Loading…

#238.仕事の勉強の思い出 その二十三 ~チョッキ最終話~

Posted by KINN Tailor on 13.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 今回は、少し変わった形のチョッキを紹介したいと思います。
Vイラスト1**
 ①は襟付きですが、これはお洒落着としてよく使われます。
 この襟の作り方は2種類あって、一つはジャケットのラペルのように見返
しと同じような布を付けて返す方法
、もう一つは襟の部分だけを別に共布と
スレキで作って付ける方法
です。
 私はチョッキはジャケットの下に着る事を前提に考えていますので、なる
べく薄く仕上げるために2つ目の方法を採用しています。
 ②と③は燕尾服タキシードに用いられます。
 ③のカーブした襟の方が古くからあるデザインで、②の形は1940年頃に
発行された製図本に初めて登場し、「New Type Of Dress Vest」と書かれ
ていました。
Vイラスト2**
 ④から⑥はダブルのチョッキです。
 ④はモーニングコートの時の色変わりのチョッキとしてよく用いられます。
⑤はそれを少し変形させした物で、タキシードの時にカマーバンドではなく
チョッキを召される方がお選びになる事が多いようです。襟の形が優雅で華
やかな印象を与えるからかも知れません。
 ⑥はかなり斬新なデザインで、お固いスーツの印象を少し和らげる効果が
あるようです。
Vイラスト3**
 ⑦、⑧は背中のないタイプです。盛夏に礼服を着る場合に少しでも涼しく
・・・という事なのでしょう。礼服の時は人前でジャケットを脱ぐ事はまず
あり得ませんので、こういったデザインになった訳です。

 ここで紹介したのは、ごく基本的なデザインの物ですが、チョッキは遊び
の要素
をかなり入れる事ができますので(礼服以外の場合)お客様のご要望
で変わったデザインのチョッキもかなり作りました。
 一番変わっていたのはN氏が考案されたデザインです。N氏は必ずチョッキ
を着用されていました。理由としてはチョッキがお好きだったのは勿論です
が、物を入れるのに必要だった…という事のようです。ある日、「ポケット
だけ…っていうチョッキはできないかなぁ?」
と仰られました。
 背中のないチョッキを見て思いつかれたたようで、色々相談をして、極力
布地の部分を減らした
チョッキのような?チョッキを作った事があります。
 どうしてあのようなチョッキを作ったのかはわからないのですが、お友達
に「こんな物作ってみたよ!」と話題にするためだったのかも知れませんね。

#237.仕事の勉強の話 その二十二 ~チョッキ③~

Posted by KINN Tailor on 06.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 チョッキの脇を入れた後は、襟ミツを作ります。

 チョッキの肩幅は狭いので通常イセ込みは殆ど入れません。ですから普通
は脇と同じように前身頃と後身頃を合わせてミシンで縫ってしまうのですが、
私の店では後身頃に1cmのイセ込みを付けていましたので、これも脇と同じ
ように表側と裏側を別々に縫っていました。
 裏地をイセ込むのはとても難しく、また狭い幅でイセ込む訳ですから大変
苦労しました。…苦労はしましたが、ある程度できるようになってからは、
もっと前肩にした方がより身体にフィットする…という気持ちが強くなった
ので、父と相談をしてイセ込み量を少し増やす事にしたところ、案外上手く
行ってかなり前肩にする事ができました。それ以来1.3~1.4cmイセ込む
にしています。

 次に襟ミツです。チョッキの襟ミツの所は「ミツ布」と呼ばれている幅の
狭い二つ折りの布地(表地と同じもの)を付けますが、このやり方も2通り
あります。

チョッキ 襟みつ**

 1つは、(図のように)前身頃を裁断する時にミツ布になる部分を一緒に
裁断
して使うやり方です。2つ目は表地をバイアスに裁ちミツ布として使う
やり方です。1つ目のやり方はミツ布が身頃に繋がっていますから、それを
好む方もいらっしゃいますが、襟ミツは首に沿ってカーブさせなければなり
ません。バイアスの方が綺麗にカーブさせられるので、私の店では2つ目の
やり方を採用していました。
 そして襟ミツの中心で繋ぎ合わせる箇所に沢山縫い込みを入れておくのも
当店の特長です。チョッキは肩に縫代を沢山入れておく事ができません。…
にも関わらずもし後でお腹周りが大きくなってしまったとすると、前身頃の
長さが足りなくなります。肩に出せる布は入っていませんので、ミツ布を長
くして、後身頃を作り直せばいい
訳です。
 先日、古くからのお客様が、お気に入りのチョッキを久し振りに着てみた
ところ、お腹周りがキツくなっていて着れない…とガッカリされていたので
すが、直る事をお伝えすると、とても喜ばれました。後身頃は裏地ですから、
表地がなくても作り直すことができるので、襟ミツの長ささえあれば直しが
可能
…という訳です。

 さて、チョッキには尾錠が付いている物とない物があります。これはお客
様の好みですから勿論どちらでも良い訳ですが、チョッキは下に着ている物
をまとめて安定させる
…という意味で尾錠は大切な役目を担っているのです。
 私の店では「#40.オリジナルの小物」で紹介した尾錠を使っています。父
が創業した時にフランスに発注して大量に作って貰った物で、ツメがあり、
金具には「KINN」と刻印されています。
 実は今の店(渋谷区)に移った頃に取り引きをしていた付属屋さんから、
「このタイプの尾錠は日本では作っていなくて困っているので、沢山あるの
なら分けてもらえないか?」と言われた事がありました。今は外国製の物が
簡単に輸入できるようになったようですが、当時はあまり手に入らなかった
ようです
 このツメのタイプは、布地が滑らなくて具合が良いのですが、その代わり
長い間使うと布に穴が空いてしまう事があります。でも、昔の服は傷んだら
その部分を作り直すのが当たり前
でしたから、特に気にする事ではなかった
のです。
 チョッキは思っていた以上に細かい所でウチの店の特長が出ている物で、
一通りできるようになって安閑としていたら・・・・ダブルのチョッキに
ラペルの付いたチョッキ、そして背中のないチョッキ!…なんて物まで出て
来て、まだまだ修行は続くのでした。

#236.仕事の勉強の話 その二十一 ~チョッキ②~

Posted by KINN Tailor on 29.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 前身頃が形になったところで後身頃を作りにかかります。

 普通チョッキの後身は裏地で作りますから、裏地を2枚裁ち合わせるので
すが、当時私の店では同じ裏地を使うのでなく、内側に来る裏地は特注した
を使っていました。「#16.裏地」でもお話したのですが…当時は絹の裏地
を使う事が多かったのですが、絹は弱いので、ジャケットの袖裏、パンツの
腰裏、そしてチョッキの裏には綿とレーヨンの混紡の布地を使いました。
 この裏地は縞柄でしたが、私の店専用の柄でしたので、裏地を見れば何処
で作ったのかがすぐに判る…と言われていました。

混紡の裏地**
混紡の裏地

 この裏地は1960年頃迄しか作る事ができませんでした。何故かと言うと
キュプラ地が登場した事によって皆それを使うようになってしまい、わざ
わざ私の店だけのために作るのは難しいという事になってしまったのです。
 そこでキュプラで同じ柄の物を作って貰えないか頼んでみたのですが、
の太さが違う
ので同じような縞柄にはならないという事と、発注する単位
とても多くなってしまうため止むなく諦めました。その後暫くは袖裏用に売
られていた薄いクリーム色のキュプラを使っていたのですが、徐々にジャケ
ットの裏地と同じ物で統一
するようになりました。

 さて、チョッキの後身頃に話を戻しますと・・・後身を裁ち合わせた後は
ダーツを取り、アームホールと裾をミシンで縫って返すのですが、アームホ
ールは返した時に内側になる裏地が少し小さくなるようにしなければならな
いので、その分ずらして重ねるのが意外と難しく、苦労した覚えがあります。
ずらす量は1~2mmなのですが、この"わずかな量"というのが難しかった訳
です。
 後身を縫って表に返した時に内側から見てみると、内側の裏地がクリーム
色で、そこから淵を取るように表側の裏地が見える訳です。裏地は基本的に
濃い色が多かったので、同じ幅で綺麗に見えないととても目立ちましたし、
左右同じように見えないとおかしいものですから、かなり神経を使いました。

 このようにして後身ができると、次は脇入れになります。ここでまた一寸
した事なのですが…私の店独特の縫い方を勉強する事になりました。
 一般的な脇入れは、後身の中に前身を差し込んでミシンで縫って返すやり
方です。

チョッキ イラ1**

 私の店の場合は・・・前身の表側と後身の背中側を重ねて、重なった所を
ミシンで縫う
のですが、その際後身側は背中側の布だけを縫います。縫った
所を開いて、前身の端を後身の内側に差し込み、後身の裏地をかぶせて手で
まつって止めます。

チョッキ イラ2**

 つまり後身の脇が袋状になっているので、片側だけを縫い、もう一方で
むようにしてまつる
のです。私はこれを習った時に、ミシンで一度に縫うの
が難しいからこういうやり方をしているのかな?…と思ったのですが、そう
ではなく私の店で使っていた裏地(綿とレーヨン)と他の裏地は伸縮の具合
が違う
ので、このような仕上げをしているという事でした。
 ただ一般的な方法では、余程キッチリ合わせていないとずれそうですし、
チョッキの脇の下の所は空いているので、そこまで一緒に縫ってしまう…と
いうのが私にはどうにも抵抗があったので、うちのやり方で助かったとも言
えます。
 裏地がキュプラになった今でも、勿論このうち流のやり方を通しています。

チョッキ イラ3**


#235.仕事の勉強の思い出 その二十 ~チョッキ①~

Posted by KINN Tailor on 22.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 この絵に書かれている物の呼び方は色々あります。
ベストの絵**

 「ベスト(Vest)」と呼ばれるのが一般的で、これは米国流です。英国流
には「ウエストコート(Waistcoat)」、そして我々の年代は「チョッキ」
と呼ぶ人が圧倒的に多かったです。
 「チョッキ」は何故そう呼ぶのか判らずに使っていて、仲間も「チョッと
着るからチョッキなのさ」などとフザけた事を言っていた位で、あまり気に
もしていませんでした。
 ところが3年位前にどうしても調べなければならなくなって辞書を捲って
いたら、何と広辞苑に次のように載っていました。
 【チョッキ[Jaque](フランス・ポルトガル)】・・正確な発音はわか
りませんが、きっと日本人が聞いて発音をしている内に“チョッキ”になって
いったのではないかと思います。

 さて仕立ての仕事を習う順序ですが…最初にパンツ、次にチョッキ、それ
からジャケットと進んで行くのが普通ですが、私はジャケットを先に勉強し
たのでチョッキが後になりました。私が勉強を始めた頃は、スーツは殆どが
スリーピースでしたのでチョッキを作るのが当たり前で、私の店にもチョッ
キ専門の職人さんが居たくらいです。
 チョッキとジャケットは、最初にダーツを取ってからポケットを作るので
すが、ジャケットはポケットを作ってから芯を据えるのに対し、チョッキは
芯を据えてからポケットを作ります
。当時は芯に厚手のシーチング(木綿地
の芯)を使っていました。
 余談になりますが…芯にシーチングを使う事には何の疑問も持たずにいた
のですが、チョッキを作るようになって5年位経った頃フッと「ジャケット
と同じように毛芯ではいけないのかな?」と考えるようになりました。毛芯
シワになっても自然に戻るのですが、シーチングは綿なのでシワは自然に
は戻らないのです。
 チョッキはジャケットに比べ身体にぴったり付けて着ますから、少しでも
シワにならない方が良いと思って、それ以来私の店では毛芯を使うようにな
りました。

 さて話を戻しますと・・・御存知の通りチョッキにはポケットが沢山付い
ています。私の店では普通両前に2個ずつ付けましたので、合計4つ作る事に
なります。チョッキに使う箱ポケット玉縁ポケットよりも少し手間がかか
りましたので、最初の内はポケットを作るのにかなり時間がかかってしまい、
ポケットができると何となくチョッキも完成したような気になったものです。
ポケットが仕上がると、次に"前の端"を作りにかかります。
 ここからは幾つかのポイントで、私の店独特の縫製の仕方を勉強する事に
なりました。

