Loading…

#53.毛皮のオーバー その弐

Posted by KINN Tailor on 28.2011 オーバーコートの話   2 comments   0 trackback
 前回オーバーコートの稿で毛皮の裏地について書いた後に、ちょっと苦労
したことを思い出しましたので、お話ししたいと思います。

 紳士物で毛皮を使う場合は、主に保温を目的にしますので、裏に貼ること
が多いのですが、昔はオーバーコートだけではなく、ベストの内側に毛皮を
貼る
ご注文も度々頂きました。
 テンやリスのように、毛足が長い物や短くても柔らかい毛の物は問題ない
のですが、刈り込んだムートンのように毛が短くて硬い物には随分悩まされ
ました。それは、「貼る向きがある」…ということなのです。
 手触りだけを考えると、毛の向きは下に向けるのが適当ですが、短毛で硬
い物の場合は、毛の向きがハッキリしていますので、下向きに付けると背中
の部分が上に上がって
きてしまうのです。
 では反対に上向きにしたらどうかというと、今度は背中が下がってしまい、
首のところが寒くなったりする訳です。
 ロングのオーバーコートなどは、裏全体に毛皮を貼ると相当な重量になり、
その重さ自体で上がったり下がったりすることなく収まってくれるのですが、
ショートコートやベストの場合には、この硬い毛のために毛の向きと逆側に
動いてしまう
のです。
 あれこれ考えている内に「じゃあ、毛を横向きにしたらいいだろう」…と
思い、試してみたところ、なんとベストは横に回ってしまったのです!
 さて解決法は・・・「背中の中心に向かって左右が向き合うように繋ぐ」
…ということでした。

 現在では毛皮を貼ることはなくなりましたが、最近、ウールでも同じこと
がありました。それは、やはり保温性を高めるためにベストの背中をウール
で作った時のことです。
 背中の部分を両面表地が出るように仕立てたのですが、毛並みがはっきり
した生地だったために、着ているうちにベストが上がってしまったのです。
そこで毛皮の場合と同様に、背中に向けて横向きに生地を繋いで作り直させ
て頂きました。
 ウールですし、内側なので簡単に作り直しができましたが、毛皮の場合は
そう簡単にはいかなかったろうな
…と、今でも印象深く記憶に残っています。

 最後に余談ですが・・・以前聞いた話では欧州の上流階級の方達は、毎年
新しい毛皮に買い替える
のが常識なのだそうです。
 勿論日本でもそういう方はいらっしゃるでしょうが、大半の方は(ミンク
やロシアンセーブルのような)高級な毛皮は一生もの…と、お考えではない
でしょうか。
 一年で毛皮が駄目になる筈はないのですが、専門家に言わせると、やはり
一年も経てば「古い毛皮」になる…ということなのだそうです。
 私は「一生もの」という考え方で良いと思うのですが、この話を聞いた時
歴史の違い…というか、習慣・価値観の違い…というか、何ともガッカリ
した
のを覚えています。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR