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#123.お直しの話

Posted by KINN Tailor on 08.2013 補正の話   0 comments   0 trackback
 以前お話ししたお客様(♯50.お客様との思い出)から、先日お直しの注文
を頂きました。
 この方は亡くなられたご主人様の服を、息子さんと奥様用にお直しをされ
てお召しになられています。今回は、奥様用にお直しをしたのですが、その
工程を紹介してみたいと思います。

 紳士物のジャケットを婦人物に替える訳ですが、お直しのポイントは2つ
あり、丈を短くする事と胸の”はらみ”を出すという事です。
 このような大掛かりなお直しの場合は、ジャケットを各パーツごとにばら
してからご本人の型紙を乗せてどれ位詰める事ができるか…を見ます。
 一番の問題は、胸ポケット脇ポケット、そして釦ホールです。これらは
既に穴を開けて細工をしてしまっていますので、位置を変えたくても変える
事ができません。ですから、それを前提として全体のバランスを考えながら
直せる範囲を決めていかなければなりません。
 今回の生地はシャドウストライプでしたので、難しい柄合わせなどはなく、
後身頃の幅はほぼ型紙通りに直すことができました。問題の前身頃ですが、
釦やポケットとにらめっこをしながら、肩と裾で調整し、約7cm短くする事
ができました。また、ご主人に比べて奥様は”なで肩”ですので、肩の角度を
変える
事でアームホールも小さくする事ができましたので、袖は袖山で長さ
を調整し、袖の幅も詰める事ができました。
 袖については、当時の職人さんの釦ホールの”かがり”が見事だったので、
袖口はできるだけ触りたくなかったのですが、上手い具合に調整せず生かす
事ができました。
ボタンホール*
*「釦ホール」

 さて一番の問題が、胸のはらみをどう出すか…という事です。本来は横向
きにダーツを取りたいところですが、既に前に縦のダーツが1本、脇ダーツ
が1本入っていますので、ここに横向きのダーツを取ることはできません。
そこで、脇ダーツを利用する事にしました。
 まず脇ダーツをほどいて前身頃のアームホールを短くし、縫い込みを利用
して少し幅を広げます。そして、この短くした箇所をアイロンで上に伸ばし
更に前に曲げていく方法ではらみを出します。
脇ダーツで直す*
 このアイロンワークを行ってから、脇ダーツを縫い直すと胸が前に出た形
になる訳です。
 前の釦は、右側にも釦ホールを開けて拝み釦を使うことにしました。
後身頃脇ダーツジャケット*
*左から「後身頃」「脇ダーツ」「ジャケット(拝み釦)」

 通常のお直しはご本人の「体型の変化」によるものが殆どで、このように
紳士物から婦人物へというのは大変珍しいケースです。希望されても背丈の
差などの問題で直せない事の方が多いと思いますが、今回は綺麗に直す事が
でき本当に良かったと思います。このお客様からはご注文と共に「素晴らし
い教材」
も頂戴した…と云えるのではないでしょうか。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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