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#102.道具の話 鋏
私達は仕事の上で毎日のように鋏を使います。今私が使っている鋏は5種
類あって、用途によって使い分けています。
まず紙を切る鋏、次に裁断をする時に使う”裁ち鋏”と仕事用の鋏、そして細
かいほどき物の時などに必要な小鋏とニギリ鋏になります。
その内特に大事なのが裁ち鋏と仕事鋏です。裁ち鋏は大切な生地を切る時
に使いますし、仕事鋏は何と言っても使う時間が長くなります。ですから良
い刃で切れ味が鋭くなくてはならないのは勿論なのですが、もう一つ大事な
事が手で握る箇所の出来が良いか…という事です。
握る所が上手くできている鋏は使いやすく、長く使っても疲れません。私
の仕事用の鋏は、日本製の”長太郎”を使っています。そして裁ち鋏は英国製
のウィルキンソン(Wilkinson)で、これは父が創業した時に入手した物で、
大きい物とやや小さい物と2丁あります。ウィルキンソンというメーカーは
どうもサーベルも作っているらしく、ハンドルの所がとても手に馴染みやす
い形で(軍人のサーベルの柄にそっくり!)使いやすいのです。
さて持ち手の話ですが…私たちの仕事の一つに切躾(きりびつけ)という
作業があります。基本的に布地は2枚重ねで左右を同時に裁断します。そし
て左右同じ所に印を付けたい時に、白い躾糸を使って合印を付けます。2枚
重ねた布に躾糸を入れて、布と布の間の糸を切っていきます。3~5㎜位の所
に糸2本で1つの印、それが3㎝間隔でありますから結構細かな作業という事
になります。
実は私はとても手が大きくて、昔は日本製の手袋で合う物がなくて外国製
を探すのに苦労した事もあったくらいです。ですから鋏のハンドルも大きい
方が使いやすいのですが、切躾となると刃が小さい方が使い勝手がよくなる
訳です。
そこである時思いついて、いきなり有名な刃物屋さんへ行って、「刃が小
さくてハンドルの大きい鋏を作ってもらえませんか?」と頼んでみたところ、
最初は妙な顔をしていましたが、よく理由を説明したら、理解してくれて引
き受けてくれました。
2~3カ月経った頃に仕上がったとの連絡が入ったので、楽しみにして急い
でお店に行ったのですが、係の人が「いやぁ、今しがたまでここにあったの
に行方不明になってしまって…」と言うのです。
それから店の中をさんざん探し回ってくれたのですが結局見つかりません。
お店の人は、もう一度探すと言うので一旦家に戻って連絡を待っていたので
すが、何日経っても連絡が来ないのです。もう一度作り直してもらおうかな?
と思ったのですが、何だか気が抜けてしまい、結局止めてしまいました。
それにしても、この特製の鋏はどこへ消えてしまったのでしょうか・・・?
お店は日本橋にある有名な所ですから、いい加減なことはしないと思うので
すが・・・「鋏怪談」といったところでしょうか。
当時は今より遥かにのんびりしていたので「どうしたんでしょう?…なく
なってしまいました」・・・「そうですか」というやり取りが成立したのだ
と思います。
その時無事に受け取れていたら、かなり使い込んでいたでしょうし、この
ブログで得意になって紹介していたでしょう。そう思うと残念です。
さて、先程紹介した、父から引き継いだ裁ち鋏は今年で100歳になります。
いい道具は長持ちするんだな…とつくづく感心します。
時々家の近所の金物屋さんに頼んで研いでもらいますが、そこのご主人も
鋏が好きで頼む度に「いいね、いいね」と言ってくれます。やはり伊達に100
年生きてきたんじゃないな…と思うと、感慨無量なものがあります。

(上から)
・Wilkinsonの裁ち鋏(大)
・Wilkinsonの裁ち鋏(小)
・長太郎 仕事鋏
・紙用鋏
・小鋏
・にぎり鋏
類あって、用途によって使い分けています。
まず紙を切る鋏、次に裁断をする時に使う”裁ち鋏”と仕事用の鋏、そして細
かいほどき物の時などに必要な小鋏とニギリ鋏になります。
その内特に大事なのが裁ち鋏と仕事鋏です。裁ち鋏は大切な生地を切る時
に使いますし、仕事鋏は何と言っても使う時間が長くなります。ですから良
い刃で切れ味が鋭くなくてはならないのは勿論なのですが、もう一つ大事な
事が手で握る箇所の出来が良いか…という事です。
握る所が上手くできている鋏は使いやすく、長く使っても疲れません。私
の仕事用の鋏は、日本製の”長太郎”を使っています。そして裁ち鋏は英国製
のウィルキンソン(Wilkinson)で、これは父が創業した時に入手した物で、
大きい物とやや小さい物と2丁あります。ウィルキンソンというメーカーは
どうもサーベルも作っているらしく、ハンドルの所がとても手に馴染みやす
い形で(軍人のサーベルの柄にそっくり!)使いやすいのです。
さて持ち手の話ですが…私たちの仕事の一つに切躾(きりびつけ)という
作業があります。基本的に布地は2枚重ねで左右を同時に裁断します。そし
て左右同じ所に印を付けたい時に、白い躾糸を使って合印を付けます。2枚
重ねた布に躾糸を入れて、布と布の間の糸を切っていきます。3~5㎜位の所
に糸2本で1つの印、それが3㎝間隔でありますから結構細かな作業という事
になります。
実は私はとても手が大きくて、昔は日本製の手袋で合う物がなくて外国製
を探すのに苦労した事もあったくらいです。ですから鋏のハンドルも大きい
方が使いやすいのですが、切躾となると刃が小さい方が使い勝手がよくなる
訳です。
そこである時思いついて、いきなり有名な刃物屋さんへ行って、「刃が小
さくてハンドルの大きい鋏を作ってもらえませんか?」と頼んでみたところ、
最初は妙な顔をしていましたが、よく理由を説明したら、理解してくれて引
き受けてくれました。
2~3カ月経った頃に仕上がったとの連絡が入ったので、楽しみにして急い
でお店に行ったのですが、係の人が「いやぁ、今しがたまでここにあったの
に行方不明になってしまって…」と言うのです。
それから店の中をさんざん探し回ってくれたのですが結局見つかりません。
お店の人は、もう一度探すと言うので一旦家に戻って連絡を待っていたので
すが、何日経っても連絡が来ないのです。もう一度作り直してもらおうかな?
と思ったのですが、何だか気が抜けてしまい、結局止めてしまいました。
それにしても、この特製の鋏はどこへ消えてしまったのでしょうか・・・?
お店は日本橋にある有名な所ですから、いい加減なことはしないと思うので
すが・・・「鋏怪談」といったところでしょうか。
当時は今より遥かにのんびりしていたので「どうしたんでしょう?…なく
なってしまいました」・・・「そうですか」というやり取りが成立したのだ
と思います。
その時無事に受け取れていたら、かなり使い込んでいたでしょうし、この
ブログで得意になって紹介していたでしょう。そう思うと残念です。
さて、先程紹介した、父から引き継いだ裁ち鋏は今年で100歳になります。
いい道具は長持ちするんだな…とつくづく感心します。
時々家の近所の金物屋さんに頼んで研いでもらいますが、そこのご主人も
鋏が好きで頼む度に「いいね、いいね」と言ってくれます。やはり伊達に100
年生きてきたんじゃないな…と思うと、感慨無量なものがあります。

(上から)
・Wilkinsonの裁ち鋏(大)
・Wilkinsonの裁ち鋏(小)
・長太郎 仕事鋏
・紙用鋏
・小鋏
・にぎり鋏
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