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#72.アイロンの話

Posted by KINN Tailor on 09.2012 道具の話   0 comments   0 trackback
 私たちの仕事にとって、アイロンはとても大切な道具の一つです。
 家庭用に使われている物は、洗濯した物のシワを伸ばすのが主な役割だと
思いますが、私たち仕立て屋の場合は、"美しい形を出す" ための最も大切な
作業が「アイロンワーク」になります。
 私が仕事を始めた頃は工場に何台かのアイロンがあり、これらは全て電気
でした。当時はガスアイロンもあって、ガスを上手に調節すれば一定の温度
が保てる事から愛用者も多かったのですが、やはりガス漏れの心配があった
のと、電気の方はサーモスタットの改良によって安定性が増したので、主流
は電気になっていったようです。
 私が工場で使っていたタイプは、コードを差し込んで通電し、熱くなった
らコードを外し、冷めたらまたコードを差す…という原始的な物でした。熱
を長くもたせるために、かなり目方のある物(普通の仕事用は7ポンド、仕上
げ用は10ポンド)だったので、最初の頃は重くてなかなか大変でした。

  10ポンドアイロン**

 当時はサーモスタットがありませんでしたから、指先にちょっと水を付け
てアイロンの底を触り、その時の水が蒸発する音で温度を見るというやり方
でした。始めはアイロンに直接触るのが怖かったですし、時々火傷をしたり
もしました。
 ちょいちょい失敗したのは、うっかり糊のついた布地にアイロンを当てて
しまうと、糊がアイロンにこびり付いてしまって滑りが悪くなる…という事
でした。そんな時は、一度アイロンを冷ましてから糊を拭き取るのですが、
とても細かい紙ヤスリ(1000番くらい:水ヤスリと呼ばれている)に少し水
を付けてこすると、汚れが綺麗に落ちたものです。
 当時はドライアイロンでしたから霧吹きで水をかけたり、水の入った容器
を置いて刷毛を使って水をつけてアイロンをかけていました。
 業務用のスチームアイロンが出始めた頃は、大型のボイラーが必要で設備
がかなり大袈裟でしたので、なかなか普及しませんでした。小型のタンクで
比較的手軽に使えるスチームアイロンが出てきたのは…20年位前でしょうか?
 今はサーモスタットのお陰で温度調節も簡単にできますし、随分と便利に
なったものです。
 かなり前の事になりますが、知り合いの家を訪ねた時、かなり古いタイプ
の重いアイロンを、何と"漬け物石" 代わりに使っているのを見て驚愕した事
があります。最初はなかなか立派な取っ手が付いた漬け物の蓋だなぁ、と思
っていたのですが、良く見たらアイロンでした。余程ちょいちょい洗わない
と塩分ですぐ錆びてしまうでしょうね。。。


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プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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