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#263.仕事の仕方 その参 切り躾

Posted by KINN Tailor on 11.2016 縫製の話   0 comments   0 trackback
 明けまして、おめでとうございます。

 関東地方が年末からずっと晴天に恵まれたお陰で、年末の処理やら大掃除
など…比較的楽に進める事ができました。年明けも温かかったせいか、初詣
では例年より長く並んだのですが、さほど時間を気にする事もなく…むしろ
のんびりした感じでした。皆様はどのようにお過ごしでしたでしょうか?
 今年初のブログは昨年末に引き続き、「仕事の仕方」についてお話したい
と思います。

 私が作っている服はいわゆるオーダーメイド・・・一般的に"フルオーダー"
と呼ばれている物です。この仕事はお客様のご要望をできるだけ反映させて
作るもので、仮縫いが大変重要な作業になります。そのためには切躾(きり
びつけ)
をきちんと打たなければなりません。
 切躾の方法は、糸が抜けてしまうのを防ぐ意味で、原則としてシロモを2本
取りにします(生地がとても厚い場合などは4本取りにします)。チョークの
線に沿って糸を入れて行き、印と印になる間の糸を切ります。
 次に生地の間に鋏を入れて糸を切ります。これがなかなか緊張する局面で、
生地の間を開き過ぎると糸が抜けてしまいますし、かと言って生地をあまり
開かないと生地を切ってしまう危険性があります。
 無事に間の糸を切り終えたら、余分な糸を切り揃えます。最後にアイロン
をかけて糸の切り口を押さえ
、糸を抜け難くしてでき上がりです。
切り躾**

 切躾は慣れる迄少々時間もかかりますし、チョーク線の上全てに切躾を打
っていく訳ですから、初心者は大変苦労すると思います。今、私の塾に来て
いる生徒さん達を見ていると、それぞれ自己流のやり方があるようで、実に
興味深く見ています。
 例えば…非常に細かく糸を入れる人が居て、2枚の布を切り離すのが大変
なんじゃないかな?…と思ったり、とても長く糸を入れる人も居て、用心深
いけど後で糸を切り揃えるのが面倒なんじゃないかな?と思ったりしながら
見ています。
 私も若い頃に友人達と行った勉強会で、切躾を楽にする方法について色々
と研究したものです。ある時、一人の友人が少し変わった切躾の仕方を考え
出したという事で、私にも見せてくれました。それはシロモを1本取りで大き
く返し縫いをする…というものでした。一般的な方法と同じように、印の間
の糸を切り、布の間に鋏を入れて糸を切るのですが、糸がとても長く残るの
と、一本取りなので抜け易く、これでは切躾の役目は果たせないのではない
か?…という疑問が残りました。その後これといった画期的で決定的な方法
は見つからず、結局は慣れるしかない・・・という結論に到ったのです。
 今となっては、切躾は裁断をした後の外す事のできない大切な工程の一つ
で、大変だという感覚は全くありませんし、新しい方法を研究する気もあり
ません。ただ、生地を切ってしまう恐れがあるので長く糸を入れる人、チョ
ークに沿ってうんと細かく印を付けたい人、何故か凄く長く糸を残しておく
人等々・・その人の経験や性格が表れ易い作業の一つのようです。

#261.仕事の仕方 その弐~無駄針~

Posted by KINN Tailor on 28.2015 縫製の話   0 comments   0 trackback
 前回「玉止め」の話をしましたが、私は縫い仕事をする際に必ず玉止めを
する訳ではなく「無駄針」をする事もあります。
 無駄針というのは、図のように何針か余分に糸を重ねて入れる事ですが、
きちんと入れれば糸が抜けてしまう事はありません。

無駄針 躾**

 玉止めでなく無駄針にする時というのは、仮に止めておく時や玉のアタリ
が出ない
ようにしたい時です。
 まず仮に止めておく時・・・主に仮縫いの時ですが、玉止めはせず縫い始
めと縫い終わりに無駄
針をします。
 仮縫いの場合は必ずそれを解く訳ですから、お客様にフィッティングして
頂く時にきちんと止まっていてくれれば玉止めの必要はありません。仮縫い
にはシロモを使いますが、このシロモはなかなか強い糸なので下手に玉止め
をすると、(前回書いたように)生地を傷めてしまう可能性がありますから、
私は無駄針にしているのです。

 今迄色々な所で技術指導などしてきましたが、仮縫いの時に玉止めをする
人がとても多い
のには驚きました。「シロモで玉止めをすると、やっかいな
事が起こるよ!」とアドバイスするのですが、どうも無駄針だと心配なのか
…玉止めをするのが習慣になってしまっているのか? 玉止めし続ける人の
方が多いようです。
 子供の頃に畳屋さんが来て、畳表の取り替えをしていたことがあります。
面白かったので見ていたら、縫い終わりの所で止めの玉を作らなかったので、
「最後の止めはしないのですか?」と聞いたところ「えぇ、縫い糸が太い事
もありますが、無駄針をいくつか入れるとそれで止まるものなんですよ!」
と教えてくれました。まだ、洋服の勉強はしていませんでしたから「へぇ~
そんな事もあるんだ・・.」と妙に感心したものです。
 その後洋服の勉強を始めてから、この無駄針という言葉が頭の中に残って
いたようで、私の中では「無駄針は使える!」という不確かな自信のような
ものがありました。実際に仕事で使ってみますと具合が良く、無駄針は私に
とってとても有効な処理の仕方となりました。ですから仮縫いは勿論、表に
響かせたくない場合・・・具体的には「ハ刺し」ですとか、ポケットを芯に
固定する時
の止めなどは玉止めはしません。
「ハ刺し」は、それこそ職人によってやり方が様々です。職人の拘りが出る
作業かも知れません。私は手縫い糸でハ刺しをしますが、ミシン糸でする人
も大勢います。
 以前、ミシン糸で入れる人に「ミシン糸は手縫い糸よりも細いけど大丈夫
ですか?」と聞いたところ「沢山糸を刺しますから、細い糸でも大丈夫です。
それに糸のアタリが出るのが嫌なんです」という返事でした。ですが、その
人はハ刺しの縫い終わりには玉止めをしていました。ハ刺しは何本もの糸を
使いますから玉止めも幾つもできる訳なのですが、それがアタルのはいいの
かな?…と、ちょっと疑問に思ったものです。

 面白いもので、職人それぞれの拘りで仕事の仕方は様々ですし、どれが正
しい訳ではありませんが、自分と違う仕事の仕方を聞くと、「なる程・・」
と感心たり「えっ?」と首を捻ってみたり・・・まだまだ自分の知らない事
が沢山あるものだ…と関心します。
 私が玉止めをしない他の例を幾つかご紹介して、本年は終わりにしたいと
思います。

釦つけ**
ループ**

      *   *   *   *   *   *

 今年もブログをお読み頂きまして、誠にありがとうございました。
 皆様、よいお年をお迎え下さい。

#260.仕事の仕方 その壱 〜玉止め〜

Posted by KINN Tailor on 21.2015 縫製の話   0 comments   0 trackback
 洋服屋になろうとして勉強を始めると、まずは「縫う事」を習います。
 私達の頃は専門学校(当時既にありました)へ通うよりも、いきなり洋服
屋に見習いとして入る方が多かったので、その店の職人さんから習う訳です。
 
 大抵の職人さんの場合、あまり手取り足取り教えてくれる訳ではないので、
大体"見よう見真似"で練習をしていく事になりますし、その職人さんやお店
によってやり方は様々ですから、何が正しい…というよりは、そのやり方を
身に付けて行く訳です。
 そうなると、何気なくやっている事が、他の人とは違う・・・という事が
結構あります。結果的には服がキチンと仕上がっていれば良い訳で、細かい
作業は個々のやり方で良いのですが、敢えてその事を取り上げてみたいと思
います。

「縫う事」で結構違うなぁ…と思ったのが「玉止め」です。
 まず針に糸を通した後、糸の端にコブシという玉を作ります。私は人差し
指に糸を1~2回巻きつけて、親指と人差し指でその糸を絡めて玉を作ります。
このやり方以外はない・・・と言うより他のやり方など考えた事もなかった
のですが、私塾の生徒さんの中に別のやり方をする人が居て、一寸びっくり
しました。
 針に糸を通した後に糸を針に巻きつけて、その部分を糸の端までずらして
いく
と玉ができるのですが、私は何度やっても巧くいきません。彼女は学校
で習ったらしいのですが、このやり方をする生徒さんは他にも居るので、今
はこういう方法を教えている所もあるのでしょう。
 私としては、これを覚えるのに時間がかかり過ぎて、最初の一歩が踏み出
せない感じがしてしまうのですが、皆さん器用なものです。
最初の玉どめ私**
         ⬇      ⬇      ⬇
最初の玉どめ生徒**

 また、縫い終わりにも「玉止め」を作ります。
 縫い終わった所に針を当て、糸を巻きつけて糸を抑えて針を引き、玉止め
しますが、これが結構難しく、なかなか縫い終わりの所にピタッと玉ができ
ないのです。
 小学校の頃は工作が大好きでしたし、成績も悪くなかったので不器用な訳
ではないと思うのですが、この"終わりの玉止め"には苦労させられました。
最後の玉とめ**
 そして、この"終わりの玉止め"をした後に、大体の職人さんは玉が表から
見えないように生地の中に入れて糸を切ります。私も最初の内はこのやり方
が良いのだろうと思って、終わりの玉を潜らせていました。ところがある日、
この玉止めで意外な経験をしたのです。
 お直しをしようと糸を解いている時に、生地の中に潜ってしまった玉止め
が上手く取れず、無理に取ろうとすると生地に穴が開きそうになった・・・
という事があったのです。
 これは生地の厚さやどこに玉が潜っているか…によるのですが、縫い始め
の玉は生地の裏側にありますから問題ない訳ですが、最後の玉はそれがどこ
に潜ったかがハッキリとはわかりませんので、こういったことが起きたのだ
と思います。

 私は父から「しっかり縫う事は基本だけれど、上手く解ける…という事も
大切なのだよ」と教わった事があります。
 それ以来私は、最後の玉止めは潜らせずに糸だけ潜らせて終わらせるよう
にしています。玉は表から見えない方が綺麗ですので、どちらが良いという
事ではありませんが、これも其々の「仕事の仕方」という事なのでしょう。

 次回、本年最後は「無駄針」を取り上げようと思います。


#90.手縫いの仕事 その弐

Posted by KINN Tailor on 20.2012 縫製の話   1 comments   0 trackback
 手縫いと機械縫いとの差が一番よくわかるのが襟まわりです。
 襟は洋服の中では割と小さなパーツなのですが、その割には色々な要素が
沢山ある所なのです。
 襟は、カラークロスと芯と上襟(表地)からできていますが、機械作りの
場合は、襟だけを先に仕上げてしまってから身頃に付ける方法が一般的です。
 中には、上襟だけを後から手で付けるというやり方もありますが、これは
高級な仕事という事になっています。
 私共の場合は、ご存知のようにプルダウンをかけますので、長い襟を縮め
ながら付けなければなりません。そして、付けた後にアイロンでかなり力を
入れて伸ばしますので、その箇所はしっかり止まっていてくれなければなら
ないのです。
 ですから、伸ばす箇所はスパイラル状に糸を入れ、更に襟を身頃に細かく
からげて止めていきます。そしてプルダウンをかけた後は上襟を、襟の様子
を見ながらふんわりと止めていく訳です。
 襟を身頃に止める時も上襟を掛ける時も、様子を見ながら…つまり「現場
合わせ」をすることが多く、更に部分的に縮めたりしますし、止め方(縫い
方)も色々なので、結局は手でやってしまった方が具合が良いのです。
 現場合わせといえば、裏地などや細かいまとめの部分も仕上がった物に合
わせていきますので、どうしても手で縫うようになります。
 パンツのベルト裏など、図のようになっていますから、手でチョイチョイ
と形を作ってしまった方が早いですし、裏地にゆとりをもたせるために生地
を反らせて付けていくのですが、そんな芸当ができるのも手縫いだからこそ
なのです。
パンツ腰裏*

