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#168.色物のドスキン(doeskin)

Posted by KINN Tailor on 24.2014 生地の話   0 comments   0 trackback
 前回、海外で生地を購入されるお客様の話をしましたが、その方々は主に
ロンドンで買われていました。当時、英国にとって洋服生地は今以上に大切
な輸出製品でしたし、1ポンド1,080円というレートもあってか生地を買って
くれる日本人は当地で大歓迎だったようです。

 お客様のN氏から伺った話では、生地を買うと色々とお店が便宜を計って
くれたようです。例えば購入した生地を持ち帰りたい場合は、空港受け取り
を薦められたそうで、その方が商品が輸出扱いになり、税金が安くなるのだ
そうです。
 他にも年に2~3回、N氏の自宅に直接生地見本を送ってくれたりしていま
した。私もその見本を見せて頂いたのですが…驚いたことが2つありました。
一つは、私共が普段生地屋さんで見る見本よりも価格が下がっているという
事でした。勿論、英国で買う方が安いのは当然ですが、それにしてもかなり
値段が違いましたので、個人向けには業者へ輸出品として出す料金とは別扱
いで出すのだな…と思いました。
 もう一つ驚いたのは、見本に同封されている説明書が日本語で書いてある
のですが、かなりの達筆で文章も上手だった事です。N氏は「上手いもんだ
ね。こんな上手な字はウチの執事でも書けないんじゃないかな?」と感心さ
れていたくらいです。
 そんなN氏が英国でお買いになった生地の中で、「本場は流石だなぁ」と
唸ったのが「ドスキン(doeskin)」でした。ドスキンは日本では主に礼服
用として使用されるため殆ど黒か濃紺しか入荷しません。N氏、は以前から
黒や紺以外のドスキンでモーニングを作ってみたいねぇ」と仰っていたの
ですが、日本では手に入らないために英国に行かれた際に探されたそうです。
 帰国されてさっそく生地を持っておいでになったのですが、選ばれた色は
緑色濃い茶色でした。お話によると、ごく普通に色物のドスキンがあった
そうです。
 結局緑色の方はノーマルなスーツにされ、濃い茶色の方モーニングを作
られました。モーニングは色物でも差し支えない物ですが、やはり日本では
作る方も、お召しになろうとする方も滅多にいらっしゃいませんので「流石
に洋服の事をよくご存知で、本当にお洒落な方なんだな」と思ったものです。
 翌年の新年、宮家にご挨拶の記帳に上がった際、偶然N氏にお目にかかっ
たのですが、例の濃い茶色のモーニングをお召しになっていました。お正月
に似つかわしい華やかな印象で、N氏ならではの上品な着こなしだったのを
覚えています。

 ここ数年、人々の礼服への関心が薄くなってしまったか…のようですが、
またいつの日か礼服をお召しになる方が増えて、色変わりのモーニングなど
のお話ができる日が来るのを切に願うばかりです。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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