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#157.冬支度

Posted by KINN Tailor on 02.2013 特別な話   2 comments   0 trackback
 私が子供の頃は、一般的な暖房器具と云えばまだ「こたつ」が中心の時代
でした。ですから冬になると家にいる時もかなり厚着をしていたものです。
 その代表的な物で「綿入れ」がありましたが、昔は母親が子供の綿入れを
作るのが冬支度のひとつだったような気がします。

 洋服の冬物の生地も今より厚手の物が多かったのですが、更に冬用に細工
する事がよくありました。
 今はお洒落着として使われるベストも、保温のために着られる事の方が多
かった筈です。
 あるお客様などの場合、スーツはいつもスリーピースをご注文されるので
すが、冬になるとベストの裏に「ネル」を付けられていました。保温用です
から、前身後身共に付けるのですが、これが驚く程に暖かい物でした。
 コートの場合は、ファスナーなどで取り外しができるライニングを付ける
事が少なくありませんでしたが、中にはベストの場合と同じようにそっくり
厚手の裏地を付ける事もありました。
 それも、表地と同じウール地をコートの裏全体に付けるのですが、実は私
の父もこの手のコートを持っていました。
 表も裏もウール地ですから、非常に暖かくて良いのですが、難点は重た
い!
…という事と滑りが悪くなる事です。滑りが悪い方は肩周りに滑りの良
い裏地を付ける事で解消できますが、重みはかなりのものです。
 父が亡くなった後に、このコートを着て真冬の北海道に行った事があった
のですが、当時はまだ若かったこともありが、重みよりも保温力の素晴らし
の方が勝っていたのを覚えています。

 そして、これはもう2度とないかも知れない・・・というお話しです。
 あるお客様のお孫さんたちが、そのお客様の88歳(米寿)のお祝いに服を
プレゼントしたい…という事で相談を受けました。その時に選ばれた生地が
「ビキューナ」でした(ご存知の方が多いと思いますが、ビキューナは希少
性が高く大変高価な生地です)。
 何を作るかはご本人と相談をして決めて欲しいとの事でしたので、お話し
をしたところ、「大分歳もとって最近は殆ど外出しないから、家の中で着ら
れる物がいいね」とおっしゃいました。色々ご相談をさせて頂いて、お作り
した物は「ガウン」でした。
「少し姿勢が悪くなったから裾を踏まないようにして…でもできるだけ長目
にして」というご要望でしたので、前丈を少し短めにしました。仕上がった
ガウンは肌触りと言い軽さと言い、やはり違うな…と感じました。裏地には
柔らかい絹
を使いましたが、ビキューナには柔らかい絹を裏地に使わないと
相応しくない気がします。
 数年前にビキューナのジャケットを作られた方も、やはり絹の裏地を選ば
れていました。
 いずれにせよ、「ビキューナでガウン」とは正に究極のガウンと言えると
思いますが、このようなご注文を受ける事は、今ではまずないのではないか
と思い、少々寂しい気がします。

ビキューナのガウンとは、なんと贅沢な。

そんな贈り物をされるお孫さん達も、粋ですね。
2013.12.03 21:33 | URL | 秋葉原愛好家 #- [edit]
秋葉原愛好家様

コメントありがとうございます。
ビキューナのガウンは約30年位前に
お作りしたものです。
ビキューナに関しては他にも思い出
がありますので、またブログに掲載
したいと思っています。
今後とも宜しくお願い致します。
2013.12.06 11:02 | URL | 服部晋 #- [edit]


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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