Loading…

#117.帽子の話

Posted by KINN Tailor on 25.2013 アクセサリーの話   0 comments   0 trackback
 昔は、男性の服装に帽子は欠かせない物でした。
 明治4年の断髪令からなのか…当時の写真などを見ると、和装でも帽子を
かぶっている姿があります。
 また昭和に入ってからのサラリーマンも、皆帽子をかぶっていますので、
特に礼装の時という事ではなく、日常品として親しまれていたようです。
 いかに日常的だったかと言うと、当時の劇場の椅子の背もたれの裏側には
必ず帽子掛けが付いていたほどです。
 このように私が子供の頃は、帽子をかぶる事がごく当たり前だったのです
が、成人した時分を思い返しますと、自分も含めて帽子をかぶる人がとても
少なくなっていたような気がします。
 最近また、若い方を中心に帽子をかぶる方が増えているようですが、帽子
をかぶって外出をするというのは、最初は少々勇気がいるもので、私は長ら
く帽子をかぶる事をしないでいました。
 ある時、知り合いの先生から薦められて帽子を試してみる機会に恵まれま
した。その方は、皆さんご存知の方も多いと思いますが、平田暁夫先生です。
 先生は、宮様方の帽子を作られている関係からご縁があったのですが、他
にも私共のお客様の中には、スポーツジャケットなどを作られた際に、共布
で帽子を御注文
される方も少なくありませんでしたので、そのような時にお
願いしていました。
 たまたま家も近所という事もあり、お伺いしてお話をする機会があったの
で、ある時に自分の事を相談したところ、「大丈夫、あなたは帽子がかぶれ
ますよ」と仰って、お店に飾ってあった帽子を1つ選んで下さいました。
 それからが、普通とは違っていたのです。
 先生は、私の顔をご覧になりながら、帽子のツバを両手で曲げたり伸ばし
たりして恰好を付けていかれるのです。さんざん触って形を出して下さって
から「これで良いと思いますよ。あなたはツバの前側を下げて後を曲げて、
少し前下がり気味にかぶって御覧なさい。それがよく似合うから・・・」と
の事でした。
 仰る通りにかぶってみると、なるほど!いい形に見え、先生の太鼓判も頂
いたので、それからは帽子をかぶるようになりました。

           父帽子

 先日「ぬいぐるみの話」で、希少価値の高いツィードの生地を使ってクマ
を作った事を紹介しましたが、意外にも反響があり、ご注文を頂きました。
 そこで、クマだけでは少々もったいない…という事になり、ツィードの味
を生かすにはハンチングもあるかな?…と、平田先生のアトリエにお願い
したところ快諾を頂きました。

    ハンティング**
 近い内にホームページで「Tweed Mania」として発表する予定です。

#116.ネクタイの話

Posted by KINN Tailor on 18.2013 アクセサリーの話   2 comments   0 trackback
 今から20年以上前、大手のネクタイ屋さんからの依頼で、社内報に礼服
についての連載を書いたことがありました。約2年程書きましたが、社内報
は毎月出ていましたので、20回以上書くことができた訳で、今読み返して
みるとなかなか読み応えがあるなぁ…と思います(手前味噌ですが)。
 そちらの会社とご縁ができたのは、私共のお客様から社長さんを紹介され
たのがきっかけで、こちらからもある会の会員用のネクタイを依頼したりし
ましたし、一時は頻繁にやり取りがあったものです。社長さんとも何度もお
会いして色々な話と共にネクタイについても教えて頂きました。
 私がとても興味を持ったのは、ネクタイは一度に織る生地の量がとても少
ない…という事でした。ご存知の方も多いと思いますが、ダービータイは布
バイヤスに裁断して作ります。ネクタイの"大剣"と呼ばれている一番幅の
広い所で10~12cm位ですので、三つ折りで作るとなると25~30cm位必要
となります。この幅をバイヤスに計ってみますと、1本のネクタイにどれ位
の生地を使うかがわかります。
 通常ネクタイ用の生地は半幅ですので、145~155cm位の長さのネクタイ
を作るとなると、2箇所つなぐことになる訳です。
 ネクタイの画**
 ネクタイ1本を取るのに、意外に沢山の生地が必要となるのですが、その
社長さんに聞いたところによると、高級なネクタイは1柄で6本分しか生地
を織らないそうなのです。つまり全部売れたとしても、同じ柄は6本しか出
回らないという訳で、かなり希少価値があるなぁ…と思いました。
 ただネクタイの柄は、その方の好みを非常に強く表現する物ですし、服に
比べると印象に残り易いものですから、同じ物が何本もあるべきではないの
でしょう。会合に出掛けて行ったら同じネクタイをした人がいた…な〜んて
いうのもお互いに気まずいものでしょうし。
 さて、最後に。。。 
 お客様が締められていたネクタイで変わった物を拝見したことがあります。
ドミニック・フランス(Dominique France)の物で、縦の生地を両面同じ形
裁って、周りをぐるりと縫ったものでした。ネクタイをバイヤス裁ちにする
のは、その方が生地が収縮して具合が良いからなのですが、結び心地を伺う
と、「大変いいよ」との事でした。このメーカーはもともと特殊な織り方を
しているようなのですが、それでも縦地を使ったネクタイはとても珍しかっ
たので、もしかしたらお客様が特注されたのでは?…と思ったものです。

#104.ファスナーの話

Posted by KINN Tailor on 25.2012 アクセサリーの話   0 comments   0 trackback
 ファスナーは服やバッグにとどまらず、色々な所で使われていて実に種類
が豊富です。とても便利な物ですが、一体いつ頃からあったのでしょう?
 一寸調べてみたところ、どうやら1890年代には既に使われていたようです
ので、思ったより古くから存在していたようです。

 私たち洋服関係ですと、まず紳士物ではパンツの前、婦人物ではスカート
やパンツ、ワンピースなどに使いますが、現在は用途別に種類も増えて来ま
した。
 昔のファスナーは丈夫な布に金属のツメ(務歯→ムシと云います)が付い
ていて、スライダーという金具を動かして開け閉めする代物でした。務歯
洗濯を繰り返すと滑りが悪くなってしまいますので、ロウなどを塗ったりし
て苦労した方も沢山おられたと思います。
 その内にプラスチックファスナーが登場し、続いてナイロンファスナー
発売され、現在ではこれが主流になっています。
 通常は適当な長さに仕上げてある物を使用しますが、業務用としては何m
にも巻いて売られている物もあります。これを自分で必要な長さにカットし
て、留め金などを付けて使う訳です。また、婦人物によく使用するのがコン
シールファスナー
で、これはファスナーの部分が裏側に隠れるようになって
いますので、布を重ねずにファスナー付けることができ、薄く仕上げたい時
には大変便利です。
   ファスナー色々**
(左から)金属製、ナイロン、コンシール、業務用の巻いて売られているファスナー
 さて紳士物のパンツに付けるファスナーですが、実は少々細工が必要なの
です。
 小股(パンツの前の開けるところ)は下の方がカーブしています。そして
紳士物はこのカーブしている箇所までファスナーを付けますので、ファスナ
ーが真直ぐだと上手くないのです。
 以前は真直ぐなファスナーしかありませんでしたので、自分で曲がったフ
ァスナーを作らなければなりませんでした。
 一寸その作り方をご紹介しましょう。
 まず、ファスナーの片側に丈夫な糸を入れて、糸を引いて片側を縮めます。
そして、ファスナーを水の中に漬けて数時間放っておきます。すっかり水が
染み込んだところでアイロンを当てて乾かします。これが結構時間がかかる
のですが、最後に糸を抜いて曲がったファスナーが完成…という訳です。
    ファスナーイラスト**
 この作業は手間がかかって大変で、当時ある教室に教えに行っていました
が、そこの生徒も「なかなか上手く曲がらない…」とボヤく人が少なくあり
ませんでした。
 ところが、その内にメーカーからあらかじめ曲がったファスナーが発売さ
れ、問題は解決されたのです。
 ファスナーを作る時は今でも、最初から部分的に曲がった物を作る訳には
いかないらしく、最初に何mもの長い物を作ってから相応の長さにカットし
ていく…という工程を経るため「高級品」として扱われています。
 値段も当然高いのですが、あの1本1本曲げる苦労を考えると有難いな…
と思わずにはいられません。
       曲がったファスナー**

#69.釦の話

Posted by KINN Tailor on 19.2012 アクセサリーの話   0 comments   0 trackback
 以前頂いたご質問に「上着の釦はどこを止めるのが良いか」というものが
ありました。今回はその事について考えてみたいと思います。

