキは思っていた以上に細かい所でウチの店の特長が出ている物で、
一通りできるようになって安閑としていたら・・・・ダブルのチョッキに
ラペルの付いたチョッキ、そして背中のないチョッキ!…なんて物まで出て
来て、まだまだ修行は続くのでした。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://kinntailor.blog98.fc2.com/tb.php/335-f668843a

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR