Loading…

#332.研ぎの話

Posted by KINN Tailor on 26.2017 道具の話   1 comments   0 trackback
 仕事で、私が毎日使う(ハサミ)があります。

 一般的に「裁ち鋏」と呼ばれている大きさの物がありますが、私の場合は
それより大きい物を「裁ち鋏」として使っていますので、この大きさの鋏の
事を「仕事鋏」と呼んでいます。
 昔は鋏の事をその大きさ=「寸」を付けで区別していました。その言い方
ですと、私の仕事鋏は「9寸(約27cm)鋏」になります。

 「仕事鋏」は、切り躾を始め色々な所で使いますので、頻繁に"研ぎ"に出
さなくてはなりません。いつもは近所の金物屋さんに頼んで、鋏のメーカー
に出していました。
 ところがそのメーカーが鋏の製造を止めてしまい、どうなる事かと思って
いましたら、「研ぎだけは継続します」と言うので、ホッと一安心した矢先
・・・いざ出して、仕上がって来た物を手に取ってみると、どうもいつもと
感じが違うのです。
 切れ味も何となく違いますし、一番「おや?」と思ったのは、何も切らず
に、刃と刃を合わせたり開いたりした時の感覚がいつもと違うのです。
 暫く使いましたが、案の定すぐに切れ味が悪くなってしまいました。研ぐ
職人さんによっても仕上がりは違うのかも知れませんが、また同じ所に出す
気はしませんでした。
 昔は近所に「研ぎ屋さん」があったりして色々と試したりできたのですが、
今は見かけなくなりました。

 結局、誰もが名前を知っている有名なお店にお願いするしか手がありませ
んでした。結果的には、良く研げていて問題はありませんでしたので、他の
仕事鋏も続けて研ぎに出してみました。すると・・・また、何か違う感じ
するのです。
 私が一番長く使っている仕事鋏は60年位前の物で、他の2本はここ14~5年
前に購入した物です。どれも同じように研げていますが、やはり60年位前の
物が一番良く切れますし、何となく重量感もあり、刃も厚いような気がする
のです。そこで…比べてみました。
 すると、やはり60年前の物が一番重く264g、他は234gと230gでした。

◇私の「仕事鋏」
鋏**jpg
・一番上から古い順。長さも少々違います。

 道具も50年も経てば変わる…という事なのでしょう。
 原料の鋼も昔の物とは違うでしょうし、目方(重量)や長さもその時代に
合わせて変わるのは仕方のない事だと思います。
 今一番心配な事は、「裁ち鋏」として使っている一番大きな鋏の研ぎを、
引き受けてくれる所がない…という事です。
 既に永年経っていますので、研ぐと鋼が保たないのではないか?…という
のが理由です。
 裁断の時はこの鋏が一番しっくり来るので、いつまで使えるのか…が大い
に気になるところなのです。

#234.ちょっと残念な話 ~アイロン~

Posted by KINN Tailor on 15.2015 道具の話   0 comments   0 trackback
 20年来使っていたアイロンの具合が悪くなってしまいました。スチーム
を使うと水が漏れてしまうようになったのです。修理を依頼してみましたが、
私のアイロンは既に製造中止になってしまっていたため、部品がない…との
事でした。
 長い間使っていて馴染んでいましたので、どうにかならないものか…と思
い分解をしてみると、スチームの所のパッキンが傷んでいる事が判りました。
スチームは使えませんがアイロンとしては充分使える状態のようでしたので、
パッキン用のゴム板を探しに金物屋さんへ行ってみました。
 すると丁度同じ厚さのゴム板があったので早速買って帰り、古い物から型
を取って作ってみたところ、何と上手く合って水漏れがしなくなりました。
 しめた!…と思い使っていたのですが、翌日他の箇所から水が漏れて来て
しまいました。今度は漏れてきた水がアイロンの熱で蒸発して、その蒸気が
丁度取手の所にかかるため、熱くてアイロンが持てない状態になってしまい
ました。
 やはり専用のパッキンを使わないと直らないようですし、それも1箇所で
はないようなので自分で修理するのを諦めて、新しいアイロンを購入する事
にしました。