 まずダブルですが、これは掛ける釦と飾り釦(button show)がハッキリ
決まっている事が多いのが特徴とも言えます。デザイン上、どの釦を掛ける
とか外すとかによって、服の表情が変わることがないのが理由だと思います。
その点シングルの場合、例えば三つ釦を考えてみると上二つを掛けた時と、
中一つ掛けにした時とではハッキリと表情が変わると言えます。
 技術的な観点から言いますと、掛釦はウエストラインに近い所を止める
が一番安定します。
 例として三つ釦の画を描いてみました。
 a.が一番多く使われる例で、"三つ釦中一つ掛け"と呼ばれています。この
掛け方が英国で長い間使われていましたので、日本でも英国流を好まれる方
はこのスタイルにされることが多いようです。
 私共のお客様の1人に大変 a.を好まれた方がいらっしゃいました。お嬢様
が結婚をなさる時にお婿さんに上着をプレゼントすることになったのですが、
"三つ釦中一つ掛け"で着る事が条件だったそうです。幸いお婿さんも英国好み
だったようで快諾されたので、早速ご注文になりました。
 着方を条件にして服を進呈されるというのは、あまりない事ですが、これ
"こだわり" なのだと思います。
 画に戻りまして…b.とc.は割と珍しい掛け方です。b.はVゾーンが狭く裾
に向かって緩やかに広がる形になり、逆にc.はVゾーンが長めに強調される形
になります。このb.とc.は不安定な面白さを狙った掛け方と言えます。
釦位置
 "三つ釦二つ掛け" は、中釦と上の釦を掛けたスタイルが一時若い方達の間で
大変流行し、特にイタリア流の着こなしの際によく使われていましたし、中釦
と下の釦を掛けるスタイルも根強いファンがいらっしゃるようです。
 つまり、どの釦を掛けるかはご本人のお好みでいい訳です。但し釦の止め方
でジャケットの表情も変わり、全体の印象も違ってくる
ものです。
 その日の気分やその時のスタイルで、色々試してみるのも楽しいのではない
でしょうか。

 これに対して釦の掛け方が決まっているのが礼服です。
 礼服の場合は、どのスタイルでも全て掛けるのが正式な着方です。やはり、
"正装"としてきちんとしたイメージを出すのが大切なのだと思います。

#64.ブラックタイの話

Posted by KINN Tailor on 13.2012 アクセサリーの話   2 comments   0 trackback
 1月21日に、ある技術団体(オメロピット・クラブ:会長 牧勝則氏)の
新年会が開かれ、私も声をかけて頂いたので参加させて頂きました。
 紳士服の技術団体の会合そのものが少なくなってきているのですが、今回
の会合はドレスコードが「ブラックタイ」ということでしたので、その意味
でもちょっと珍しい集まりでした。

 私も久々にディナージャケットを着たのですが、最近は礼服で出席する会
が特に少なくなっているので、このようなパーティは大変結構な企画だと思
います。
 夜間のパーティだった為、色変わりの服の方はおいでになりませんでした
が、親睦会だったので、私は少し砕けさせて頂いてパープルのカマーバンド
と蝶タイ
にしました。私以外の方は全員黒ネクタイで正に「ブラックタイ」の
集まりでした。
 ただとても面白いと思ったのは、殆どの方が大変幅の狭いネクタイをして
おられたことです。写真を見て頂くとおわかりになると思うのですが、私の
タイは「花結び」の蝶ネクタイですから、少しボリュームがあります。

      オメロピット集合写真

 パーティは会長の挨拶に始まって、海外の事情についての報告などが続き
ました。この会はわりと親しい方達の集まりなので、お互いに話しも弾み、
とても良い雰囲気で進行しました。
 会場は白金に古くからあった個人の住宅をあまり手を加えずに使っている
…とのでしたが、とても立派で、今回のような20数名のパーティにはとても
向いていたと思います。
 会の終わりに「次は一つモーニングでガーデンパーティでもやりますか」
という話も出ましたが、それが実現したらとても素晴らしいと思います。

 近頃礼服をお召しになる方が少なくなってしまった…と云われていますが、
これは着て行く処がないからで、もっと沢山場があれば礼服を着る方が自然
と増えると思います。
 海外に目を向ければ、礼服という物はやはり必要な訳ですから、日本でも
普段から気軽に「礼服着用」というドレスコードの催しが増えて欲しいなと
思います。
 かなり前の話になりますが…英国のコベントガーデンが改装された時に、
記念のパーティをやっている様子がテレビで放映されました。
 昼間に広い芝生の上でモーニング姿の人たちが大きなバスケットを下げて
集まり、ガーデンパーティをやっていたのですが、実に優雅で羨ましい光景
でした。

 気軽に礼服を着て集まれる野外パーティ…などがあったら本当に素敵だと
思いますので、ひとつ皆で頑張って啓蒙し、実現したいな・・・とつくづく
思いました。
「精神的なゆとり」って、多分こんな事の積み重ねで構築されるのでしょう
から・・・
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR