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#40.オリジナルの小物
パンツの釦やベストの尾錠…これらはスーツを引き立てる大事な小物です。
昔は、私の店でもこれらをフランスのメーカーに注文し、オリジナルとして
名入りのものを作ってもらっていました。
今はパンツの前はファスナーですが、当時は釦でしたし、基本的には三つ
揃いのスーツを作られるので、この釦や尾錠が大量に必要で、うちのような
小さな店でもオリジナルの小物の発注をすることができたのです。
何度か追加注文をしましたが、その内フランスに依頼するのが面倒になり、
日本のメーカーへ発注してみました。
仕上がってきた釦を見てみると、見本(フランスのもの)と微妙に違うの
です。写真の上がフランス製、下が日本製のパンツの前に使う釦です。

上)フランス製 下)日本製
※それぞれ「KINN」の文字が彫ってある
写真だと判りにくいかも知れませんが、フランスの方が何となく"すべっこ
く"(ツルツルしている)、サイズも僅かに小さいのです。そして真ん中の糸を通
す穴はフランス製の方が4つの穴が小さくて中央に寄っています。
釦を付ける際は、ツレデという糸を各穴に2回ずつ通します。糸は2本どり
ですから、1つの穴に4本かかることになります。そして、糸をかけた後で、
釦の裏側に出た糸を糸でキリキリ巻いて柱を作るのですが、穴が中央に寄っ
ている方が柱が細くなり綺麗に見えるのです。
日本のメーカーに問い合わせてみたところ、4つの穴をこれ以上近づけると
釦が割れてしまう…と言われました。
今でこそ"技術は日本"というイメージですが、当時はちょっと違いました。
「上等舶来」という言葉があったのを思い出します。

鋳物製の尾錠
※「KINN」の文字の文字を施してある
尾錠に関しては当時日本で作れる所がなく、やはりフランスに注文をして
いましたが、現在はしていませんので、今のストックがなくなったら終わり
ということになります。
最近はベストを作られる方が少なくなりましたので、尾錠を使うことも減
りましたが、この尾錠が約80年前に発注したものかと思うと、とても貴重な
ものに思えてきます。
釦はごく稀に「ファスナーではなく釦で…」という方がいらっしゃいます
ので、その場合は使いますが、これも残り少なくなってきました。
最初は各色揃えていましたが、やはり黒や濃鼠からなくなってしまい、茶
だの白だのが沢山残っていました。
ある時「染めてみたらどうだろう?」と思い、染色業者に依頼してみまし
たが、仕上がったものはとても汚らしく、使い物になりませんでした。
私はこの釦は「アイボリーナット 天然素材」だと思い込んでいましたので、
簡単に染まるだろうとタカを括っていたのですが、なんと!プラスチックだ
ったのでした。当時は天然素材の方がはるかに安価だった筈です。
最初に発注したのが100年近く前ですから、その時代すでにプラスチック
を使っていたこと自体が驚きです。フランスは進んでいたのですね。
昔は、私の店でもこれらをフランスのメーカーに注文し、オリジナルとして
名入りのものを作ってもらっていました。
今はパンツの前はファスナーですが、当時は釦でしたし、基本的には三つ
揃いのスーツを作られるので、この釦や尾錠が大量に必要で、うちのような
小さな店でもオリジナルの小物の発注をすることができたのです。
何度か追加注文をしましたが、その内フランスに依頼するのが面倒になり、
日本のメーカーへ発注してみました。
仕上がってきた釦を見てみると、見本(フランスのもの)と微妙に違うの
です。写真の上がフランス製、下が日本製のパンツの前に使う釦です。

上)フランス製 下)日本製
※それぞれ「KINN」の文字が彫ってある
写真だと判りにくいかも知れませんが、フランスの方が何となく"すべっこ
く"(ツルツルしている)、サイズも僅かに小さいのです。そして真ん中の糸を通
す穴はフランス製の方が4つの穴が小さくて中央に寄っています。
釦を付ける際は、ツレデという糸を各穴に2回ずつ通します。糸は2本どり
ですから、1つの穴に4本かかることになります。そして、糸をかけた後で、
釦の裏側に出た糸を糸でキリキリ巻いて柱を作るのですが、穴が中央に寄っ
ている方が柱が細くなり綺麗に見えるのです。
日本のメーカーに問い合わせてみたところ、4つの穴をこれ以上近づけると
釦が割れてしまう…と言われました。
今でこそ"技術は日本"というイメージですが、当時はちょっと違いました。
「上等舶来」という言葉があったのを思い出します。

鋳物製の尾錠
※「KINN」の文字の文字を施してある
尾錠に関しては当時日本で作れる所がなく、やはりフランスに注文をして
いましたが、現在はしていませんので、今のストックがなくなったら終わり
ということになります。
最近はベストを作られる方が少なくなりましたので、尾錠を使うことも減
りましたが、この尾錠が約80年前に発注したものかと思うと、とても貴重な
ものに思えてきます。
釦はごく稀に「ファスナーではなく釦で…」という方がいらっしゃいます
ので、その場合は使いますが、これも残り少なくなってきました。
最初は各色揃えていましたが、やはり黒や濃鼠からなくなってしまい、茶
だの白だのが沢山残っていました。
ある時「染めてみたらどうだろう?」と思い、染色業者に依頼してみまし
たが、仕上がったものはとても汚らしく、使い物になりませんでした。
私はこの釦は「アイボリーナット 天然素材」だと思い込んでいましたので、
簡単に染まるだろうとタカを括っていたのですが、なんと!プラスチックだ
ったのでした。当時は天然素材の方がはるかに安価だった筈です。
最初に発注したのが100年近く前ですから、その時代すでにプラスチック
を使っていたこと自体が驚きです。フランスは進んでいたのですね。