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#285.苦労した話 その参 〜番外編〜
今回は、前回紹介しました「参考寸法」についてお話します。
参考寸法は、一般的な採寸箇所ではないけれど、これを計っておくと製図
をする時や製図した物が"その人の体形に合っているかどうかを確認する"の
に役立つ寸法の事です。
まずは、どの体形の方でも必ず計っておく参考寸法から説明します。

1)L寸
L寸はお客様に軽く肘を曲げて頂いて、袖の付け根から手首までを計ります。
この寸法を袖の山袖外側のカーブに当ててみて、短かかったらカーブを強
くします。
腕を動かしたり、食事の際に腕を曲げた時、袖丈が短くなるのを防ぎます。
2)手首の位置
お客様が自然に手を下げた時に、肩から手首がどれ位前に出ているかを計
ります。
この寸法を使って山袖内側のカーブを決めます。これは、手を前に出すと
袖 が短くなる…というのを防ぎます。
3)オーバーショルダー
鎌深から肩の中心を通り、前脇までを計っておきます。
製図した前身頃と後身頃を肩同志で合わせて、寸法が足りているかを確認
します(肩の角度が合っているかを見る)。
製図の方がオーバーショルダーよりも短い場合は、肩をイカらせるように
修正します。それにより、ジャケットの前の合わせが逃げるのを防ぎます。
4)オーバーネック
鎌深から首の付け根を通り、前脇まで計っておきます。
製図の方がオーバーネックよりも短い場合は、ネックポイントを上げます。
首が抜けるのを防ぎます。
次は、体形によって計っておくと良い寸法を説明します。

5)、6)ヒップの厚み、幅
身体の幅に対して普通よりもヒップサイズが大きい場合 5)と、逆に横幅
が広いのにヒップが小さい場合 6)の時にヒップの厚みと幅を計ります。
ヒップの一番張っている所が計れる位置に角差しを当てて a. と b.を計り
ます。この寸法は小股の幅を描く際に活かします。
このような体形の方をヒップの大きさだけ使って製図をすると、股のクリ
が合わず履きづらく、変なシワが出るパンツになってしまいます。
7)ふくらはぎの高さ
通常はふくらはぎの太さを計る事はしませんが、ふくらはぎが張っている
方の場合は、一番張っている辺りから裾までの高さを計ります。
この寸法を使い、ふくらはぎを膨らませた製図をし、アイロンワークで
くせ取りをする事によって、パンツの落ち方が綺麗になります。
この他に、お腹が出ている方の場合幾つか計る寸法があります。この説明
は少々長くなりますし、実際にかなり大変だった事もありましたので、次回
の「苦労した話」の続きとして紹介したいと思います。
参考寸法は、一般的な採寸箇所ではないけれど、これを計っておくと製図
をする時や製図した物が"その人の体形に合っているかどうかを確認する"の
に役立つ寸法の事です。
まずは、どの体形の方でも必ず計っておく参考寸法から説明します。

1)L寸
L寸はお客様に軽く肘を曲げて頂いて、袖の付け根から手首までを計ります。
この寸法を袖の山袖外側のカーブに当ててみて、短かかったらカーブを強
くします。
腕を動かしたり、食事の際に腕を曲げた時、袖丈が短くなるのを防ぎます。
2)手首の位置
お客様が自然に手を下げた時に、肩から手首がどれ位前に出ているかを計
ります。
この寸法を使って山袖内側のカーブを決めます。これは、手を前に出すと
袖 が短くなる…というのを防ぎます。
3)オーバーショルダー
鎌深から肩の中心を通り、前脇までを計っておきます。
製図した前身頃と後身頃を肩同志で合わせて、寸法が足りているかを確認
します(肩の角度が合っているかを見る)。
製図の方がオーバーショルダーよりも短い場合は、肩をイカらせるように
修正します。それにより、ジャケットの前の合わせが逃げるのを防ぎます。
4)オーバーネック
鎌深から首の付け根を通り、前脇まで計っておきます。
製図の方がオーバーネックよりも短い場合は、ネックポイントを上げます。
首が抜けるのを防ぎます。
次は、体形によって計っておくと良い寸法を説明します。

5)、6)ヒップの厚み、幅
身体の幅に対して普通よりもヒップサイズが大きい場合 5)と、逆に横幅
が広いのにヒップが小さい場合 6)の時にヒップの厚みと幅を計ります。
ヒップの一番張っている所が計れる位置に角差しを当てて a. と b.を計り
ます。この寸法は小股の幅を描く際に活かします。
このような体形の方をヒップの大きさだけ使って製図をすると、股のクリ
が合わず履きづらく、変なシワが出るパンツになってしまいます。
7)ふくらはぎの高さ
通常はふくらはぎの太さを計る事はしませんが、ふくらはぎが張っている
方の場合は、一番張っている辺りから裾までの高さを計ります。
この寸法を使い、ふくらはぎを膨らませた製図をし、アイロンワークで
くせ取りをする事によって、パンツの落ち方が綺麗になります。
この他に、お腹が出ている方の場合幾つか計る寸法があります。この説明
は少々長くなりますし、実際にかなり大変だった事もありましたので、次回
の「苦労した話」の続きとして紹介したいと思います。
#26.「寸法」について
今回は「寸法」についてお話します。
現在では日本の服飾業界は「メートル法」で統一されているようですが、
メートル法が施行されるまでは、紳士服は英国流の「ヤード・ポンド法」、
婦人服は仏国流の「メートル法」とに別れていました。
私は最初に外国の本で製図の勉強をしましたので、ヤード・ポンド法を
覚えました。
紳士服の場合、縫代の量は、基本的に1縫代=1/4インチとされていまし
た(*工場生産品の場合は3/8インチ)。
製図をする際に、4縫代取る箇所がジャケットやパンツにありますから、
1/4×4カ所で1インチ足せば良い…ということで覚えやすかったですね。
「メートル法」は仏国が主流だったようで、メートル原器(金属の棒に1m
の寸法が刻んである)も仏国にありました。
1メートルという寸法は地球の子午線(地球の北極から南極を通って1周
する線)の4千万分の1だそうですが、子供の頃の私は、どうやって子午線
の長さを計ったのだろう???…と不思議に思っていました。
日本には「尺貫法」という計り方があって、これもメートル法の施行前
まではずっと使われていました。
面白いのは、1尺が2種類あるということです。つまり、大工さんなど
が使っている1尺は「カネ尺」と云って1尺=30.3㎝ですが、服飾関係で
使う1尺は「クジラ尺」と云って1尺=38㎝なのです。
小学校の時に尺貫法を習いましたが、その頃の物差しは片側にセンチ、
もう一方にカネ尺が刻んでありました。
私は小学校で尺貫法を教わり、仕事ではヤード・ポンド法を覚えました
が、実際に職人さん達とやり取りする際は、皆さんクジラ尺を使っておら
れたので、クジラ尺も覚えなければなりませんでした。
意外に具合が良かったのは、クジラ尺の1寸はほぼ1インチ半に等しい
のです。ですから換算するのにとても楽でした。
例えば、ジャケットの両脇にポケットがありますが、この口の大きさは
ほぼ6インチなので、クジラ尺だと4寸になるのです。
こんな具合でクジラ尺とインチは問題なく両立していた訳です。
ところが、そこへ突然メートル法が施行され、しかもメートル法以外は
使用禁止!、メートル以外の物差は販売禁止!…になってしまったのです。
別に"販売禁止!"にしなくても良さそうな気がしますが、どうも日本のやる
ことは少々変だな…と思いますね。
ところが面白いことに、尺貫法の道具がないと困る人達の為にちゃんと
(?)闇市があって、クジラ尺を売っていたり、布地屋さんなどが内密に作ら
せて、お中元やお歳暮として届けてくれたということもありました。
罰則がなかったとはいえ、なかなか大胆なことをしたものです。
とにかく、このメートル法には苦労させられました。学校では習ってい
たものの仕事では使っていませんので、どうもイメージできないのです。
また、職人さんも同様でしたので、説明するのが大変でした。
最後に・・・日本では、何故カネ尺とクジラ尺があるのでしょうか?
しかも木や金のように硬いものにはカネ尺、布地のように柔らかいものは
クジラ尺と使い分けるようになった理由は何でしょうか?
どなたかご存知の方がいらしたら、ぜひ教えて下さい。
現在では日本の服飾業界は「メートル法」で統一されているようですが、
メートル法が施行されるまでは、紳士服は英国流の「ヤード・ポンド法」、
婦人服は仏国流の「メートル法」とに別れていました。
私は最初に外国の本で製図の勉強をしましたので、ヤード・ポンド法を
覚えました。
紳士服の場合、縫代の量は、基本的に1縫代=1/4インチとされていまし
た(*工場生産品の場合は3/8インチ)。
製図をする際に、4縫代取る箇所がジャケットやパンツにありますから、
1/4×4カ所で1インチ足せば良い…ということで覚えやすかったですね。
「メートル法」は仏国が主流だったようで、メートル原器(金属の棒に1m
の寸法が刻んである)も仏国にありました。
1メートルという寸法は地球の子午線(地球の北極から南極を通って1周
する線)の4千万分の1だそうですが、子供の頃の私は、どうやって子午線
の長さを計ったのだろう???…と不思議に思っていました。
日本には「尺貫法」という計り方があって、これもメートル法の施行前
まではずっと使われていました。
面白いのは、1尺が2種類あるということです。つまり、大工さんなど
が使っている1尺は「カネ尺」と云って1尺=30.3㎝ですが、服飾関係で
使う1尺は「クジラ尺」と云って1尺=38㎝なのです。
小学校の時に尺貫法を習いましたが、その頃の物差しは片側にセンチ、
もう一方にカネ尺が刻んでありました。
私は小学校で尺貫法を教わり、仕事ではヤード・ポンド法を覚えました
が、実際に職人さん達とやり取りする際は、皆さんクジラ尺を使っておら
れたので、クジラ尺も覚えなければなりませんでした。
意外に具合が良かったのは、クジラ尺の1寸はほぼ1インチ半に等しい
のです。ですから換算するのにとても楽でした。
例えば、ジャケットの両脇にポケットがありますが、この口の大きさは
ほぼ6インチなので、クジラ尺だと4寸になるのです。
こんな具合でクジラ尺とインチは問題なく両立していた訳です。
ところが、そこへ突然メートル法が施行され、しかもメートル法以外は
使用禁止!、メートル以外の物差は販売禁止!…になってしまったのです。
別に"販売禁止!"にしなくても良さそうな気がしますが、どうも日本のやる
ことは少々変だな…と思いますね。
ところが面白いことに、尺貫法の道具がないと困る人達の為にちゃんと
(?)闇市があって、クジラ尺を売っていたり、布地屋さんなどが内密に作ら
せて、お中元やお歳暮として届けてくれたということもありました。
罰則がなかったとはいえ、なかなか大胆なことをしたものです。
とにかく、このメートル法には苦労させられました。学校では習ってい
たものの仕事では使っていませんので、どうもイメージできないのです。
また、職人さんも同様でしたので、説明するのが大変でした。
最後に・・・日本では、何故カネ尺とクジラ尺があるのでしょうか?
しかも木や金のように硬いものにはカネ尺、布地のように柔らかいものは
クジラ尺と使い分けるようになった理由は何でしょうか?
どなたかご存知の方がいらしたら、ぜひ教えて下さい。