Loading…

#196.サクソニーウールとボタニーウール

Posted by KINN Tailor on 15.2014 生地の話   0 comments   0 trackback
 私の「洋服屋」としてのキャリアも、いつの間にか随分と長くなりました。
 その間洋服のデザインは勿論の事、生地も消費者の好みに合わせるように
変わって来ました。逆にそれによって作られなくなった生地などもあります。
 そこで、私が昔勉強した古い生地の事などを、何回かに分けてお話したい
と思います。

 まず始めに・・・
 昔はウール生地の事を「ラシャ」と呼んでいました。漢字だと「羅紗」
書きますが、字の意味を調べると少し面白い事がわかります。
「羅」は「薄物(うすもの)」という意味、「紗」は「薄い絹」という意味
なのです。ですから毛織物のウールを"羅紗"と呼ぶのは、漢字の意味からする
と少々おかしいのです。
 ラシャという呼び方はポルトガル語の「Raxa」から来た…と考えられます
ので、単に当て字として羅紗という漢字が使われたのでしょう。
 尚、中国語ではラシャの事を「呢绒(ニ・ニョン)」というそうで、「绒」
1文字だとフランネルを表すのだそうです(これは古い中国の字ですから、
現在は別の字になっているかも知れません)。

 さて、今回のお題のサクソニーウールの話をしましょう。
 現在、サクソニーウール(SaxonyWool)は柔らかく上質なウールの名前
として知られていて、世界各地で作られているようですが、元々はドイツの
サクソニー地方で産出された羊毛のことです。
 特長としては…繊維は短く柔らかなのですが、糸が細い割に強く、ハリが
ありスケール(ウロコ)が多いため大変良質な生地として有名になりました。
 実はこの地方の羊は、スペインのメリノ種の羊を移入して改良した物なの
ですが、サクソニー地方の気候風土に合ったため、このような良質な毛の羊
が育ったのです。
 その後、オーストラリアにもメリノ種の羊が移入され、オーストラリア産
の上質なウールの一部もサクソニーウールと呼ぶようになりました。
 ご存知のように、現在では羊はオーストラリアを代表する物の1つですが、
このメリノ種の移入によって大発展を遂げた訳です。
 オーストラリア産の上質なメリノ物には、サクソニーウールとは別に、
タニーウール(Botany Wool)
と呼ばれる物もあります。
 原料となる羊は一緒ですが、ウールン(woollen)で織られた物をサクソ
ニーウール
ウーステッド(worseted)で織られた物をボタニーウール
いう風に区別していたのです。当時はどちらも人気がありましたが、ボタニ
ーウールの方は柔らかいせいか、紳士物の生地ではあまり見かけなくなりま
した。
 実は私もボタニーウールで作ったスーツを持っています。1958年に仕立て
た物ですので、服の形としては古くなりましたが、生地はさすがに良い物で、
まだ現役です。

 最後に・・・ボタニーという名前はオーストラリアからヨーロッパに輸出
される際に、最初に出荷されたのがボタニー湾からだったので、その名前が
付いた…と言われています。

ドイツ製 サクソニーウール**
ドイツのサクソニーウール

*ウーステッド(worseted)とウールン(woollen)
 ウールを毛(糸)にする方法として、ウーステッドとウールンがあります。
ウーステッドは櫛のような物で毛のかたまりから長い繊維を掻き出して軽く
ヨリをかけてカードを作り(カードは長い1本の糸になる前の毛を薄く細長
い板のような形に束ねた物の事)、そのカードから糸を引いたものです。
 一方ウールンは毛の塊から繊維をヨリながら糸として引き出した物です。
ウーステッドは細く綺麗に揃った糸で織られているので、仕上がりに凹凸が
少なく滑らかになります。ウールンは糸に節がある場合もありウーステッド
よりもやや厚く、多少ふんわりとした仕上がりになります。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://kinntailor.blog98.fc2.com/tb.php/271-8f2039d4

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR