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#228.仕事の勉強の思い出 その十四 ~上襟掛け~

Posted by KINN Tailor on 27.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 襟芯を身頃に付け終わると、上襟を掛ける作業になります。

 襟の構造について簡単に説明しますと・・・
 襟芯は身頃に付くと襟山で折れて、カラー下襟(襟腰)に別れます。
上襟1**
 つまりカラー側は外側にカーブしていて、下襟は内側にカーブしています。
ここに一枚の布で裁った上襟を掛けていく訳です。従ってカラー側はカーブ
に合わせてシワが寄らないように
、そして突っ張り過ぎないように付けなけ
ればなりませんし、下襟側は布を上手く縮めながら付けなければなりません。
 襟の形は頭に入っているのですが、実際に上襟を掛けてみて、初めてこの
難しさを実感しました。

 まず初めに上襟がそれぞれのカーブに合うようアイロンでクセを取ります
職人さんは「S字型にクセを取るんですよ」と言いながらアイロンの動かし方
を教えてくれましたが、布地を捻るような操作はなかなか複雑でコツを掴む
のに少々時間がかかりました。
上襟2**
 何とかクセ取りのコツを掴んだものの…実はそれからの方が大変でした。
下のイラストの順番に躾糸を入れて止めていく訳ですが、上手く付いたと思
って試しに着てみるとシワが出てしまいました。カラーは肩から先がそれま
でのカーブとは逆側にシャクレる
ので、そこにツレジワが出てしまうのです。
 襟は首から肩にかけての場所に付く訳ですから、幾つもの複雑なカーブを
表現しなければならなかったのです
上襟3**
 色々と勉強していく内に気付いた事は、首の後の所は芯に沿って平らに
ければ良く、途中から肩へと繋がる所は、着た時に引きジワがでないように
緩みが必要だ…という事でした。この緩み量は意外と必要で、片側で1cm位
は長くしなければ綺麗に付ける事ができなかったのです。

 更に意外だったのは、肩からゴージに掛けての部分はシャクレるので長さ
ではなく幅が必要だったという事です。父は「長めの襟を作るために上襟に
付けるゆとりで最も必要なのが、この幅の部分
だ」と言っていました。長さ
ではなく幅
に着目したのは大きな発見だったようです。
上襟4**
 前回お話したように、この頃は丁度父が襟の研究をしていて、「長い襟に
長い上襟を掛ける」
という方法を始めていました。職人さんたちはまだ以前
長さの襟を作っていたので、この"長さや幅の頃合"というのを誰もわかって
おらず、手探り状態でした。
 襟で特に厄介だった事は、ボディに着せてみて綺麗に仕上がって見えても、
実際に袖を通してみるとシワが出たりした事です。身体の影響を受けやすい
場所
なのだな・・・と、つくづく思いました。

 長めの襟は当時の私にとって難題中の難題だった訳ですが、この時襟の難
しさを痛感した事が、後に「プルダウン」を研究する上で大いに役立った事
は間違いありません。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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