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#124.ロンドンシュランク

Posted by KINN Tailor on 15.2013 生地の話   0 comments   1 trackback
 私共が扱っている洋服地の殆どはウール…すなわち羊毛になります。
 これらは大半が海外から送られて来るのですが、最近は空輸が中心になり
ましたので、注文をすると早い時には5日もすると生地が手元に届きます。
 また空輸ですから、昔とは違い生地がダメージを受けずに届くというのも
大変ありがたいことです。

 私が仕事を覚えた頃は船便でしたので、インド洋などの気温の高い所を長
時間通って来るため、生地が少し蒸れた状態になり、テカリなども生じます。
当時は裁断した生地に濡れた生地を当ててアイロンで蒸かし、表面の状態を
整える…という作業をよく行いました。
 当てる布は水に漬けて絞る位濡らしていましたので、手が荒れる事も多く、
結構面倒な作業ではありましたが、当時は避けられない工程でした。
 これはいわゆる輸送上の問題だったのですが、当時はその前段階の生地の
仕上げ方にも差がありました。
 生地は織り上げられた後、いわゆる仕上げ工程を経て売られている訳です。
この仕上げ工程で一時有名だったのが「ロンドンシュランク」です。
 簡単に説明しますと…綿のような布地に水を含ませて、それとウール地を
重ねて充分に水分がウール地に行き渡るようにします。そして丸1日位放置
してから綿の布地を取り除き、ウールだけにしてまた1日置きます。更にウ
ール地が完全に乾くまで陰干しするという工程です。
 ウールは(天然素材は皆)水分を含ませると詰まります。この工程を行う
とある程度まで目が詰まりますので、その後極端に詰まる事がなくなります
し、目が詰まる事で生地が美しくなる効果がある訳です。
 昔、有名な生地屋さんのご主人と話をした時に、「ロンドンシュランク」と
云うと、いかにも生地を詰めるような印象を受けますが、むしろ生地を美し
く仕上げるという目的の為に行われています。私は『ロンドン仕上げ』と呼
びたいと思います」との事でした。
 このシュランク仕上げの生地は「地のし」をしないでそのまま裁断しても
大丈夫!と言われていました(”地のし”とは、私がやっていたアイロンで蒸す
作業)。これはこのご主人の言う、仕上がりが美しいので”地のし”は不要…と
いう事だったのです。ところが、シュランク仕上げは生地を詰める為の物…
と勘違いされていた方も多く、「"地のし"をしてみたら、生地が詰まったから
詰まった分の生地代を返せ!」という話がちょくちょくあったそうなのです。
 ウールは厳密には、いつまでもいつまでも詰まり続ける物なので(ほんの
の僅かではありますが)、どんな仕上げをしても全く詰まらない…という事は
ないのです。
 でも、何十年も同じ服を着ていて小さくなって困った…という事はない訳
ですから、単に”言いがかり”だったのでしょう。

「ロンドンシュランク」は1900年代初めの頃に、ロンドンにあった工場で始
まったそうで、私が仕事を始めた頃は、こんなことが話題になった位、まだ
生地の仕上げ工程に差があったのです。
 シュランク仕上げでない生地の場合は、仕入れをした生地屋さんに頼んで
専門の所で”地のし”をして貰いました。
 その後私の家の近くに、ボイラーを備えた”地のし屋”さんができたので大変
助かったのですが、そんなお店ができる位に需要があったという訳です。


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2013.04.28 09:53 山下大輔 Weblog Version

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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