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#107.店の成り立ち

Posted by KINN Tailor on 17.2012 父の話   0 comments   0 trackback
 先日少々意外な方から久々のお電話を頂き、お目に掛かりました。
その方は、父が修行させて頂いていた洋服店のご親戚(当時のご主人のひ孫
さんだそうです)だったのですが、父が独立してからは殆ど連絡を取り合う
事もありませんでしたので、ちょっとびっくりしました。
 この方は洋服とは全く関係のない仕事をされているのだそうですが、当時
の店の記録を残したい…という事でお越しになりました。
 それで、昔父や母から聞いた私共の店の成り立ちを思い出したので、今日
はその話をしたいと思います。

 私の祖父は横浜で婦人服店を営んでいました。父は二男だったのですが、
長男は婦人服店へ、父は紳士服店へ修業に行く事になったそうです。残念な
事に長男は若くして亡くなりましたので、婦人服店はもうありません。
父の方は、祖父の友人が日比谷でかなり大きな紳士服店を開いていたので、
そこで10代の頃から修業を始めさせてもらったそうです。
 最初はお店に何人か居た番頭さんの一人に付いて、営業の仕事から勉強し
たそうです。番頭さんにはお抱えの人力車が付いていて、それに乗って営業
に行くのですが、父は生地見本の入ったカバンを持って後から歩いてついて
行く訳です。修業というのは正にこういう事から始めるのでしょうが、かな
りの重労働だったと思います。
 ご主人は、父に商売のやり方から教えて下さるつもりだったようですが、
父は商売には全く向いていなかったようで、ちっとも売り込みが上手くいか
ず、番頭さんに「お前は営業には向かないから技術を覚えなさい」と言われ
て、裁断を勉強する事になったそうです。
 裁断はよく覚えたそうですから、根っからの技術屋だったのですね。これ
は一生そうで、父は売り込みとかそういった事は本当に苦手だったのです。
遺伝とは恐ろしいもので、私も幾つになっても上手くありません。正に「血」
なのだろうと思います。
 さて、そのお店に修業に入って12~3年経った頃にご主人が亡くなられて、
お子さんが後を継がれることになりました。その時に「父は高級品を作るの
を主にして商売をしていたけれど、私はもう少し量を多く作る仕事をしたい
と思っている。あなたは高級品を作る修業をして来たのだから、この機会に
独立しなさい。
あなたに付いていた職人は、そのままあなたに付けてあげる
から」と言われたそうです。
 そこで父はこの話をありがたくお受けして、大正2年のお正月に店を
構えました。父は当時金二郎という名前だったので(後に金生に改名してい
ます)、上の一文字を取って「金洋服店」とした訳です。
父は最初に技術を教えて下さった番頭さんや、開店を薦めて下さったご主
人に大変感謝していました。

 今年で私共は開業100年を迎えましたが、丁度その年に父がお世話になっ
たお店の親戚の方とお会いすることができたのも、何かのご縁なのだろうな
と思います。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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