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#153.消えた糸

Posted by KINN Tailor on 04.2013 補正の話   0 comments   0 trackback
先日、少々変わったお直しをしましたので、その話をしたいと思います。

 私共の場合、年間を通してお直し(補正)のご依頼も結構多く、だいたい
はお客様の体型の変化によるものです。
 次に多いのが、長年お召しになられたため、ジャケットの前の端や袖口、
パンツの裾口が擦れてしまったものです。この場合、ジャケットは大きさを
変える訳にはいきませんので、大概はテープなどでヘリを取ります。少しば
かりスポーティな印象になりますが、併せて釦なども変える事で、リニュー
アルされたジャケット
となり、ちょっと新鮮な雰囲気が出ます。
 パンツの裾口などは、ヘリを取る訳にはいきませんので、丈を少し詰めて
見えない内側で擦れてしまった布地を縫い合わせます。丈が短くなって具合
が悪いのではないか?…と思われるかも知れませんが、人間は年を重ねると
腰や膝が曲がってくる関係からパンツの丈が長くなってしまう傾向にありま
すので、この方法でお直しをしても問題がない場合が多々あります。
 礼服などは、サスペンダーを使いますので長さを調整できますが、ある程
度のお歳になられると、それでも丈を短くするお直しをご希望される場合も
ある程です。

 さて今回のお直しですが、お預かりしたのは夏物のパンツでモヘアが多く
入った生地の物でした。モヘアという繊維はとても反発力が強く、そのため
シワになりにくいという特長がありますが、湿気にあうと縫い目が膨れて
来てしまうという短所もあります。そこでそれを防ぐために、地縫いをした
後に縫い目を片返しにして押さえ縫いをします。
 表から見ると、殆ど見えない位に縫い目の横に星が入っている事になる訳
です。お客様からご連絡を頂いた時には「縫い目がほつれてしまった」との
事でしたが、よく見てみると…この押さえで入れていた糸がなくなってし
まっていたのでした。
 この”押さえで入れた糸”が、長年履いている内にほつれて来る事はなくは
ないのですが、その場合は一部がほつれたり切れたりします。
 今回はかなり長い範囲の糸がなくなっていたので「?」と思い、お客様に
伺ったところ、お手入れの関係で年中アイロンを当てていらしたそうです。
つまりアイロンの摩擦?…だと思われますが、こすれて糸がなくなってし
まっていた訳です。

 お直し物をする時、あぁこんな直しもあるんだな…と新しい発見、と言い
ますか、新たなホツレや傷みに出会う事はよくありますが、今回は特に珍し
いお直しだったのではないかと思います。
 いずれにせよお手入れから生じたお直し…というのには洋服屋としては頭
が下がる思いです。

消えた糸の写真
仕立てた時と同じ色の糸を探して縫い直す


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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