 前の端については「#55.前突きオーバーコート」で説明したのと同じ方法
で、端が薄く仕上がるように、身頃と見返しの縫い合わせの位置をずらして
内側に入った所になるようにする方法でした。これは英国式の仕事なのです
が、最初に教わった時には「布1枚薄くする事がそんなに影響があるのかな
?(端で縫い合わせると布は4枚重なるが、内側にずらした所で縫って割る
と、端の重なりは3枚になる)」と思ったのですが、実際にやってみると、
布1枚でも効果があるもので、「なる程!…よく考えてあるな」と感心した
ものです。
ベスト前の端**
 この続きは、次回お話する事にしましょう。

#233.仕事の勉強の思い出 その十九 ~初めての採寸~

Posted by KINN Tailor on 08.2015 修業時代の話   0 comments   0 trackback
 裁断がある程度できるようになった頃(私は20歳位でした)に、父から
「そろそろお客様の応待を勉強しなさい」と言われ、父が仮縫いをしている
時に傍に居てピンを渡したりするようになりました。
 その内、馴染みのお客様(私が小さい頃から色々話をしたり可愛がって下
さった方々)に父からお願いして採寸の練習をさせて頂くことになりました。
 どなたもとても気持ち良く受けて下さったのですが、同じ箇所を何度か計
るとその都度寸法が少しずつ違ってしまい、ポイントをどこからどこまで…
と定めるのがなかなか上手くいきませんでした。

 当たり前の話ですが、採寸は製図するために行う訳で、自分が製図をする
時に必要な数値が計れていればそれで良いのです。ですから人によって計る
箇所や緩みの加え方が違っても構わないのです。
 父の採寸方法はどちらかと言えば細かくはなく、私が勉強していた短寸式
とはかなり違いましたが、父から緩みの入れ方などを手解きしてもらいなが
ら、家族や職人さんにモデルになって貰って練習しました。

 そんなある日、新しいお客様からのご注文が入ったのですが、あいにく父
の都合が悪かったため私が代わりに伺う事になりました。
 何しろ初めて一人で訪問するという事態にかなり緊張していた上に、お客
様が米国人という事でしたので一体どうなる事だろう…とハラハラしていま
したが、お会いしてみると日本語もお話しになられたので安心しました。
 そして、父から渡されたメモと私が教科書から抜粋した採寸箇所を書いた
紙を頼りに、無事(何とか)採寸を終えて帰って来ました。

 戻ってすぐに製図をして、でき上がったパターンの寸法を計り直してみた
ところ、まぁ何とかなりそうだったので、続けて裁断をしました。採寸時に
胴周りが一寸気になっていたので、いつもより少し多めに縫い込みを付けて
鋏を入れました。
 それから1週間位して父と一緒に仮縫いに伺いました。結果はやはり気に
なっていた胴周りが少し小さかったので、「縫い込みを沢山付けておいて良
かった・・・」と胸を撫で下ろしたものです。
 この時は縫い込みのお陰で大した問題もなかったので、自分でもさほど気
になっていなかったのですが、実際にはこの時の事がかなり頭に残っていた
ようで、その後何人かの新しいお客様を採寸した際に、胴囲が少し大き過ぎ
る事がありました。
 そこでもう少し正確に計れる方法はないものかと思案して、ゴムのテープ
に動かせる金具を付けた物
を作り、それを胸と胴に巻いてポイントに金具を
動かして計る
・・・というやり方を試してみました。
 これがなかなか上手くいきました。古株のお客様の中にはこの新しい採寸
の仕方をとても面白がって下さる方もいらっしゃったのですが、結局は経験
を積む内にこのようなテープがなくてもポイントがわかるようになったので、
必要なくなりました。
 この特性テープは今でも健在で、私塾の生徒さんに採寸の仕方を指導する
時に役に立っています。 

採寸用テープ
・テープを巻き、金具をポイントに移動させる
・ポイントまで正確に計る事ができ、ポイントがどこかを覚える事ができる

  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR