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#179.木の話 その弐

Posted by KINN Tailor on 19.2014 特別な話   0 comments   0 trackback
 父が注文した家具で現在でも私の店にある物は、前回ご紹介した裁断台、
テーブルとバン板の他に応接セット洋服ダンスがあります。

 応接セットの方は、父が沢山買っておいた桜の木で作られています。また
ソファーは最初は革貼りでしたが、傷んだため戦後にビニールに貼り替え、
その後スプリングの手入れを兼ねて厚手の布地にしました。

応接セット
応接セット

 タンスはクスノキで、かなりサイズの大きな物が2つあります。私が今の
家を建てた時に、このタンスを入れるために間口を少し大きくして貰わなけ
ればなりませんでした。タンスができて来た時は、クスノキ独特の樟脳の匂
がして、虫よけになるから洋服をしまうのに向いている…と言われました。
今では流石に匂いはしませんので、防虫剤を入れています。

 他にも昔の店で使っていたテーブル回転椅子のセットやがありました。
鏡は1枚を壁に取り付け、もう1枚を車の付いた台に乗せ、仮縫いをする際に
"合わせ鏡"として使っていました。
 父は「仮縫いをする場所は広くないとダメだ」という主義でしたから、か
なりの場所を取り、車が付いた方の鏡を動かして、映す距離や角度を変えて
使っていました。壁に付いていた鏡は今でも店にありますが、車が付いてい
た鏡と回転椅子のセットは、今は妹の所にあります。

 そして、もう一つ印象に残っている家具があります。それは居間に置いて
あった物で、ラジオや本、ちょっとした貴重品などを入れるためのです。
ラジオは父が最初に買った物で、スピーカーはラッパ型でした。
 父はこのラッパ型ラジオを乗せるためにこの棚を注文したようで、みんな
「ラジオ棚」と呼んでいました。父はこれを大層気に入っていて、戦争が
始まるとすぐに(疎開先の)御殿場へ運んだ程です。テレビはなくラジオの
時代
でしたから、この棚が家の中心にあった…という記憶があります。残念
ながらこの棚は今はもう残っていません。
ラジオ棚**

 父はこの他にも、甥や姪が結婚をする時のお祝いとして、指物師に頼んで
家具を送っていました。父がこのような事ができたのも、当時は材木の値段
がとても安かったからだと思います。何しろ生地を仕入れると、布は木の板
に巻いて
届けられましたし、その板は返す習慣もありませんでした。勿論高
い材質の木ではありませんが、ベニア板(当時はまだない)とかではなく、
無垢の木が使われていました。
布が巻いてあった板**
 店の倉庫にはこの板が何枚も積まれていて、小学生だった私が木工の細工
をする時に自由に使えたのですから・・・今とは木の価値が違っていたので
しょう。何とも贅沢な話です。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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