 人の手は、本当に素晴らしい物だと思います。
 ちょっと話は変わりますが、工場生産で感心することは、全てのパーツに
型紙があるということです。
 同じサイズの物を作らなければならないですし、それぞれの担当が別々に
仕上げていくので当然と云われればそうなのですが、現場合わせの多い私共
などからすると、とても大変に思えて、つくづく「よくやるなぁ」と思う事
なのです。

#89.手縫いの仕事 その壱

Posted by KINN Tailor on 13.2012 縫製の話   0 comments   0 trackback
 「手縫いの仕事」というと、昨今では「高級品」の象徴のように扱われて
しまいます。確かに手縫いは時間がかかりますが、味のある仕上げには欠か
せない作業なのです。
 実際に仕事をしている立場からすると、どうしても「手縫いで仕上げたい
箇所」
というのがあります。今日は手縫いの特徴や手縫い仕上げたい理由に
ついてお話ししましょう。

 まず、良く手縫いが使われている箇所ですが… ①肩の縫目 ②襟まわり
③袖付け/袖まわり ④パンツの尻の縫目 ⑤裏地のとめやまとめ 等だと
思います。
 ①肩の縫目 ③袖まわり ④パンツの尻などは、身体の中で良く動く場所
だということがわかります。また着心地を考えると、肩、袖については、柔
らかく繋がっていて動きやすく仕上げたい訳です。
 なぜ手縫いは柔らかいのか…と言うと、まずミシンより目が粗くなります。
目が粗くなるといっても図のように糸が重なるような刺し方をしますので、
口が開くようなことはありません。
 またこの縫い方ですと、縫目の長さよりも長い糸を入れておけるので、
同士が独立して動ける
のです。
 更に最大の特徴と言えるのが…ミシンは上糸と下糸の2本の糸で縫っていき
ますが、手縫いは1本の糸で縫っていきますので、縫目が少し伸びたり縮んだ
りできるのです。この "縫目が動く"という事が、動きやすい服にとってとても
大切なことなのです。
手縫い図*

 また、縫製をされている方はおわかりになると思いますが、袖を付けた後の
「とじ」という作業が大変重要です。
 これは、袖まわりの形を出すために裏側から身頃と袖とを一体になるように
とめていく作業なのですが、パッドも一緒にとじる箇所もありますので、厚さ
が一定ではない上に、袖付けよりも余分な糸を入れておく必要がある場所なの
です。ちょっと大袈裟な表現をしますと、わざと緩めて長い糸を入れる感じ
とじていかなければ動きやすい袖には仕上がらないのです。
 何となく「縫う作業」は、しっかり縫われている方が丈夫で良い…と思われ
る方が多いと思うのですが、しっかり=きつくになってしまうと、仕上がりが
硬くなってしまいます。
 ミシンですと"綺麗"には仕上がるのですが、どうしても縫目が硬くなってし
まいます。またミシンをかける時に縫目が多少引っ張られるので、伸びるのを
防ぐためにテープを入れて縫う人もいますが、それですと縫目が厚くなってし
まい、余計に硬くなってしまいます。
 現在は様々なミシンが開発されていて、色々と驚かされることが多いのです
が、今の段階では「柔らかく仕上げる」という事を考えると、手の方が優れて
いる
ようです。

  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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