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#229.仕事の勉強の思い出 その十五 ~袖①~

Posted by KINN Tailor on 11.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 私の製図についての勉強の仕方は、父や職人さんから指導を受けるのでは
なく、父から渡された外国の製図本をよく読んで、それに習って自分で製図
をしてから父に見てもらう…という方法でした。

 ですから、もまず自分で製図をしました。その際に少々不思議に思った
のは、私が勉強していた教科書では当時最新のやり方だった短寸式(Short
Measure System)で、胸寸式よりは細かいパートに分けて採寸をする方法
だったのですが、袖の製図の仕方については他に比べて比較的単純だった…
という事です。例えばジャケットなどは身体を細かく分けて採寸をしたもの
を元に製図しますが、袖はアームホールの大きさを計り、上半分で山袖、下
半分で下袖を製図します。
 父に聞いてみると、「この方法で袖の形にはなるけれど、実際に着る事
考えると、これでは足りない所があるよ」と言って説明してくれました。
 足りない所というのは、腕の動きについて行けるか・・・という事なのだ
そうで、英国流の裁断は袖を幾分大きめに作り、身頃に付ける時のイセ込み
を多く
するのだそうです。
「つまり、イセ込みを多くする事で袖が動きやすくなるのだよ。特に下袖を
大きめにして沢山イセると、腕を上げた時の動きが楽になるよ」とのでした。
 確かに、いわゆる"綺麗に付いている袖"は、手を上げた時など服の脇まで
つられて上がってしまい、動きだけでなく見た目も悪くなります。ただ下袖
のイセ込を多くし過ぎると手を下げた時の余りが多くなるので、これも見た
目が悪くなってしまいます。つまり、このバランスがとても難しいのだそう
です。父から「もう少し細かい寸法を使って、動きやすく、手を下げた時も
綺麗な袖
ができるように考えてみなさい」と難問を出されました。
 そこで「袖の短寸式」というのを作ってみるか!…と、大それた事を考え、
暫く真剣に研究してみました。

 結果としてわかった事は…袖が綺麗に下がるためには山袖側の形が大切で、
動きを良くするには下袖側の形が大切という事でした。更に教科書にあった
「アームホールの寸法を山袖と下袖に分ける」という単純なものでは上手く
いかない…という事でした。
 その頃、よく日本橋の裏の方にあった輸入本屋さんに行っていたのですが、
ある日そこで売られていた英国の教科書の中に「Direct Measure System」
という袖の製図方法を見つけました。
 それは、アームホール寸法を幾つかに分割して製図をする方法で、まさに
試してみたかった方法だったので、それを参考にして裁断法を考えました。
 結果として、でき上がった製図法を図解するとこのようになります。
袖付けその1**
袖付けその2**
 この製図にたどり着くまでに相当な時間がかかりましたが、試作した結果
も良く、なかなかの出来となりました。
 父からも「これからウチの袖はこのやり方にしよう!」と、お墨付きも貰
えたので大満足の結果となった訳ですが、これはアームホールに対する袖の
大きさと袖の動きを良くする
…という問題が解決しただけで、この後は袖の
ラインの美しさ
等々・・・気になる所が幾つも出て来たのです。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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