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#419.袖の話 最終話

Posted by KINN Tailor on 12.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 今回は「仕上げアイロン」の手順を説明します。

 袖が付いた後、縫い目から出ている袖や身頃の余分な生地をカットして揃
えます。
 次に、ユキ綿(マウントロール)を入れます。私は、前の合印から後ろの
合印迄長めに入れます。袖の裏地が捻れないように、躾糸で止めて裏地を縫
います。
 そして、いよいよ"仕上げアイロン"です。ユキ綿を入れると、袖山が綺麗
に膨らみますので、何となくそれで袖が完成したような気になりますが、私
は「しっかりとアイロンを掛けて、身頃と袖を馴染ませたい」という考えで
すので、以下のような手順でアイロンを掛けています。

〈仕上げアイロン手順〉
袖アイロン**

①袖に袖マンを入れて、前と後ろの縫い目にアイロンを掛けます。
 袖口も押さえます。
②袖の縫い目が上に来るように、鉄台を入れます。
 まず背中側の合印辺りから、山袖に向かって縫い目を押さえます。
③次に、胸側から山袖に向かって縫い目を押さえます。
 ユキ綿は一度潰れたようになります。
④肩の縫い目(肩先からで良い)から山袖に向かってアイロンを掛けます。
⑤肩に手を入れて、袖が上手く落ちているか…最後の確認をします。
⑥もう一度鉄台を入れます。今度は鉄台の大きなカーブの所に山袖のカーブ
 を合わせるようにします。
 上からアイロンで、ユキ綿が入っている所を押さえます。
⑦袖を軽く引っ張るようにして、山側から袖口に向かって軽くアイロンを掛
 けて完成です。

 ジャケットと言うと、襟の印象が強いと思いがちですが、肩の収まり
の落ち方
は見た目にも大きく影響します。
 肩の形を綺麗にしようとして肩周りに色々入れて硬くしてしまうと、見た
目は良いのですが、着た後で腕が動かなくなってしまいます。
 "見た目"と"着心地"…双方のバランスが上手く取られた「袖付け」を、是非
研究してみてください。

袖4**
*袖が仕上がりました。

#418.袖の話 その参

Posted by KINN Tailor on 21.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 袖の仮付けが終わりましたので、今回は「本縫い」と「綴じ」について
説明します。

 まず「本縫い」ですが、私は穴糸を使って返し縫いにします。
 この時一番気を付けなければならないのは、糸を強く引き過ぎない…と
いう点です。
 手縫いの場合目が粗い気がして、糸を強く引き過ぎてしまう事があるよう
ですが、手縫いの良さはミシンのように縫い目が硬くなり過ぎない事です
ので、それを忘れないようにして下さい。
 手縫いは苦手…という方がいらっしゃると思いますが、アームホールは小
さいのでミシンを掛けるのは意外と大変です。
 手縫いで真っすぐに縫う事ができるのであれば、手縫いをお勧めします。
手縫いですと様子を見ながら縫っていけますし、慣れればミシンよりも遥か
に楽な事がお判りになると思います。

◾︎本縫いの糸」を入れていく
070705056**

 袖の本縫いの次は、いよいよ綴じを入れていきます。
 綴じはジャケットの手縫いの中で、最も難しい作業と言われています。
身頃と袖肩パッド裏地など、沢山の違う素材の物をまとめて止めなけ
れば
なりません。
 こちらも本縫いと同様に、糸を硬く入れ過ぎると袖が動かなくなってしま
います。袖の綴じが上手くできたか否かで、後々の着心地に大きく影響して
きます。

◾︎垂れ具合を確認する
袖3-1**
まず袖が付いている所に片手を入れ、もう一方の手で上から抑えて袖付け
 の状態を確かめ
ます。
 縫い目に問題がなく袖が綺麗に落ちているようでしたら、綴じに入ります。

◾︎押さえ躾を入れる
袖3-2**
綴じの時に意外と厄介なのが、裏地です。
 裏地を綺麗に収めるために、裏地が弛んででいないか確認しながら、まず
 身頃に躾糸を入れます。
次に、袖付けの縫い目に躾糸を入れます。縫い代は袖側に倒します。
 表側から裏側までしっかり糸が通るように押さえます。

◾︎袖周りに綴じ糸入れる
袖3-3**
躾糸を2本取りにして綴じていきます。裏地側から先程縫い目に入れた躾糸
 をガイドに縫い目ギリギリの所に糸を入れます。
糸の入れ方は、裏地側を長く、袖の内側は短く糸が出るようにします。
 は布に対して直角に入れるのではなく、斜めに入れるようにします。
 そうすると生地の中に長く糸が入るのでループが長くなり、伸縮が効くよう
 になります。
糸はキツくせず、ゆったりと入れます。
 糸を細かく入れ過ぎるのも、硬くなる要因ですから気を付けて下さい。

070705060**
*躾糸2本取りで、ゆっくり入れていく。     
070705070.jpg
*綴じが入りました。

 次回は、「仕上げアイロン」について解説します。

〈つづく〉

#417.袖の話 その弐

Posted by KINN Tailor on 07.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 今回は、袖付けについて説明したいと思います。

