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#256. 勲章の話 その四

Posted by KINN Tailor on 23.2015 勲章の話   0 comments   0 trackback
 勲章について、最後に略綬の話をしたいと思います。

 勲章は原則として燕尾服に着用する物ですので、燕尾服を着ない時は略綬
を付けます。
 例えば、野外のパーティなどにモーニングで出席する場合は勲章ではなく、
ラペルのホールに略綬を付ける訳です。
 略綬は勲章と同じ色の綬(生地)をたたんで、直径1.5センチ位の丸型の花
を作り、それを台に載せた物です(台には四角も丸もある)。台の裏側には
ラペルに通す金具が付いていますので、それをラペルのホールに通せば良く、
特別な細工は入りません。
略綬**
 昔、こんな事がありました。
 ある日、このブログに時々登場するN氏が店にお越しになり「実は今度、
ちょっとした会があってね。“勲章のある方はどうぞ”と言われているのだけ
れど、僕は背広で出席しようと思っているから略綬を付けるんだけど・・・
実は貰った勲章の略綬を無くしてしまってね。略綬を作ってくれる人を誰か
知らないかね?」と仰いました。
 その頃、私の店は港区の芝にありました。近所には色々な細工をする職人
さんが沢山居る所だったので、早速知り合いのネームの刺繍屋さんに相談し
たところ、「あぁ…略綬だったらウチで作れるから、勲章が何だか聞いて来
てよ」と言われました。
 これは好都合だと思って、N氏に伺ったところ「レジオン ド ヌール
(légion d'honneur)
だよ」との事でしたので、それを刺繍屋さんに伝えて
作ってもらいました。
 以前にも書きましたが…当時はお客様がどちらかへお出掛になる際には、
私共の店にお見えになって、着替えて行かれる事がよくありました。
 特にN氏はそうされる事が多かったのですが、当日はいつもより少々早い
時間にお見えになって、でき上がった略綬を満足気に眺めらてから、フラワ
ーホールに付けて
お出掛けになられました。とても喜んで下さって、略綬を
作ってくれる職人さんが近くに居て本当に良かったと思いました。

 洋服屋をやっていますと、自分には直接関係のない華やかな会や、おめで
たい席に行かれる時のお手伝いをさせて頂く事が多々あります。
 その方達から色々なお話を伺うだけでも、気持が高揚すると云うか・・・
とても楽しい気分にさせて頂けるので、これも役得の一つだと思っています。


#255.勲章の話 その参

Posted by KINN Tailor on 16.2015 勲章の話   0 comments   0 trackback
 今回は、小綬章双光章単光章についてお話したいと思います。

 この三種は逆三角形に折りたたんだ短い綬(小綬)に勲章が下がった形
しています。勲章は小受章と双光章が同じ大きさで、単光章が一回り小さく、
それぞれ宝石などの素材が異なっています。
 綬の大きさは三種共同じですが、小受章には綬と同じ素材で作られた丸い
花形の飾り
が付いています。
 いずれも左胸に着用しますので(ご婦人も同様)、胸ポケットのすぐ下に
ループを付けておき、それに綬の裏側に付いている金具を引掛けます。

ループ**

 では勲章を二種以上持っている方がそれを着用する場合はどうするか・・・
と言いますと、後から授与された勲章を前に授与された物よりも上位に着用
する事になっています。"上位"とは、身体の中心に近い方を意味します。
 例えば最初に瑞宝章、次に旭日章を授与された場合は旭日章を上位に付け
ます。この場合、同じ形の勲章であれば並べて付けられますので、どちらか
を上位とする事ができますが、一方が左胸に付けるタイプで、もう一つが首
から下げるタイプの場合、形状からして首から下げる方が身体の中心に近く
なってしまうのでは?…と思われがちです。
 それもその筈で、このタイプは中綬章、重光章、大綬章と元々上位の勲章
ですので、複数回なら後から授与されるケースが殆どな訳です。つまり自然
と首から下げる方が上位になるようになっているのです。

 では大綬章を二つ授与された場合はどうなるのか…と言いますと、大綬を
二つ掛ける訳にはいきませんので、後から授与された方を掛け副章を左胸に
二つ並べて
付けます。副章を二つ付ける場合はループが図のようになります。

勲章二つ**

 副章を二つ付けますとかなりの重量になりますから、洋服を作る立場から
申し上げますと少々難しい細工が必要になります。例えば燕尾服は前に釦が
ないため、片側だけ重さがかかると、そちら側だけが下がってしまうのです。
 それを防ぐための細工としては・・・燕尾服の右側のアームホールを小さ
く作る
のです! そうすると勲章の重さで左側が下がる事を是正できます。

 この"二つ勲章を付ける"という事は、国際的な行事ではよく行われる事で、
例えばどちらかの国から国王陛下がお見えになったとすれば、その国の勲章
と日本の勲章の両方を付ける事になります。
 今はあまり行われなくなりましたが、昔は宮中で晩餐があると、その翌日
リターンバンケットとしてお客様の国主催の晩餐がありました。
 そのような時天皇陛下は、最初の日は外国の勲章を上位に、日本の勲章と
共に付けて出席され、翌日は日本の勲章を上位に(リターンバンケットでは
客人となるため)付け直して出席されていました。

