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#290.柄合わせ

Posted by KINN Tailor on 08.2016 柄合わせの話   0 comments   0 trackback
 前回の「#289-Extra.お客様の服」で、いかにも夏を思わせるジャケットを
紹介しました。
 紺のメッシュ地に白い大きな格子柄の生地でしたが、この格子柄を合わせ
るのに、いつもと違う特殊な裁断をしましたので、今回はそれを説明したい
と思います。

 私はジャケットを裁断する時に、ほぼ(99%)腹グセを取ります。ごく細
い体形の方でデザインによっては取らない事がある程度です。
 腹グセを取ると、前の釦から下の垂れ具合がとても綺麗になりますし、横
から見た姿も美しくなります。ところが、今回の生地のようにかなり大きな
格子で胸ポケットも両脇のポケットもパッチ
の場合、胸ダーツと腹グセを取
ると、柄が合わなくなってしまいます。

イラスト1**

 つまりパッチポケットの場合、ポケットの付く所にはダーツや腹グセを取
らないようにしなければならないのです。そのため今回は普段と違う裁断法
にする事にしました。
 私のDVD「婦人服を綺麗に作るコツ」でも紹介していますが、ダーツの位
置を移動させて同じ効果を出す
…という裁断法です。
 婦人服の場合は、バストやウエストのくびれのためにダーツは必ず取らな
くてはなりませんが、デザイン的にダーツの位置を移動させる事があります。
 紳士服の場合ですと、燕尾服やモーニングコートなどはダーツを沢山取る
ものですが、どこに取るかは裁断する人によって様々で、そのテーラーの個
性とも言えます。上のイラストを見て頂くと、私の胸ダーツの取り方は普通
とは違っている事がおわかりになると思います。
 今回は下のイラストのように、胸ダーツは一般的によく取られる位置にし
て、腹グセをアームホールの所へ移動させて取りました。

イラスト2**

 腹グセをアームホールに移動させて何故同じ効果が出るのか・・・ですが、
ごく簡単に説明しますと、腹グセの最大の目的はジャケットの脇を上げる
です。ですからアームホールに腹グセの代わりのダーツを取れば、同じよう
に脇が上がります。
 アームホールの所は上から袖がかぶさって来ますので、大きなダーツを取
っても見えにくい…という利点もあります。
 胸ダーツを取ると、どうしても胸ポケットの下の所が合わなくなるもので
すが、この位でしたらご勘弁頂けるのではないでしょうか・・・・。

実際の裁断**
実際の裁断

#163. 柄の出し方

Posted by KINN Tailor on 20.2014 柄合わせの話   0 comments   0 trackback
 先日、とても大柄なグレンチェックの裁断をしました。
 格子の大きさが8cm×10cm位あり、更に千鳥格子が組み合わさっている
柄です。
 お客様のご要望が「柄を斜めに合わせる」事でしたので「これは結構骨が
折れるな・・・」と思いながら取り掛かりました。実は普通の格子は横より
も縦の方が長いので(タータンチェックは別)、斜めに柄合わせをするとな
ると、縦横にズレが出てしまうのです。
 普段はチョークを引いた後、布地2枚一緒に鋏を入れますが、このような
場合はチョークを入れた後、上の一枚だけ布を裁ち、下の布の格子が上の布
に合うように微妙にずらしながらもう一枚を裁つ必要があるのです。
 躾を打つ時も2枚の布の格子が合う様に目を凝らします。ただ布地は元々
柔らかい物ですから、定規で線を引いた時のように縦横がぴったり同じに織
れている訳ではありません。ですから極端にやかましく言えば、完全に合っ
ていないのかも知れませんが、縫い合わせた所を開いてみて、柄がすんなり
つながって見えれば良し…としないと目が回りそうになります。
 格子合わせは通常、横の柄を合わせる事のが多いのですが、斜めとなると
縦横両方の柄を気にしなければなりませんので骨が折れる訳です。

格子柄写真ペンあり**

 さて柄合わせの話が出たところで一寸普段は気が付かない話をしましょう。
 それは斜め…つまりダイアゴナルの場合です。普通ダイアゴナルの柄は図a.
のように右から左へ、前身頃全体で柄が流れるようにします。

kousi図a**

 これで別に違和感はないのですが、実はこれは柄が左右対称ではない…と
いう事に気づかれましたでしょうか?
 裁断の時は布を縦半分に折って、型紙を載せて2枚の布を一緒に裁つ事に
よって左右対称になります。でもこれは型紙が左右対称なだけで、布は一枚
の物を半分に折っている訳ですから、ダイアゴナルの柄は対称でないのです。

kousi図b**

 柄を対称にするためには、1枚ずつ縦と横に裁断をしなければなりません。
そうすると柄は図c.になります。

kousi図c**


 お好みによりますが、この柄は見慣れていない事もあり、ちょっと個性的
ですね。
 つまり柄合わせは余程何かの狙いがない限り、見てすんなり見えるように
合わせる方が無難
…という事なのだと思います。

