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#154.まがいものの話

Posted by KINN Tailor on 11.2013 生地の話   0 comments   0 trackback
 ここのところ、レストランの食材表示が間違っていた…という事が問題に
なっていますが、私たちがが取り扱っている生地についても、色々と問題が
あるようです。
 一つには合成繊維が進歩して、実に色々な性質を持つ物が作られるように
なり、様々な特長を備えた物同士を組み合わせて、今迄なかった素材を作る
ようになった事で、ますます分かりにくくなった故でもあります。
 私のように年をとった者ですと、今のような良い意味での混合ではなく、
内緒で色々な物を混ぜ合わせる…いわゆる偽装に悩まされてきた時期もあり
ました。

 第二次大戦が終わった直後は、それこそあらゆる物が不足していて、食糧
などを手に入れるのに皆大変な苦労をしたものです。そして戦後しばらくし
て少し落ち着いてきた頃に「出物!出物!」と言って色々な商品が出て来始
めました。
 今の街並みからは想像できないかも知れませんが、銀座通りには闇市が出
ていて色々な物が売られていました。洋服の生地もその中の一つで「地方に
疎開してあった物」だとか「焼け残った工場から出てきた物」と称する生地
が売られていました。その中の目玉商品の一つに純毛の生地がありました。
 街頭で生地を広げ、「さぁ、純毛の洋服生地だよ」と言って人を集める訳
です。見ている人は「怪しい、怪しい」と言って手で触ってみたりしていま
したが、その内に一反(約30m)もある生地を広げて売っていた人が3mの
所で生地を切り
、その切った所の生地をほぐして糸を抜き、マッチで火をつ
けて
見せ始めました。すると、確かに毛を燃やした時の燃え方(匂い等も)
をするのです。
 それまで疑って見ていた人も、そこまで見せられると信用する輩も出て来
て、何人かの人は買って帰ったのですが、実はこれがとんでもない偽物だっ
たのです。
 これが偽物だった…というのは後になって分かったのですが、ある日私が
外出先から帰ると、父と父の洋服屋仲間が楽しそうに話をしていました。
 何か面白い事でもあったのかな?と思って聞いてみると、知り合いが銀座
闇市で買った生地(例の生地)を持って来ていました。
 この生地は、3mごとの切口5cm位は本物の純毛なのですが、それ以外の
所は当時スフ(スティーブルファイバー)と呼ばれていた一種の化学繊維
ったのです。
 こんなに手の込んだ偽物を作っていた訳ですから、かなり大掛かりな偽装
だったと考えられますが、後になってからもこの話を聞きましたので、割と
長い期間売りに出されていたようです。今と違って直ぐにニュースになって
商売ができなくなる訳ではないので、被害も相当大きかったのではないでし
ょうか。

 何と言うか・・・・悪賢い連中はいつでもどこにでもいるものです。昔は
押し売り」といって、色々な品物を持った人がもっともらしい事情を話し
ながら個人宅に売りに来る事がよくありました。今で言う訪問販売の類です。
 そう考えると個人が家を訪ねないけれど、電話で売り込みをしてきたり、
いきなりパンフレットを送って来たり・・・と、手口は変わっても行われて
いる事は昔と大して変わらないのかも知れませんね。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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