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#286.苦労した話 その四 ~体形2~

Posted by KINN Tailor on 04.2016 体形の話   0 comments   0 trackback
 今から 50年位前になるでしょうか。父がまだ元気に仕事をしていた頃の話
です。

 新規のお客様をお迎えする事になったのですが、その方は事前に「私は少
々難しい体形
ですから、宜しくお願いします」と仰っていました。
 店に入っていらっしゃる様子を説明しますと・・・大袈裟ではなく、"お腹
から先に入っていらした
"…という印象でした。今迄にもお腹が出ている方は
沢山いらっしゃいましたが、いざ採寸してみると、ご本人が仰っていた通り
一寸特殊な体形でした。

 一般的に肥満体超肥満体と言われるのは下図のような数字になります。

苦労4 イラスト1**

 このお客様の数字は…B127cmW145cmH137cm でした。胴周りが
一番大きい(Hよりも大きい)上に、横幅が狭く前に突き出したようなお腹
をしていましたので、確かに"難しい体形"なのがわかると思います。
 最初は父が採寸をしていましたが、私に「じゃあ、少し細かい所を計っと
いてよ」と言いましたので、(前回ブログでお話しした参考寸法のように)
普通は計らない箇所にメジャーを当てることにしました。この頃は父が私に
仕事を任せ始めていましたので、ある程度父が見た後に私が細部を確認する
ようにしていました。
 この方の場合は、お腹周りの寸法をもっと細かく採らなくてはならないの
ですが、お腹には骨がないので基準にするポイントを決めるのがとて難しい
のです。そこで少し広めのベルトをお客様の胸周りとお腹周りに付けさせて
頂き、ベルトの上に目印を付けてそれをポイントにして計る事にしました。
苦労4 イラスト2**
 胸のベルトは腕付けの前、お腹のベルトは腕付けの真下に印を付け、それ
ぞれの印からお腹の中心迄
と、その中心から斜めにもう一方の印迄を計りま
した。
 (a)なぜ斜めに計ったかというと…これを計る事によってどこが膨らん
でいるかがわかる
ようになるからです。
 次にベルトは使わずにお尻の一番張っている所を横軸として、同じように
中心迄と斜めを計りました。これは・・・
 (b)お腹が出ている人のジャケットは、一番出っ張っている所から下が
前に出てしまいがち
ですから、それを防ぐために計った訳です。

 製図に活かすと、このようになります。
苦労4 イラスト3**

 この製図で一番大変だったのは、お腹の出っ張りよりも、その下の引っ込
んでいる所の角度を決める
事でした。何度かやり直しをしてどうにか製図を
する事ができたのですが、裁断でも一苦労ありました。
 このお客様は生地を持ち込まれていたのですが、3着分(9m)お持ちにな
「これで2着作って下さい」とのご依頼でした。裁断は普通生地幅150cm
を二つ折り
にして裁ちますが、この方の場合は幅が足りないので、150cm幅
のまま 2枚重ねて裁断
しなければなりませんでした。
 更に私の使っていた裁断台は幅90cm長さ180cmとごく一般的な物でした
ので、裁断台の周りをぐるぐる回りながら裁断する事になりました。比較的
体格の良い方で、生地を広げて裁つ事はありますが、台の周りをぐるぐる
・・というのはこれが最初で、それ以来行っていません。
 お客様の服は 2度程仮縫いを行った後に納める事ができました。その後も
追加でご注文も頂きましたので、ご満足頂けていたようです。
 この頃は新しい裁断法を色々試していた時期でもあったのですが、この時
のお腹の計り方がヒントになり、数年後に「斜辺裁断」を使うようになった
のです。

#284.苦労した話 その弐 ~体形~

Posted by KINN Tailor on 20.2016 体形の話   0 comments   0 trackback
 少し前の事になりますが…あるご婦人のパンツをお作りした時、その方が
いわゆる日本人の標準体形とはかなり違っていたため、大変苦労した覚えが
あります。
 その方はある国の外交官婦人でした。ご主人は来日された当初からご縁が
あり洋服をお作りしていましたが、ある時「私の家内の服も作って下さい」
と仰いまして、お目に掛かる事になりました。

 第一印象はかなり背が高くスラッとした綺麗な体形の方…というものでし
たが、採寸をさせて頂くと、私の頭の中にあった一般的な寸法比例とあまり
にも差があったので驚きました。
 婦人物の場合は、W寸(ウエスト寸法)とH寸(ヒップ寸法)の差は18~
20cm位
です。ご承知の通り差が大きい程グラマラスな訳ですが、この方の
場合は何と差が30cm以上あったのです。正面から見た時には腰のくびれは
さほど目立った印象ではなかったのですが、横から見るとヒップがとても
高い位置から張っていました。
 これは正に人種的な差なのだ! と痛感させられ、今まで全く裁断をした
経験のない数値でしたので少々不安でしたが、結局このご依頼を受ける事に
しました。

 デザインはごく普通のストレートのパンツで、生地はグレーのフランネル
でした。「これは大変な事になった」と、その晩早速製図にかかりましたが、
普通の製図法の比例には収まらないので製図法そのものを変えないと駄目
・・・と判断しました。
 まず一番の問題は、前身頃に比べて後身頃をどの位深く作ればいいのか…
という事でした。図を使って説明します。
パンツ製図**
 普通 a.の寸法は、H寸-W寸÷4で出します。a.を拠点として後身頃を描いて
いきますが、普通は大体 a.=4cmの所が、この方の場合は7cm以上になって
しまう訳です。果たしてそんなにしていいものか悩みましたが、答えはノー
でした。
 まず 7cm以上にしてしまうと、あまりにも後身頃が倒れ過ぎてしまうので、
上手くないと思い、5cmで描いてみました。これではどうも足りない・・・
という事で6cmにしました。このやり方だとどれが丁度いいのかハッキリ決
められなくなりそうでしたが、採寸の時に普段計らない箇所の数字を採って
おいたのが役に立ちました。
 それは腰の一番くびれている所からヒップの一番張っている所迄の長さを
横から見て直線に計った数字
です。採寸をした時は、履き上がりがどの位か
を知りたかったから計っただけなのですが、この数字が製図b.になるので、
それを使ってa.の見当を付ける事ができたのです。
 結果的には6.5cmとなり、私が覚えていたお客様の体形とイメージが一致
しましたので、これで良しとしました。
 後はウエストがかなり細い方でしたからダーツを多めに取る事になるので、
いつもよりもダーツを長めに取り、ウエストからヒップのラインがスムーズ
になるようにしました。

 仕上がったパンツはとても綺麗で、お客様も大変喜んで下さいましたので、
苦労した甲斐がありました。
 この時の製図で、腰からヒップまでの長さ(b)を計っておいた事がとても
役立ちましたのでその後も実際に製図に使わない寸法 =「参考寸法」とでも
言うのでしょうか・・・それを沢山採っておくようになりました。
 次回はそのお話をしたいと思います。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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