#129.柄合わせ 格子 〜最終話〜

Posted by KINN Tailor on 20.2013 柄合わせの話   0 comments   0 trackback
 格子柄を裁断する上で、難しい要素のあるのがです。

 人間の腕の下がり具合を見てみると、手首の位置は肩の付け根よりも少し
前に行っています。ですから袖の製図をすると、肩よりも袖口が前に出てい
る形になります。さて、この型紙を生地にどう置くか…が問題です。
格子柄袖a**
 まず、図のように袖がジャケットに付く角度を考えて柄を合わせないと横
の柄が後下がりになってしまいます。
 そしてもう一つ問題なのが、袖付けの所で横の柄を合わせると、肘から下
の方(手首に近い所が一番分かりやすい)の横柄が身頃と合わなくなって来
るのです。
格子柄b**
 これは、身頃にダーツをとったりして膨らみを持たせるので横柄が真直ぐ
に通らなくなります。袖は真直ぐに落ちていますので、どうしても横柄は合
いません。
 近頃はこれを嫌って、袖付けの所で横の柄をずらして袖付けをしている製
品も出て来ています。
 これも好みですからどちらが良い悪いという事ではありませんが、着用し
た後に袖は一番動きが出る所なので、横柄が全てきっちり合わなくてもいい
のではないかな…と私は思っています。

 そう云えば、お客様から面白いご要望を頂いたのを思い出しました。
 その方は絵がとてもお上手で、ご自分でデザイン画を描いて送って下さい
ました。
格子柄イラストC**
 普通ラペルの端には縦の地の目を通しますが、この方は斜めに地の目を通
という物でした。イタリアのカラチェニのお弟子さんが作った服の写真も
同封されていましたが、これは縞物でダブルのかなりカーブの強いラペルに
斜めの縞柄が出ていました。それをグレンチェックで作ったのですが、仕上
がってみると襟のカーブが強かった為か、特に襟の柄が強調される訳でもなく、
自然な感じでちょっと拘りのあるジャケットに仕上がりました。

 さて、最後にパンツの話です。
 パンツで問題になるのは、横の柄合わせです。
 私はパンツもくせ取りをしますので、図のように柄も変化します。ですか
ら、実際に前身頃と後身頃を縫い合わせると、膝から下の方はある程度横柄
が合いますが、上の方は全く合わない訳です。
 最初の頃は、お客様に「履き心地柄合わせとどちらを優先されますか?」
というような事を聞いていましたが、くせ取りをしないと履き心地は勿論で
すが、全体のラインが綺麗になりませんし、私の服ではなくなってしまいま
すので、今は特にお話をしていません。
 ただこれもお好みというのがありますので、難しい問題ではあります。
 今まで特に「柄が合っていないから困る」とお客様に言われた事はないの
ですが、もしかすると、外国の生地見本でたまに見かけるような非常に大き
くてハッキリした柄のパンツを作られる方があまりいらっしゃらないからな
のかも知れません。
パンツ柄合わせd**

#128.柄合わせ 格子 〜ジャケット編〜

Posted by KINN Tailor on 13.2013 柄合わせの話   0 comments   0 trackback
 今回は縞に続いて、格子の柄合わせについてお話したいと思います。

