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#208.仕事の勉強の思い出 その壱 〜切り躾〜

Posted by KINN Tailor on 08.2014 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 私は小学生の頃から、店の仕事場へ行き職人さんたちが仕事をしているの
を見るのが好きでした。最初の内は仕事を見ながらミシンをいじったりして
遊んでいたのですが、"切り躾"(きりびつけ)をする様子を見せてもらった
時に、ある種の驚きがあり、それをきっかけに「服を作る」事に興味を持ち
始めたような気がします。
 切り躾とは、躾糸を2本取りにして2枚重ねの生地の上に描かれたチョーク
の上に糸を入れていき、その生地と生地の間の糸を切って印を付けていく

です。つまり上の生地に描かれたチョークの線を下の生地に写す作業です。
 最初は漠然と仕事を見ていただけですので、服を作るのに同じパーツが二
つ必要な事などまだ全くわかっていませんでした。
 職人さんが鮮やかな手つきで躾糸をチョークの上に入れた後、「これを2
つに分解するんだよ」と教えてくれた時に「なんで折角縫った物を切り離し
ちゃうんだろう?」と不思議に思いました。そして生地の間に鋏を入れて糸
を切り、同じ所に印が入った2枚の生地を見た時に「なるほど…洋服は2枚の
布を同じ大きさに作る
必要があるんだ!」という事を始めて知った訳です。

 中学生になってから少しずつ仕事を覚え始めたのですが、一番最初に切り
躾を習いました。実際にやってみて「これは結構難しいな」と思いました。
特に2枚の生地の間に鋏を入れて切り離すのが、生地を切ってしまいそうで
怖かったのです。慣れた職人さんは生地の間に鋏を入れてちょっとこじって
そのまま切る…いわゆる「めくら鋏」をやっていましたが、私はどうしても
布を切ってしまいそうな気がして、糸を見て切らないと心配でした。
 それから70年経っていますが、今でも目でみて切り離していますし、鋏
の先は尖っているので布地を傷つけてしまうかも知れないと思い、自分の
仕事鋏は刃先をほんの少し丸く削りました。

鋏
ハサミ 左側の鋏先が少し丸くなっている

切り躾 糸を見ながら切る
糸を見ながら躾糸を切る

 結局のところ私がとても臆病だという事なのかも知れませんが、それ故か
どうかはわかりませんが、幸いな事に一度も布地を切ってしまったり傷つけ
たりせずに(今のところ)済んでいます。

 若い頃、ある技術の会のメンバーになったのですが、ある時切り躾の話が
出た時などは皆一様に心配したり、工夫している事がわかり、やはり皆同じ
なのだな…とホッとした記憶があります。その会で、ちょっと変わった切り
躾の仕方
を教えて貰いました。
 糸を1本取りにして、チョークに沿って返し縫いのようにしながら、糸を
ゆっくり弛ませていく
方法です。これですと、2本取りのやり方よりも糸の
印が沢山付くという訳です。実際にやってみましたが、印は沢山付くものの
糸が1本のせいか?、糸が長く残るせいか?…抜けやすい気がしましたので、
私は昔習った通りのやり方にしています。

 私塾の生徒さんの切り躾を見ていても様々で、間の糸を切った後、糸を長
いままにしておく人、とても細かく印を入れる人、反対にかなり大まかに入
れる人などなど・・・。
 切り躾を見て縫い合わせるのは自分なのですから、自分がわかれば良い訳
ですし、服が仕上がった時には完全になくなってしまう物ではありますが、
決まりがない分その人の個性が出る…という事で他の人の切り躾を見るのも
なかなか楽しいものです。

切り躾 糸を入れた状態
躾糸を入れた状態
上の半円  1本取りで返し縫いのようにする方法
下の直線  2本取りで一般的にする方法

 

切り躾 糸を切った状態
躾糸を切り離した状態


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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