 前のアイロンの重量は2.3kgでしたが、今は一番重たいのでも2kg、アイ
ロンの底面も多少小さくなっていました。20年も経つと色々研究されるよう
で、コントローラーがアイロン本体から離れているので温度調節が楽ですし、
デザインもスッキリしています。
 重さは0.3kgしか違わないのですが、随分軽く感じるのは構造の違いなの
か、デザインの違いなのか?…いずれにしても今の私には丁度良いかも知れ
ません。

「#72.アイロンの話」で書いたように、私が仕事を始めた頃のアイロンには
スチームなど付いていませんでしたし、温度調整もできず、電気の差し込み
口を付けたり外したりして調整していました。そう言えば、私が子供の頃に
仕事場を覗いきに行った時に、水を一杯入れた"金だらい"の中にアイロンを
入れ、ジュ~っと大きな音をさせてアイロンを冷ましている職人さんがいた
のを覚えています。多分電気を入れっぱなしにして熱くなり過ぎてしまった
のでしょう。その頃は手でアイロンの温度を見たり霧吹きを使ったりと、
今のアイロンと比べると使い勝手が随分違いました。
 安全性という意味では今の方が格段に上ですし、使いやすくなっているの
ですが、前のアイロンが完全に壊れていない(熱くならなくなったら終わり
だと思いますが)ので、何となく残念な気がしてしまいます。

 どの業界でもそうだと思うのですが、道具はどんどん軽くなり簡単に使え
傾向にあって、それはそれで素晴らしい事なのですが、やはり私のように
道具に対して思い入れがある…と言いますか、手に馴染んだ道具は手の一部
みたいになっている
者にとっては、古い機械でも修理して下さる所が残って
いてくれたらなぁ・・・とつくづく思うのです。

アイロン新旧** アイロン新**
写真左)手前:旧アイロン 奥:新アイロン(揃い踏み!)
写真右)新アイロン

#158.Made in Germany

Posted by KINN Tailor on 09.2013 道具の話   3 comments   0 trackback
 先日、知り合いの方に食事に誘われて出掛けました。
 その時に私の隣りの席だった方から珍しい話を聞かせてもらいました。
 その方は英国の方で、現在はある大学の教授をしておられるのですが、ご
両親が神戸に住んでいらっしゃった時に生まれたのだそうで、流暢な日本語
を話されていました。

 昔から機械いじりが好きで、細かい修理などもよくされるそうです。私が
洋服の仕事をしているのを聞いておられたようで、ミシンの話をして下さい
ました。
「私の母は若い頃にミシンを買ったのですが、その当時一番有名だったのは
“シンガーミシン”でした。でも母は”シンガー”はアメリカ製であって、機械
はドイツの方がいい筈だと思ってドイツのミシンを買いました。ところが、
普通のミシンと構造が違ったのですよ」と言うのです。私の店ではシンガー
ミシンを使っていて、ドイツ製のミシンというのは見た事がなかったので、
これは洋服屋としては聞き逃せない!…と思い、構造について詳しく聞きま
した。
 大きな違いは下糸にありました。ご存知のように、ミシンは上糸と下糸で
縫っていきます。一般的なミシンは下糸はボビンに巻きますが、そのドイツ
製のミシンはボビンではないと言うのです。下糸を織り機の横糸を巻いてお
くような細長い物に糸を巻く…と言うので「シャトルですか?」と聞いたと
ころ、どうもそのようなものらしいのです。そして縫う時はシャトルが回転
するのではなく、往復運動をする…と言うのです。
 実際に見ていないので、ちょっと不思議な感じがしました。このシャトル
が往復運動をするせいなのかは分かりませんが、その方がおっしゃるには
時々ミシンが故障をしてよく修理をした思い出があるそうです。
 このミシンはとても大きな物だったようで、ある時期にお母様が邪魔だと
いって片付けてしまったそうで、随分昔の事もありメーカー名なども分から
ないという事でした。
 家に戻ってから調べたところ、ドイツ製の古い小型の家庭用ミシンがイン
ターネットで売られていました。主にインテリアとして扱われているようで
すが、ミシンの本体に綺麗な花の模様が描かれている物が多かったです。
 残念な事に写真ではシャトルの動きまでは分かりませんが、ちょっと調べ
ただけで2社のドイツ製ミシンがありましたので、当時は家庭用として出回
っていたのでしょう。

