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#76.ホームスパン

Posted by KINN Tailor on 07.2012 生地の話   0 comments   0 trackback
 私共のお客様のお一人に伝統的な物をとても大切にされる U氏という方が
いらっしゃいました。
 ある有名な出版社にお勤めでしたが、もともと食べ物に大変詳しい方で、
伝統的な作り方やずっと同じ味を守り続けている…というような事をとても
尊重されている方でした。

 ある時 U氏からとても変わったオーバーコートのご注文を頂きました。
 その内容は・・・「なるべく"新品に見えない" コートを作って下さい。具
体的には…お祖父様が着ていた物を貰って着ているけれど、保存状態が非常
に良いので新しい物のように見える…というようにしたいのです!」と、何
とも微妙な難しいご依頼でした。

 デザイン自体は小さなラペルのついたシングルの長いオーバーコートで、
裾を広げてふわりとした形をご所望でしたので、特別な物ではありませんで
したが、生地を何にするかは相当悩みました。
 色々と考えた結果、その頃(20年位前)としては殆ど入手できなくなって
いた "ホームスパン"を使うことにしました。
 ホームスパンは、手で紡いで太めの糸を作り、手織りの機械を使って織り
上げたツィードの一種で、「家庭の作業で作る」という意味でホームスパン
と云います。
 この生地を選んだ理由は、U氏のお祖父様の時代・・・明治頃はツィード
が流行っていた事と、手織りの生地はゆっくり織られている為味があるので、
古き佳き時代を思わせるのにピッタリだと思ったからです。
 また、ホームスパンは厚さの割に目方が軽いので、ご希望の大きなコート
には適していました。
 探すのも大変でしたが、幸いにもあるお店の棚に長いこと積んであったの
を見つける事ができました。
    ホームスパン**
    比較的綺麗に織られているホームスパン
    ※もっと糸の太さが違ったり、織りムラがあるものもある


 いざ出来上がってお納めしたら U氏は大変喜ばれて、あっちこっちへ着て
お出掛けになりました。
 後日「お祖父様から譲られたコートに見られましたか?」と伺ったところ、
「一生懸命そのように宣伝したのだけれど、やはり綺麗なのでなかなか何十
年も前の物には見てくれないんですよ」と苦笑しておられました。
 ご本人は、生地が厚い割にふわっとした感じでとにかく重くなくて良い…
と結構重宝して着て下さっていたようです。

 現在ではホームスパンは見かけなくなりましたが、今のようにジャケット
&パンツの時代には向いていると思います。また流行して欲しいですね。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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