 通常は、アームホールの大きさに対して山袖側で2cm、下袖側で1.5cm
程大きくなるようにします。
 山袖側を大きくするのは、袖山を丸く綺麗な形にする為の措置で、下袖側
腕を動かし易くする為に必要な「ゆとり」となります。
 袖が細いのは見た目は綺麗で良いのですが、腕は想像以上に動きがありま
ので、その事を考えると下袖側も大きめにする必要があります。
袖弐イラスト1

 袖を身頃に付ける前に、山袖側を丸くする作業をします。
 イラストにあるように、b' からc' の間に糸を入れて縮めます。糸が入って
いる所は実際に縫う所よりも上になりますので、大きくした 2cm分引いても
丁度良くはなりません。ですので身頃の の長さと、縮めた状態の b'
c’の長さを確認しながら引くと良いと思います。
 糸を引いた後は縮めて丸くなった山にアイロンを掛けます。ウールやカシ
ミアなど柔らかい生地は、あまり考えなくてもすぐに綺麗な形になりますが、
硬い生地は綺麗に丸くならず、シワがよってしまうことがあります。こうした
生地の場合はいきなり丸くしたい所にアイロンを当てるのではなく、もっと
下の方から・・・腕側から山に向かってスチームを掛けながら少しずつ丁寧
に形を出していく
と上手くいくと思います。

◼︎糸を入れてアイロンを掛けた状態
070705042**

 袖山が形になったら、身頃と縫い合わせていきます。

 まず印を合わせて躾糸で止めていきますが、様子を見ながら細かめに針を
入れた方が良いです。理由は袖は殆ど全てがカーブなので細かく入れないと
綺麗なラインが出ません。
 躾糸を入れた後に垂れを見て、(下図のように)何か問題があったらこの
時点で解決します。

◼︎よくある事例
袖弐イラスト2
・①、②は袖を付けた位置が合っていないだけですので、袖を外して a' 位置
 を移動させて付け直せば
解決します。
・③は山が高過ぎる(とんがり過ぎている)ので、山を削って付け直せば大丈
 夫です。
・④は少々問題です。山袖に余分な布が付いていれば、山を大きくすれば解決
 しますが、大抵は布が付いていません。その場合どうするか・・・
 下袖のカーブを深くして袖全体を上に上げます。当然ですがb、c の合印
 は合わなくなります。そして袖が上がった分、長さが足りなくなりますので、
 袖口を出して調整します。
*これはどちらかと言えば「あまりやりたくない」事ですので、製図の際に袖山
 の形には充分注意して下さい。

◼︎仮止めが終わった状態
070705047**

 次回は「本縫い」について解説します。

〈つづく〉

416.袖の話 その壱

Posted by KINN Tailor on 24.2020 袖の話   0 comments   0 trackback
 厳しい暑さが続いていますが、皆様お変わりありませんでしょうか・・。
 前回迄は少し夏休み気分で、"懐かしい話"などをして来ましたが、今週から
はまた"技術の話"をしたいと思います。

 私塾の生徒さんを始め、メールなどで質問が多いのが「」についてです。
 私が仕事を習い始めた頃に、ベテランの職人さん達が口を揃えて「袖付け
は難しい
」と言っていた事を思い出します。
 袖は特殊な形をしていますし、狭いアームホールに袖を付ける作業は、慣
れない内は苦労するものです。縫い合わせた時の糸の加減で、着心地や腕の
動き
が全く違ってしまう・・という点でも、"それなりの経験と技術"が必要
という事になります。
 そこで、袖付け綴じる時のポイントを説明したいと思いますが、その前
に…
「採寸も製図も間違えていない筈なのに、どうも袖が上手くいかない」とい
う事はないでしょうか。
 そのような場合、次の点を見直してみるといいかも知れません。

①アームホールのカーブ
アームホール**

 カーブを描く時に、腕を動かし易くしたい…という気持ちがあると、つい
カーブを深く描いてしまう事があります。ところがこれは逆効果で、カーブ
が深くなると袖は動かしにくくなります。
 特に腕は前に動かす率が高いので、後身頃のカーブが深過ぎてしまうと、
腕が前に出にくくなり、背中に横シワも出てしまいますので注意しましょう。

②袖のカーブ
袖**

 山袖と下袖でも、フリーハンドで描くカーブがあります。
 よくあるのが、山袖の前の張り出しが足りない、または下袖のカーブが深
過ぎる
ケースです。
 仕上がった袖を見ると、山が丸く見えるかも知れませんが、それはユキ綿
やパッドが入っているからで、腕の骨は肩より前に出ている分、張り出し
必要になる訳です。袖山の形をもう一度チェックしてみましょう。
   
 出来上がったジャケットの画像が送られてきて、質問される事もあります。
 写真を拝見すると「この服は袖山の高さが足りていない」と思う事がよく
あります。
 もし肩の縫い目が波を打ったようになったり、肩に問題がないのにツキが
出てしまう
場合は、袖山の高さが足りないのかも知れません。張り出しでは
なく、高さそのものが足りないのです。
 お客様が変わっても同じトラブルが出るような場合は、製図の描き方の見
直してみるのも一つの解決策だと思います。

 次回は、「袖付け」についてお話しします。

〈つづく〉
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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