 格子はご存知のように、縦と横に線が入っているわけですから、縞よりも
やっかいな事になります。では、ジャケットの場合にどの箇所で柄を合わせ
るかを考えてみましょう。
① 前身頃の左右、後身頃の背の縫い目
② 脇の縫い目
③ 肩の縫い目
④ 襟の後側と背中
⑤ 袖と身頃
⑥ 前身頃と見返し
…考えると結構あるものです。これらの箇所の柄をどこまでどう合わせるか
というのは、その作り手の”拘り”でもあります。
 格子柄の生地を裁つ時には、この柄合わせがありますから普通よりも生地
を1割程度(柄の大きさにもよる)多く購入する必要があります。
 私のように長年裁断をしていると、自然と柄合わせができるのですが、塾
の生徒さんなどはそうはいかないようです。特に胸ポケットの所は斜めにな
っていますので、仕上がったポケットの口と身頃の柄を合わせるのに苦労す
るようで、生地をジッと見つめて考え込んでしまう事もあります。
 さて生地を裁断する時、私共のやり方には特徴がありまして、格子柄だと
わかりやすいので、ちょっとお話ししたいと思います。
 生地の裁断をする時に、私たちが大切にしている事の一つに「地の目の通
し方」
というのがあります。生地は緯…つまり縦の糸と、経…横の糸との組
み合わせでできていますので、縦地の目、横地の目の関係がとても大切にな
ります。
「縞の柄合わせ」で説明したように、一般的にはジャケットの釦の所に縦地
の目を通しますが、私は襟の付け根から通します。こうすると当然、横の地
の目の位置も変わってきます。
 格子図1*
 普通ジャケットの型紙は、前下がり、つまり前身の裾の前端が少し長めに
できていますので、縦の地の目を通すと、通常はチョークで描いた線が図の
ように前下がりになります。私の縦の地の目の取り方ですと、横の地の目が
裾線と平行
になります。
 では私の服には前下がりがないのか…という事になりますが、脇ポケット
を利用して腹ぐせ(横のダーツ)を取りますので、結果的には前下がりと同
じ事になる訳です。
 面白いのは…できた服の見た目と、それを着た時の見た目の違いなのです。
  格子図2*
 普通の服のできた状態は、前下がりの分、前に柄が多く出て横が少なくな
ります。
 これを着ると(目の錯覚なのでしょうが)縦の線は中心に寄って見えて、
横の線は後下がりに見えてしまうのです。
 これは人間の一般的な体型がお腹が一番出ていて、その下がない…という
事が影響しているようです。
 私の地の目の通し方や腹ぐせは父から受け継いだ事なのですが、どうして
こうする事になったのはわからないのです。
 綺麗に見える服を研究していたら、縦の地の目の位置は襟の付け根からに
なり、服を立体的にするためには腹ぐせが必要になり、結果的に横の地の目
も通す
事ができた…という事なのかも知れません。
 職人同士というのは、上手くいっている事については、あまり言及したり
しないもので一体何が一番最初だったかが不明で、その辺りをお話しできな
いのが残念ですが、いずれにせよ、この方法で綺麗な格子柄の服に仕上げる
事ができるのです。

#126.柄合わせ 縞 〜パンツ編〜

Posted by KINN Tailor on 29.2013 柄合わせの話   3 comments   0 trackback
 今回はパンツの縞の柄合わせについてお話しましょう。
 パンツの場合、前身頃は中心線に地の目を通しますから、縞は真直ぐに通
ります。しかし後身頃は後の中心(お尻の所)をバイヤスにするために、縞
は真直ぐにはなりません。
 お尻の縫い目は左右対称にしますが、前身と後身の横の縫い目の柄という
のはどうしてもずれてしまいます。更に普通のパンツは裾に行くにつれて細
くなりますから、横から見た柄というのは合わないものなのです。
 私の場合は、後身頃の中心線に縞を持って来る所を図のように少しずらし
ます。これで縞が合う事はありませんが、見た目ができるだけ良くなるよう
な工夫です。
イラスト1番目**
 またジャケットと同様にパンツも”くせ取り”をしますが、くせ取りをする
と縞が曲がって見えるのではないか?…と思われる方もいらっしゃると思い
ます。
 確かに縞は曲がりますが、そもそもくせ取りは、身体の曲がった線に合わ
せて取るものですので、実際にパンツを履いてみると、くせ取りをした線が
身体にフィットする
ため真直ぐに見え、横の縫い目の縞の切れる具合も変わ
って来ます。
 文章ですとややこしくなりますね。図にするとこんな感じに見えます。
イラスト2番目**
 パンツの横の縫い目の柄合わせをとても熱心にする方もいらっしゃるよう
ですが、それが第一になってしまってはいけませんし、どこもかしこも柄が
ぴったり合っているのも、逆に妙な感じがするのではないでしょうか。

 随分前になりますが、ある服飾評論家の方がイタリアから持って帰られた
パンツを服飾誌に紹介したところ、ちょっとした騒ぎに発展した事がありま
す。そのパンツはお尻の縫い目の所に真直ぐに縞が通っていたのです。
 反対派の大部分の意見は「お尻の縫い目をバイヤスに裁たなくては伸びな
いからダメだ」というもの。賛成派の意見としては「バイヤスにしなくても
決して履きにくい訳ではない。日本の技術者はこんなパンツを作れないから
文句を言っているだけだ」というものでした。
 一時は結構な騒ぎでしたが、いつの間にか収まったようで、どちらがどう
なったかは良く知りませんが、私がこの時思ったのは、このイタリアの技術
者の狙いは決してお尻の縫い目を真直ぐにしようとしたのではなく、パンツ
の横の縫い目へ縞を真直ぐに通そうとした
、その結果としてそうなったので
はないか…という事です。
 事実、イギリスの裁断法では古くからそのやり方があり、それが紹介され
ている本自体かなり古い時代の物なので、知っている人があまりいなかった
という事で、あのような騒ぎになったような気がします。
 いずれにせよイタリアでは、”柄合わせ”だけであんな騒ぎになる事はない
のではないかなぁ・・・と思う訳です。
イラスト3番目の**
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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