Loading…

#98.御殿場の家 その四

Posted by KINN Tailor on 15.2012 懐かしい話   0 comments   0 trackback
 御殿場線は、東海道線(今のJR東日本)の国府津駅から富士山の麓の方へ
進み、坂を上った所が御殿場駅になりますが、そこからまた坂を下って沼津
で再び東海道線と接続します。つまり国府津と沼津が海岸で、御殿場は山岳
部なので、本来あまり魚とは縁がない筈です(川魚は別ですが)。
御殿場その四**
 街には魚屋さんは勿論ありましたが、うちには沼津から魚屋さんが行商
やって来ていました。夏休みに職人さん達も一緒に行っている時などは結構
な人数になりましたから、よく鰹を一本買ってお刺身にしてもらい、皆で食
べたものです。
 実は沼津には干物問屋をやっている親戚もいて、時々遊びに行っては鯵の
干物をもらって来たりもしました。今と違って、本当に手作りの干物なので
とても美味しい物でした。
 沼津の親戚の家は狩野川(沼津市内を流れている大きな川)にある船着き
場のすぐ近くにあり、立派な土蔵のある家でした。家の前には大きな広場が
あって、港にが上がると、近隣の奥さん達が大勢動員されて作業をしてい
ました。
 干物の作り方は皆さんご存知だと思いますが、鯵を開いてから水で洗い、
濃い塩水に漬けてから、大きな金網を貼った木の枠(丁度障子位の大きさ)
の上に綺麗に並べて陽に干します。私は最初、魚の干物は何日も干すのかと
思っていましたが、日差しの強い時期など、ほんの2,3時間干すともうでき
上がりなのですね・・・。
 そこで、できた干物を箱に詰めてすぐに東京の市場へ発送します。そうす
ると、すぐ買い手がつくらしく、親戚のおばあちゃん(私はこの人にとても
可愛がってもらいました)の話だと、「その日の内に幾らで売れたか判る
から、商売としてはとても早いんだよ」と教えてもらったものです。
 そして、仕事が一段落すると私のためにわざわざ干物を作ってくれました。
これは特製だったらしく、塩水に漬けるのではなく塩をパラパラと魚に直接
かけて(この加減が難しいそうです)、サッと水で洗って小さな台の上に干し
てくれるのです。この干物は実に美味しくて言葉では言い表せない味でした。
 数年前にこの家を継いだ息子さんと話しました。私よりも10歳位年下で
すが、若い頃はまだまだ手作業が中心で、小鯵(たぶん味醂干しにするもの)
を明け方まで何千匹(時には1万匹位)開いたものだ…と言うのです。
 そして、クタクタになっているのに、その日の駄賃で飲みに出かけたもの
だ…と懐かしそうに話していました。
 今では大きな干物屋さんになっていて、実際に作業に加わる事はないので
しょうが、やはり若い頃の苦労した話は懐かしいようでした。

 さて御殿場といえばもう一つ美味しい物の思い出があります。
 御殿場という土地には、古くから外国人が大勢住んでいました。話による
と軽井沢に人が多く集まり過ぎたので、もっと静かな高原はないものか…と
いう事でこの箱根の西麓が選ばれたのだそうで、私の家があった「二ノ岡」
から箱根の中腹にかけてのエリアは「アメリカ村」と呼ばれ外国人の別荘地
になっていました。そんな関係から外国人から教えてもらって始めたという
ハム・ソーセージの「二ノ岡フーズ」というお店がありました。
 うちの別荘の留守を管理してくれていた人がこのお店の親戚という事もあ
り、お店とも親しくさせてもらっていました。
 広い庭の一部に小さな工場兼店や、燻製小屋、豚小屋などがあって、時々
作る様子を見させてもらいました。自家製の”できたてのハム”ですから、味の
程は説明するまでもありませんが、戦争中は色々な事情で年中作れなかった
ようで、売り出しの日には長い行列ができていたのを覚えています。

 そして何といっても思い出深いのが…終戦後の大変な時にこちらのお家か
豚のモモを1本骨付きの状態でいただいたことです。
 豚の脚はかなりの大きさなので、廊下の端の天井からぶら下げておいて、
少しずつ切り分けて調理して食べました。本当に食糧のない時期でしたから
とても有り難くいただきました。
 少し前に知り合いの方から御殿場のお土産で頂いたのがこちらのハムで、
未だ健在!ということを知って、とても嬉しく思いましたし、味も変わらず
美味しかったです。
 私は今でも干物やハム類などが大好きなのですが、やはりこの「御殿場
時代」
の影響が大きかったのだろうと思います。


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://kinntailor.blog98.fc2.com/tb.php/134-95aaf025

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR