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#198.父の生地見本 その壱

Posted by KINN Tailor on 29.2014 生地の話   0 comments   0 trackback
 今回は、昔父が作った生地見本の中から、今では滅多に見られない物を何
点かご紹介したいと思います。

「生地見本」と云っても、お客様に見せるための物ではありません。当時は
出入りの生地屋さんが見本を持って来て、その中から生地を選び、1着分ずつ
仕入れたものです。それをお客様にお見せしてご注文を頂く訳です。
 そして裁断をした後の残った生地の内、気に入った物を記念として見本
していました。
 私共では生地は割とたっぷり仕入れていましたので、かなり大きな見本が
残っています。そして父の字で書き込みをしてあるのが大変懐かしく・・・
当時を思い出させます。
 今回は、父が好きだったツィードを選んでみました。

 まず最初は、ツープライの糸で織ったスコッチ(Scotch)のオーバーコー
ティングです(ツープライは通常縦横1本ずつの糸で織るところを2本ずつで
織った物。フォープライまである)。

スコッ**
スコッチ(Scotch)

 驚くのはその目方です。何と…32~34オンス!と書いてあります。
 ご存知のように生地は厚さを重さで表示します。ヤード/ポンド法の時代
(つまり英国物が主流だった頃)は1平方ヤードの重さを表示していました
が、現在では1平方メートルの重さをグラムで表示する場合が多いようです。
 この見本の頃は冬物が15~16オンス(450g)、合い物が12~14オンス
(350g)、夏物が10オンス(280g)位でしたが、今ではずっと軽くなって
冬物でも300~350gぐらいしかありません。
 さて先程の生地ですが…32~34オンスですからおよそ950g位ある訳で、
オーバーを作るためには1平方ヤードの5.5倍の生地が必要ですから5kg位
なります。昔はこんなに厚く重いオーバーを着たのか!とビックリしますね。

 次はホームスパンです。(Homespun)
 ホームスパンは手紡ぎ、手織りで「これぞホームスパン」という印象です。

ホームスパン**
ホームスパン(Homespun)

「ホームスパン」と呼ばれている生地の中には機械織りの物もあるようで、
本当に手で織った物を、特にジュニュインホームスパン(Genuine Home
spun)
と言う必要があるようです。
 この生地も8.5~9オンスありますから、主にオーバー用として使ったのだ
と思いますが、先程の物に比べればずっと軽く、手織りならではのふわっと
した手触りが魅力です。

 続いてはハリスツィード(Harris Tweed)です。
 今やハリスツィードは日本でも大人気で、そのマーク(地球の上に十字)
も有名ですが、(この生地に書き込まれた父の説明によると…)生地の裏側
5ヤード毎にマークのスタンプが押されているそうです。確かにこの見本
の裏側にもスタンプがありますね。

ハリスツィード表側**
ハリスツィード(Harris Tweed): 表
ハリスツィード裏側**
ハリスツィード(Harris Tweed):裏

 この生地が珍しいと思うのは、100%バージンウールで織ってあるから
です。バージンウール(Virgin Wool)というのは、乳離れした直後の子羊
から刈った毛の事で、その羊の生涯で一度しか取れない貴重な毛なのです。
 一番最初に取れるのがバージンウール、そして生後7ヶ月までの羊の毛を
ラムズウール(Lamb’s Wool)、それから2歳までの毛をイヤリング(Year-
ling)
と呼びます。
 1着分の生地を織るのに子羊が4頭位必要だそうですから、1反織ると
すると、同じ時期に生まれた羊が相当数いなければならない事になります。
 この生地はバージンウールと言ってもハリスツィードですから、ふわっ
ふわした感じではありません。ハリスツィードの中では柔らかい感触です。

 では次回、この続きを・・・
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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