 今は色々な意味から簡略化される事が多いようですが、やはり勲章がある
行事は華やか格式の高い印象を受けます。
 ですから勲章をお受けになった方は、お祝いの席などでは是非勲章を付け
られる事をお勧め致します。

#254.勲章の話 その弐

Posted by KINN Tailor on 09.2015 勲章の話   0 comments   0 trackback
 前回、大綬の掛け方について説明しましたが、少々補足をさせて頂きます。

 大綬は付ける方の体格に合わせて調整する必要があります。はかなりの
長さがありますので、そのまま肩から掛けると本章の位置が下過ぎる場合が
多々あります。ですから綬の長さを調整し、背中で縫い合わせておくのです
が、綬はかなりしっかりと織られた絹なので、硬さもあり縫うのに力が必要
です。陛下を始め、皇族様方は綬をちょうど良い長さで切ってご使用になら
れます。ご着用される時は、ベストの前と後ろに釦を2個ずつ付けてループ
を掛けて固定
されます。この方法ですと綬が動かず安定します。
 ただ民間の方は綬を切ってしまうのは勿体ない・・・と仰る方が多いよう
で、前にご説明したように背中で調整する方法を取られるようです。
大綬 一般**
大綬 皇族**
 尚、前回綬の掛け方を説明する際に「日本の場合は英国に習い、綬を右脇
で一度止めてから斜めに掛ける
ようにしている」としましたが、私にご依頼
頂いた民間の方の場合であって、そうではない場合はどうされているか判り
ません。右脇で一度止めなくてはならない…と云う決まりはありませんし、
女性の場合は止めずに右肩から斜めに掛けて着用します。

 さて、菊花章桐花章は大綬章だけですが(菊花章の頸飾は、菊花章を受
けた方が後から更に何らかの功績を上げられた場合などに渡される)、旭日
瑞宝章は6段階あります。その種類をイラストで説明させて頂きます。

勲章種類**

 大綬章は本章を左腰の所に来るように掛け、副章を左胸に付けると説明し
ましたが、重光章は本章を右胸に付けて副章を首から掛けます。この場合の
細工は本章用に右胸にループを付ける事です。
 次の中綬章は本章だけで副章はなく、綬を首から掛けますので細工は特に
いりません。男性は綬を掛けてから上着を着用し、女性は上着の上から綬を
掛けます。

 次回は小綬章等の付け方と、2つ以上勲章を持っている場合について説明
したいと思います。

#253.勲章の話 その壱

Posted by KINN Tailor on 02.2015 勲章の話   0 comments   0 trackback
 来たる11月の5日には、皇居で勲章の親授式があります。
 今年の大綬章に選ばれた方々に、天皇陛下が直接勲章をお渡しする式典で
すから、受勲者にとっては大変名誉な日です。

 日本の勲章には、大勲位菊花章(頸飾と大綬章)、桐花大綬章旭日章
瑞宝章文化勲章とがあります。この他に外国人女性に儀礼叙勲等の特別な
場合に使われる宝冠章があります。
 勲章を着用するには服に付けるための細工が必要になりますが、私は皇族
様方のお仕事を長くさせて頂いている関係上、その細工も幾度となくさせて
頂いて来ました。
 その経験から今後数回に渡り、勲章別の細工の仕方についてお話したいと
思います。1回目は、大綬章についてです。

 大綬章には本章副章があります。本章は幅10cmの長いリボン(大綬と
云う)を右肩に掛けて、その結び目の花形のリボンが左腰の前に来るように
します。その花形のリボンの所にある金具に本章(副章よりもやや小さめ)
を掛けます。
 本章の掛け方には2種類あって、英国だけが綬が低い位置・・・右脇の下
で一度止めて、そこから斜めに掛かるようにします(下図参照)。
 日本の勲章は英国流なので、綬に細工をしなければなりません。ちょうど
右脇の所で綬をたたみ、糸で固定します。そしてベストのアームホールの下
の所へ綬を支えるボタンを付けておき、そこに掛かるように綬にループを付
けて
ボタンに掛けます。

綬のかけかた**

 副章はジャケットの左胸のポケットの少し下の所に掛けます。
 副章の裏側には図のようにピンが付いています。そのピンに合わせて4本
のループ
をポケットの下のちょうど良さそうな位置に付けるのですが、勲章
相応の重さがありますので、穴糸を使ってしっかりとしたループを作らな
ければなりません。

副章のかけかた**

 大綬章は燕尾服に着用しますが、以前は勲章をしない時でも燕尾服を使用
する事が多かったため、勲章を外した後はループを取ってしまい、次に勲章
を付ける際に改めてループを付けていました。ですから、「ループを付ける
ため」
だけに燕尾服をお預かりした事が多々ありました。
 最近は式典自体が減り、様式も簡易になったため、勲章を付けずに燕尾服
を着る機会があまりない…との事で、この「ループを付けるため」の作業は
少なくなりました。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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