 ドイツというと、どうしても車が一番最初に頭に浮かびます。あと薬関係
も有名ですが、私が意識していなかったためか、今まであまり身近な感じが
していませんでした。でもドイツを意識して考えてみたところ、先日生地屋
さんから買った珍しい厚手の生地もドイツ製でしたし、ノベルティとして作
った「KINN Tailor」のネームを入れたメジャーテープもドイツ製です。
 これを機会に大掃除を兼ねて、うちにあるメイド・イン・ドイツの製品を
探してみようか…などと思っています。

#102.道具の話 鋏

Posted by KINN Tailor on 12.2012 道具の話   0 comments   0 trackback
 私達は仕事の上で毎日のようにを使います。今私が使っている鋏は5種
類あって、用途によって使い分けています。
まず紙を切る鋏、次に裁断をする時に使う”裁ち鋏”仕事用の鋏、そして細
かいほどき物の時などに必要な小鋏ニギリ鋏になります。
 その内特に大事なのが裁ち鋏仕事鋏です。裁ち鋏は大切な生地を切る時
に使いますし、仕事鋏は何と言っても使う時間が長くなります。ですから良
い刃で切れ味が鋭くなくてはならないのは勿論なのですが、もう一つ大事な
事が手で握る箇所の出来が良いか…という事です。
 握る所が上手くできている鋏は使いやすく、長く使っても疲れません。私
の仕事用の鋏は、日本製の”長太郎”を使っています。そして裁ち鋏は英国製
ウィルキンソン(Wilkinson)で、これは父が創業した時に入手した物で、
大きい物とやや小さい物と2丁あります。ウィルキンソンというメーカーは
どうもサーベルも作っているらしく、ハンドルの所がとても手に馴染みやす
形で(軍人のサーベルの柄にそっくり!)使いやすいのです。

 さて持ち手の話ですが…私たちの仕事の一つに切躾(きりびつけ)という
作業があります。基本的に布地は2枚重ねで左右を同時に裁断します。そし
て左右同じ所に印を付けたい時に、白い躾糸を使って合印を付けます。2枚
重ねた布に躾糸を入れて、布と布の間の糸を切っていきます。3~5㎜位の所
に糸2本で1つの印、それが3㎝間隔でありますから結構細かな作業という事
になります。
 実は私はとても手が大きくて、昔は日本製の手袋で合う物がなくて外国製
を探すのに苦労した事もあったくらいです。ですから鋏のハンドルも大きい
方が使いやすいのですが、切躾となると刃が小さい方が使い勝手がよくなる
訳です。
 そこである時思いついて、いきなり有名な刃物屋さんへ行って、「刃が小
さくてハンドルの大きい鋏
を作ってもらえませんか?」と頼んでみたところ、
最初は妙な顔をしていましたが、よく理由を説明したら、理解してくれて引
き受けてくれました。
 2~3カ月経った頃に仕上がったとの連絡が入ったので、楽しみにして急い
でお店に行ったのですが、係の人が「いやぁ、今しがたまでここにあったの
行方不明になってしまって…」と言うのです。
 それから店の中をさんざん探し回ってくれたのですが結局見つかりません。
お店の人は、もう一度探すと言うので一旦家に戻って連絡を待っていたので
すが、何日経っても連絡が来ないのです。もう一度作り直してもらおうかな?
と思ったのですが、何だか気が抜けてしまい、結局止めてしまいました。
 それにしても、この特製の鋏はどこへ消えてしまったのでしょうか・・・?
お店は日本橋にある有名な所ですから、いい加減なことはしないと思うので
すが・・・「鋏怪談」といったところでしょうか。
 当時は今より遥かにのんびりしていたので「どうしたんでしょう?…なく
なってしまいました」・・・「そうですか」というやり取りが成立したのだ
と思います。
 その時無事に受け取れていたら、かなり使い込んでいたでしょうし、この
ブログで得意になって紹介していたでしょう。そう思うと残念です。

