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#225.仕事の勉強の思い出 その十壱 〜脇入れ+α〜

Posted by KINN Tailor on 06.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 見返しが無事に返ると前身頃の形ができ上がり、次に後身頃を繋ぐ脇入れの作業になります。

 脇入れは割と単純な作業だと思い込み喜んでいましたら、実は大変な作業
が含まれていました。裏地付けです。
 なぜ大変か…と言うと、裏地付けと言っても色々な種類があって、それに
よって身頃の処理が変わって来るのです。これは日本独特の仕事で、日本の
職人さんが器用だった為に発達した技術ではないか…と思うのです。
 英国の場合は殆ど総裏仕立てですが、日本は「背抜き」だの「半裏」だの
と色々あって、それぞれの扱いを覚えるのがひと苦労でした。
 総裏の場合は、脇を入れてから裏地を仮止めして次に進めるのですが、背
抜きとなると後身の縫い代を始末する必要が出て来るのです。

裏地イラスト1**

 その縫い代の始末もやり方が幾つかあります。私が教えられた方法を並べ
てみますと・・・
1) 後身の縫い代にヘリを取る(バイヤステープで巻いて止める事)
2) 後身の縫い代を広目に裁って、折って絡げて止める
3) 前の裏を後身の縫い代まで伸ばして隠す
 恐らく1)のヘリを取る方法がよく行われていると思われます。職人さん
裏地をバイヤスに細く切って、それを縫い代に器用にくるんで絡げて止め
ている
のを見た時には、「これはなかなか大変そうだ」と思いました。
 まだ勉強中ですから裏地に慣れていないので、この薄くて解れ易い生地を
細いバイヤスにして扱うのには本当に苦労させられました。
 3)は見た目が綺麗なのでよく使われましたが、前裏を止める時に千鳥掛
で止めていくのが大変でした。千鳥掛けは上と下の2箇所糸が表側に出る
ので、目が揃っていないと見た目が悪く、当時の私には相当頭が痛かったの
です。
 そうこうしている内に、ベテランの職人さんが新しいやり方を考えて始末
をして来た事がありました。それは、後身の脇に細い裏地を付けておいて、
脇を縫い合わせた後に前見側に倒し、その上に前裏を被せて止める
…という
ものでした。

裏地イラスト2**

 この方法ですと、背の縫い代はヘリ取りをしたのと同じになり、布の端が
完全に隠れる
ので、見た目がスッキリしていてとても綺麗で驚きました。
 実物がお見せできないのが少々残念ですが、当時としてはとても画期的で
した。父も「これはとても巧いやり方だね。他の職人たちにも見せて参考に
させよう」と言っていました。父はこのような細かい仕事はそれぞれの職人
さんに任せていて、人によって多少違いがあっても綺麗に仕上がっていれば
良し
…という考え方でした。
 ですから職人さんの自由な発想により新しいやり方が見つかる…という事
も多々ありましたし、むしろそういった事を父は歓迎しているようでした。
 この処理の仕方を知るまでは、千鳥掛けで止める方法を一生懸命練習して
いましたが、その後はこの画期的な方法を習得し、背抜きの処理をする時、
私はこのやり方を通しています。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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