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#119.時代の流れと共に その壱

Posted by KINN Tailor on 11.2013 パンツの話   0 comments   0 trackback
 永年洋服屋をしていますと、色々と流行の変遷を経験する訳ですが、今日
はちょっと懐かしい話と共にパンツの流行についてお話したいと思います。

 私の父の時代は、殆どのお客様がパンツにはサスペンダーを使っていらっ
しゃいました。
 当時の製図の本を見ると、サスペンダー仕様の製図が中心で、どれも股上
が深く腰の所に吊りボタンの絵が描いてあります。
 パンツをサスペンダーで吊ると、何と云っても足が長く綺麗に見えるのが
特徴ですし、パンツが落ちてくる心配がない…という利点もあります。
 ただ問題点は「肩が凝る」という事です。当時のパンツはウエストの辺り
もゆったり作ってありましたので、サスペンダーでしっかり吊らないといけ
なかった訳です。そうすると当然肩に負担がかかり、肩が凝ってしまいます。
 当時は今よりも生地が厚かったですし、股上が深い分長く、また太さもあ
りましたから、かなりの重量の物を肩で吊っていたことになります。
 私が仕事を始めた頃には、サスペンダーだけでなくベルトを使われるお客
様もいらっしゃるようにはなりましたが、当時のデザインはかなりゆったり
した太めのラインで股上も深かったので、ベルトだけですとパンツがずり落
ちてしまって、時々上げなければならない…という事が起こりました。
 そこでサスペンダーも使えるようにと、外側はベルト通しを付けて内側に
サスペンダー用の釦を付ける
…というご注文をなさる方が沢山いらっしゃい
ました。
 この「内側に釦を付ける」…という作業は結構長い間やっていました。
この後にクリップ式のサスペンダーというのが出るのですが、このクリップ
があまり信用できない物で、生地が厚いと上手く咬めなかったり、壊れてし
まうことも多かったので、用心のためにも釦を付けておく…という事をした
ためです。
 さて、ベルトを使うパンツが出てきたお陰で、サスペンダー仕様のパンツ
の問題が解決した事があります。
 ベルト仕様のパンツは、サスペンダー用の物と比べるとウエストの所が細
くなっています。パンツが落ちないようにするために、ウエストにフィット
させている訳です。
 サスペンダー用パンツにも、そのウエストの辺りを絞る…という事を取り
入れてみたところ、サスペンダーだけで吊らなくなったため、肩への負担が
減って着るのが断然楽になったのです。
 今でもサスペンダー仕様のパンツのご注文を頂いた際は、この方法で作り
ますので、私共のパンツは股上が深めです。その方がサスペンダーへの負担
が減って楽だからです(♯51 ズボン吊りの話参照)。
 さて、ベルトだけだとパンツが落ちてしまう問題ですが、色々工夫しまし
たが一番効果があったのが、腰裏のやや低めのところに「滑り止めのゴム」
を付けるという方法でした(このゴムは今でも存在します)。
 当時は、ゴム製のイボイボのあるベルトも売られていて、パンツをはく前
にこのベルトを巻くとパンツが落ちにくくなる…という仕掛けだったのです。
 現在はパンツがずれて来る事をさほど気にしない方が多いと思いますが、
サスペンダーからベルトに移行した時代は、特に問題になっていたのです。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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