 さて、先程紹介した、父から引き継いだ裁ち鋏は今年で100歳になります。
いい道具は長持ちするんだな…とつくづく感心します。
 時々家の近所の金物屋さんに頼んで研いでもらいますが、そこのご主人も
鋏が好きで頼む度に「いいね、いいね」と言ってくれます。やはり伊達に100
年生きてきたんじゃないな…と思うと、感慨無量なものがあります。

    鋏の写真**
    (上から)
    ・Wilkinsonの裁ち鋏(大)
    ・Wilkinsonの裁ち鋏(小)
    ・長太郎 仕事鋏 
    ・紙用鋏
    ・小鋏
    ・にぎり鋏


#73.チョークの話

Posted by KINN Tailor on 16.2012 道具の話   0 comments   0 trackback
 チョークも、私共の仕事では欠かすことのできない道具の一つです。
 生地に型紙を置いてチョークで周りに印を付けていく訳ですが、チョーク
というのは意外に減りが早いもので、少し書くと線が太くなってしまいます。
 それでは具合が悪いので、裁断をする際には、あらかじめ先を細く削った
チョークをたくさん用意しておくのですが、それでも途中で何度もチョーク
を削り直さなければなりません。
 先が細くないと綺麗に描けないのですが、太い線では見苦しいこともあり
ますし、一寸真面目な?職人さんには「この線はチョークの内側ですか?
外側ですか?
」なんて、からかわれたりします。
 そう言われると甚だシャクなので一生懸命チョークを削る訳ですが、この
チョークは結構割れやすく、先を薄く削るのにも修業が必要です。
 昔、講習会で講師が裁断をしているそばに助手がいて、ひたすらチョーク
を削って次から次へと先生に渡していたことがありました。普通はカッター
で削っていきますが、中には手術用のメスで削っていた人がいて、これには
驚かされました。
 削り方も人それぞれで、私塾の生徒を見ていると色々と削り方が違うので
実に面白いです。
 私は画のようにチョークを寝かして削りますが、中にはチョークに対して
垂直に刃を当てて削っていく人もいます。

      チョーク*
      *チョークに対して刃を立てずに、広い面積を削る

 裁断の時私は、型紙の全てをチョークでなぞる訳ではありません。ポケッ
トやアームホールなどはフリーハンドで描いていきます。
 アームホールなどのカーブはどうしてもフリーハンドで描いた方が綺麗に
描ける気がしますし、ポケットの角度などは、デザインや生地のイメージで
変えたいので、そういう箇所は型紙を外して、生地とにらめっこをしながら
描き加えていくのです。ポケットを描くと布地に表情が出て、仕上がり状態
が見えてきますので、なかなか楽しい瞬間です。

 さて、チョークには白の他に赤や青、黄色もあります。
 私は白しか使わないようにしています。何故なら、色チョークには色素
入っていますから、後々までその色素が布地に残ってしまうとなると…少々
厄介だからです。
 白地に白いチョークは見えにくいのですが、先を尖らせておけば綺麗に描
けるものです。私は、描きやすく・消えやすい物が "良いチョーク" だと思っ
ています。
 中には消えにくいチョークを好まれる方もいらっしゃるようですが、私は
チョークを引いた後に「切り躾」を打つので、チョークの線は長く残らなく
ても良いのです。
 また、仮縫いをした時に修正のチョークを入れることがありますが、前の
は残っていない方が良いので、やはり消えやすくて良い訳です。
 チョークには三角形と四角形の物とがあります。実際に使って見ると四角
い方が線が描きやすいのですが、材質は三角形の「人物印チョーク」が良く、
綺麗な線が描けるので、私は三角形の一面だけを削りながら使っています。

 道具は使う人の好みもありますが、長年使うことで手に馴染んで、こちら
道具に馴れてくるので、自分の手の一部みたいなチョークはずっとここの
物を使い続けるのだろうな・・・と思います。

  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

カウンター

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR