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#226.仕事の勉強の思い出 その十二 ~肩入れ~

Posted by KINN Tailor on 13.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 さて、いよいよ"肩入れ"の話です。

肩入れは、ジャケットを作る仕事の中で「難しい作業の一つだ」と言う事
をよく聞かされていましたので、いざその段にとなるとかなり緊張しました。
 いつものように、まず先生方が書いた資料を読んでみると・・・どの先生
も「肩は多少前へ曲がっている方が良いので、前身の肩線を少しカーブさせ
て、それに馴染むように後身の肩をイセ込みながら付けると良い」と書いて
ありました。
 父や職人さんに聞いてみると「普通はそうやって後ろの肩を1cm位イセて
付けるけど、うちは違うんだよ」と言われました。うちの場合は、前の肩を
直線に裁断して、後ろの肩を2cmイセ込んで付け、その後アイロンで肩を廻
のだ…と言うのです。
"肩を廻す"というのは、縫った後にアイロンワークで肩先を前に出るように
する事です。直線に裁った肩を廻す事によって、肩にゆとりが出て動き易く
なる
訳です。
肩入れイラスト左**
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肩入れイラスト右**
 2cmもイセ込むのは大変そうでしたが、職人さんに「肩を前に廻すので、
そうなるように縫うのが難しいよ」と言われ、よく意味がわからなかったの
ですが、これはとにかく練習をするしかない…と思いました。
 当時の生地見本は今の物より大きかったので、その見本の古い物を使って
練習を始めました。生地が柔らかい時は比較的上手くイセ込めるのですが、
固い場合はうまく縮んでくれません。色々とやっている内に…一回糸を入れ
てイセ込み
アイロンをかけた後に一度糸を抜きもう一度糸を入れ直して
イセる
と、生地が柔らかくなるため上手くいく事がわかりました。それでも
2cmイセるというのはなかなか大変な作業でした。

 ある程度イセ込みができるようになったところで、次に縫い合わせの勉強
をしました。すると「ミシン縫いと手縫いの両方を勉強しなさい」と父に言
われたので、その通りやってみたのですが、うちの手縫いは穴糸を使って返
し縫いにする
ので、なかなか真直ぐには縫えず、それこそ何度も何度も繰り
返し練習しました。この時に散々練習をしたお陰で、今でも肩は手縫いの方
が好きです。

 そして次の "アイロンで廻す" 作業は一筋縄では行かず・・・ひたすら練習
をしました。
 私が勉強した肩入れは今では一般的になった「前肩」にする作業なのです
が、その頃はまだあまり行われていませんでした。
 当時父は肩周りの研究を色々としていたのですが、それは修行時代を含め
外国製の服を見る機会が多かった事、もう一つはお客様にダンスをなさる方
が多かったため「動きやすい肩」の服を作っていった結果なのだと思います。
 後に外国製の洋服が沢山入荷し始め、「フォワードピッチ」という言葉が
盛んに使われるようになりました。これが「前肩」な訳ですが、前肩にしな
いと着心地が悪い…という事が言われるようになり、芯を前肩に作る事や
身頃の肩をあらかじめ前に出るようクセを取っておく
・・・という事が普通
に行われるようになりました。
 私が肩入れの勉強をしたのは少し前でしたから、その時は「あぁ、やっぱり
この肩の作り方が始まったんだ・・・」と思ったものです。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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