Loading…

#106.講師時代の話 その弐

Posted by KINN Tailor on 10.2012 講師時代の話   0 comments   0 trackback
 私が講師を務めていた職業訓練校は、昭和28年にできたものです。
 洋服業界もそうですが、古くからあった「徒弟制度」は主に地方からごく
若い内に店へ弟子入りして仕事を習うという形でしたが、第二次大戦の終結
を機会に、これからは広く世界を相手にしていかなければならない…という
考えから、若者に教養を身に付けさせるための施策として職業訓練法が施行
された訳です。
 これより以前から大手の会社等では、社員教育のためのシステムがちゃん
とあって従業員の教育をしていたようですが、私共のように個人の店で弟子
を雇う場合ですと一貫した教育というのが難しく、それもあって洋服協会が
このような訓練校を作ったようです。
 ですから授業内容も専門的な事だけでなく、一般教養の数学、国語、外国
語(主に英語)、社会の授業もありました。こちらは学校の先生にお願いして
授業をしてもらっていました。そして縫製については各お店でできますので
授業にはなく、「製図」を教えるという事で、私にお鉢が回ってきた訳です。
当時、それに付随する「裁断法」のカリキュラムはまだ一般化されていなか
ったという事でしょう
 一般教養の方は教科書が色々ありますから、先生方がどれを使うかを選択
するだけで良かったのですが、製図の方はそう簡単にはいきませんでした。
そもそも一般的な教科書などまだなかったのですから。
 そこで製図方法などを自分で書いて、それを使って授業を行ったのですが、
30名からの生徒全員に理解して貰うためにはもっと大きくて皆が見られるよ
うな教材が必要で、結果的には自分で考えてその都度作って使っていました。
 授業には「PTA」と称して親方達が後の方で見学をしている事が多く、若い
私にはとてもプレッシャーでした。後で何か文句でも言われるのかな?…と
思っていましたが、逆に褒められた教材があります。
 採寸のやり方を説明する時に、大きな人形の画(正面と側面)を描いて使
っていたのですが、その上にトレーシングペーパーに洋服の画を描いて重ね
て見せたところ、「服を着た時のバランスが良くわかります。大変結構です」
と言われ、少々くすぐったい思いをしました。
 この人形が褒められたからではなかったのですが、その後に作ったのが…
ボール紙を切り抜いて身体のパーツみたいなものを作り、これを割りピンで
つなぎ、立っている姿や前かがみ等々、様々ななポーズがとれる人形を作り
ました。
 私は今でもセミナーの時に、人形の画を使って姿勢体型の話をしますが、
元をただせば、この授業が始まりだった訳です。
 因みに教室にいた親方達ですが…どうして見学していたかというと、その
人達は教科書を使って勉強をしたという経験が殆どなかったそうで、後で
弟子から質問された時にちゃんと答えられるように…という事でした。
動く人形**
人形の画

#105.講師時代の話 その壱 円形ゲージ

Posted by KINN Tailor on 03.2012 講師時代の話   0 comments   0 trackback
 私は色々な事情で、24歳の時から職業訓練校の講師をしていました。
 私の担当した授業は製図でしたが、製図は洋服作りの根本ですから責任は
重かったですし、まだ若かったので苦労もあったのですが、その分やり甲斐
ありました。
 このブログではお馴染みの言い回しになってしまいましたが、私は何でも
「自分で作ってみよう」というところがあり、この時もその挑戦心が騒ぎ出
したのか、授業用に色々な物を作って使っていました。
 その一つについてお話ししましょう。

 私が使っている「短寸式」は外国の裁断書を基礎にしていますが、当時と
しては一般的ではなかったため、受講者の方には少々分かりにくいところも
あったようです。
 短寸式は、名前の通り沢山の箇所を採寸する訳ですが、きちんと採寸でき
ないと当然の事ながら上手に製図をすることができなくなってしまいます。
その裁断書の中に、短寸式において重要な箇所の寸法一覧が載っていたので、
実際に採寸した後その一覧表の数字を目安にして製図をしていました。
 但しこの表はとても細かかったために見るのが大変で、うっかり行を間違
えたりすると面倒な事になるので、どうにか良い方法はないかと考え、試行
錯誤して作ったのが「円形ゲージ」なるものです。
 これは2枚の円盤を重ねた物で、下の盤に数字がずらっと書いてあります。
表の盤の外枠にはBREST(胸囲)、内枠はFULL HEIGHT(身長)とあり、
それぞれ穴が空いています。
 盤を回してこの数字を合わせると、BLADE(ブレード)、SCYE DEPTH
(鎌深)、STRAP(前肩)、OVER SHOULDER(越肩)の穴に数字が出て
来る仕組みになっています。つまり胸囲身長の2つの数字を合わせると、
4つの寸法が出て来る…という訳です。
 これですと知りたい数字だけが見えますので間違える事もない訳で、でき
た時は我ながらなかなかの力作だと思いましたし、実際に使っても大変便利
で重宝していました。
 先日このゲージの事を思い出して、ブログに写真を載せようと引張り出し
て見て、ちょっと驚きました。
 自分が思っていたよりも中の数字がとても細かかったのです。かなり細い
ペンを使って書いていたようですが、これだけの数字を間違えずに書き込む
ことができたのは、やはり若かった…という事に尽きると思います。
 当時の私の視力は裸眼で両眼共1.5でしたから相当良く見えていたのだと
思います。今ではこの細かい数字を見るだけでも大変ですし、これを書く気
には・・・とてもなれません。青春時代の懐かしい作品です。
ゲージ**
 円形ゲージ
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR