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#222.仕事の勉強の思い出 その八 〜裂きテープ〜

Posted by KINN Tailor on 16.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 ラペルのハ刺しが終わると、次にテープを付ける作業になります。
 まず、テープを付ける箇所を説明しておきますと、下図のようになります。
テープ貼り1**

 当時私の店では7㎜ 幅位の木綿のテープを使っていました。テープは補強
や布の伸びを防ぐ
ための物ですが、襟の返り線に付ける時はその引き具合に
よって胸のハラミ具合が変わってきたりしますので、仕上がりにかなり影響
する作業なのです。

 最初の内は、左右対象にハラミを出すのがなかなか上手くいかず、かなり
苦労しました。ハ刺しの時にも書きましたが、この左右対称にする…という
のはとても難しい事で、一番の問題は"利き腕がある"…という事なのだと思
われます。私は右利きですから、このハラミを出す作業は下前側が作りやす
く、袖を付ける作業などは上前側が作りやすい…といった事が生じるのです。

 どうにか、テープの付け方に慣れてきたところで、例によって色々試して
みたくなりました。当時は麻芯を使う事も多かったので、木綿のテープより
も麻のテープの方が馴染みやすくて良いのではないか?…と思い、麻テープ
を使ってみました。
 父に見せたところ「市販の麻テープは固いので、市販の物なら木綿の方が
いい」と言われました。そして「布地や付ける場所によっては木綿よりも麻
の方が良い場合があって、その場合は麻を裂いてテープを作るんだよ」…と
説明されました。つまり・・・市販のテープは両側が耳になるため固いので、
麻を裂いて作れば端が固くないテープになる…という訳です。
 裂きテープは薄い麻を1.5センチ幅位に裂いて作り、釦から下の所に使う…
との事でした。
テープ貼り2**
 この裂きテープは幅が広いので、芯のハナを中心にテープを付けておきま
す。見返しを返す時に半分が裏側に入るので芯を包む事になり、芯のホツレ
を防ぐ
のに効果があるのでとても良いのですが、このテープを使いこなすの
にはかなり高度な技術が必要でした。
 まず・・・カーブした所は両側から切り込みを入れて曲がるようにしなけ
ればならないのですが、この切り込みも入れ過ぎると力が弱くなってしまい
ます。この、どの位入れるか…の"加減"を理解する迄には相当時間がかかり
ました。
 そして父に「芯のハナから外側の部分は縦糸を抜いてしまって、横糸だけ
残して
使いなさい」と言われた時には、「え~~??」という感じでした。
これは縦糸を抜く事により内側に入る部分を柔らかくするためなのです。
 父に「この技法を理解すれば、服の前の端がしっかり、そして"しなやか"
に仕上がる
」と言われたのですが、父は大抵、最初に全てを説明して、後は
自分なりに工夫して、仕上がったら見せに来なさい・・・という主義でした
から、途中かなり四苦八苦してしまい、合格するのに随分と苦労しました。
 麻を裂いてテープを作り半分の縦糸を抜く・・・手間がかかり技術も必要
ですが、先人が様々な苦労を重ねた末に、そこに行き着いたのか…と思うと
頭が下がります。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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