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#91.直しの話 その壱

Posted by KINN Tailor on 27.2012 補正の話   2 comments   0 trackback
 オーダーメイドで服を作る時、その特徴の一つは「後から直しができる」
という事です。
 残念ながら体型は年齢と共に変化してしまう事が殆どですし、奇跡的に
体重が変わらなくても "身体のライン" という物はどうしても変わって来て
しまうものです。
 一番顕著に変化が出るのは、何と言ってもお腹周りでしょう。そこで、
今日はパンツの直しについてお話ししたいと思います。

 私共ではパンツを作る時にあちこちに分散させてかなりの量の縫込みを
入れておきます。図のBのラインが私共の縫込量です。
直し パンツの縫込み*

 独特の縫込みはオビ布(普通「ウエスマン」と呼ばれている)の長さで、
パンツ腰囲に比べて後中心のところで10㎝近く余分な布を付けます。
 オビ布だけ長くしたって仕方ないじゃないか…という方もいらっしゃる
かと思いますが、これには次のような理由があります。
 パンツは、よく前身にタックを取ります。お好みによっては2本取る方も
いらっしゃいます。
 仮にその分が5㎝あったとすると、そのタックをほどけば胴囲が片側で5㎝
大きくできることになります。普通の作り方でも腰の後側には3㎝位の縫込
みがありますから両方足すと、何と片側で8㎝も大きくできる訳です。
 普通パンツの直しの時は腰オビを外してしまう…なんて事はしませんから、
一般に売られているパンツにはこんな事はしてありませんが、私共の直しは
そこまでやる場合も想定しているので、身頃よりオビ布の方がずっと長い…
という一見無駄な事が行われているのです。

 以前、お客様で大変お痩せになった方が、急ぎでパンツが必要になり、街
にある修理屋さんに「大至急」と言って持ち込んで直してもらったそうです。
後になってそのパンツを私共お持ちにり「念のためちょっと見て下さい」と
おっしゃるので拝見したところ、確かに寸法は合っていたのですが、処理を
するのが大変だったのか、縫込み分の布や折角の腰オビ布を短く切ってしま
っていました。
 果たして1年位経った頃、体型が戻ってお太りになってしまったのですが、
直すことができず、全部作り直す羽目になってしまったのです。
 こんな風に、直し物は新調以上に注意しないといけない所が沢山あるので
用心、用心!…といったところですね。

 因みに、お太りになる時はお腹だけ大きくなることは少なく、お尻も一緒
に大きくなりますから、腰だけでなくお尻も直さなければなりません。
 また小さく詰める場合は、お尻の縫目で小さくすると後身頃が小さくなっ
てしまいます。人間が歩く時は足を前に出しますから、パンツは前身よりも
後身が大きい方が動くのに具合が良いのです。ですから詰める量が多い場合
は、後ではなく面倒でも両脇や前(ポケットを作り直し、チャックは付け直
しになりますが)で直さなければ、非常に歩きにくい服になってしまうので
注意が必要なのです。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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