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#400.カヴァーツの話

Posted by KINN Tailor on 13.2020 生地の話   0 comments   0 trackback
 皆様、明けましておめでとうございます
 今年もブログを読んで頂き、ありがとうございます。
 本ブログも今回でちょうど400回になります。一時は300回を目途にやめ
よう…と思っていたのですが、何となく400回に辿り着きました。
 以前よりは回数が減り気味ですが、思いついた事や仕立ての風景などを、
今年もご紹介できれば…と思っています。

 今年最初の話は、久し振りに使用した生地「Covert Coating (カヴァーツ
コーティング)」についてです。
 私共が作る洋服生地の主力は、何といっても「Wool (ウール)」です。
一言で「ウール」と言っても、用途に応じで様々な工夫がなされています。
 その昔は機能性よりは丈夫さを重視していましたし、技術的な問題もあり、
今よりはずっと厚く重たい生地が中心でした。その内に、だんだんと柔らか
い物
軽い物などが流通し始めました。
 現在では丈夫さは考えず、デザイン重視の極薄の生地も出回っています。
 どのような生地を選ぶかは勿論お客様の好みですが、最近の傾向として
は、やはり柔らかく軽めの生地が好まれているようです。
 ただ昔ながらの厚手の生地も人気が復活しつつあるようで、私共の一部の
お客様からも、しばしばご注文を頂きます。
 厚手の生地の優れているところは、摩擦に強くシワになりにくい、そして
保温力があるという事です。こういった生地は主にオーバーコートレイン
コート
などに使用される事が多いのですが、その内の一つが「Covert」です。

 縦糸は梳毛糸(そもういと:長い毛だけを櫛で抜いた物)を使って強さを
出し、比較的角度の強い綾目になるように織ってあるのが特徴です。表に
ケバが無い仕上がりになっています。

 昨年末、あるお客様が「雨に強い生地」での仕立てをご希望されました。
早速生地屋さんに相談したところ、珍しく Covert が見つかりました。お客
様にも大変気に入って頂き、色違いでパンツを2本ご注文頂きました。海外
旅行でお使いになる…との事でしたので、シワになりにくい点もお気に召さ
れたのだろうと思います。

 仕上がった物をご紹介したかったのですが、ご注文から納品まであまり日
がなかったもので・・・今回は生地だけをご覧頂きます。

写真左:ロゴ  右:生地(左側が表)
ロゴ**  左側が表**

●仮縫いの様子
仮縫い中**

 久し振りに Covert を仕立てる事ができ、懐かしく・・改めて厚手の生地
いいなぁ…と思った次第です。

 改めまして、本年も宜しくお願い致します

#370.藍染の絹の話

Posted by KINN Tailor on 19.2018 生地の話   0 comments   0 trackback
 以前このブログで、藍で染めた絹生地の話を紹介した事があります(#39.
藍染の絹)。

 この生地は、繭から糸を紡ぐ事から始まり、糸を染め、手機で織って布に
する迄の工程が、全て手作業で行われます。
 #39.でも書きましたが、糸は鹿児島で紡ぎ徳島で藍染めをし、八王子
で織る
・・という段取りですので、特殊な技術だけではなく、手間も時間
もかかっている生地なのです。
 特に、本来の生地幅は58㎝なのですが、私の要望で75㎝迄広げて織って
貰っていますので、更に労力を掛けている事になります。

 あるお客様にこの生地を紹介したところ、大変気に入られて、すぐに一着
仕立てられました。
 そして暫くしてから「あの藍染めの絹でもう一着…」というご要望を頂き
ましたので、問屋さんに連絡したところ「これが最後の一反になります…」
と言われてしまいました。
 残念な事に、職人さんが高齢のためにお辞めになってしまった・・との事
でした。

 この藍染の絹も長い間使わせて頂きましたが、もう手に入らないというの
が何とも残念で、多少織りが違う58㎝幅の物がもう一反ある…と聞きました
ので、併せて取り寄せました。

 「藍染の絹」で仕立てた一着をご覧いただきます。

◇お客様の藍染絹ジャケット
シルク正面**

 藍独特の色味が絹という素材と合う事で、光沢のある美しい上品な藍色
変化した、素晴らしい逸品です。この生地がなくなってしまった事は、返す
返すも残念でなりません。

 問屋さんが、この生地を納めにみえた時に古風な大島紬を一緒に持って来
てくれました。
 こちらは模様を織るのにかなり苦労された・・と仰っていただけあって細
かい見事な柄に仕上がっています。
「これで、シャツでもどうでしょう?」・・と言われましたが、大変高価な
生地ですし、この柄を活かすのはやはり和服ではないか…と思いますので、
取り敢えずお預かりしている状態です。

※もし興味の有る方がいらっしゃいましたら、ご連絡頂きたいと思います。

◇藍染絹の大島紬
シルク生地**

シルク生地寄り**

シルク箱**

#367.麻の話

Posted by KINN Tailor on 08.2018 生地の話   0 comments   0 trackback
 今年はいつもの夏に比べ、麻服のご注文を多く頂きました。

 昔は「夏と言えば白の麻服」というのが定番で、春頃から麻ばかり仕立て
ていた記憶があります。ところが近年、夏用の「モヘア」(アンゴラヤギの
毛)が増えてきて、麻に比べシワになりにくい特徴があったため、麻に取っ
て代わって使われるようになりました。
 また、全体的に薄い生地が好まれるようになった傾向もあり、ただでさえ
シワができやすい麻は、薄くすると更にシワができてしまう事が敬遠されて
しまったのか…生地その物が減ってしまいました。

 麻の需要が減った時期は、20年位続いたでしょうか・・私は、シワになる
特徴も"味"があって良いと思っていましたので、何となく淋しい思いをして
いたのですが、薄い生地の流行りもどうやらひと段落したのか…最近また昔
のように肉の厚い麻の生地が見本に載るようになりました。
 麻の復活を内心喜んでいたところ、たまたまお客様のご要望と上手くタイ
ミングが合った訳です。

 そんな流れの中で、あるお客様から「大麻」について知りたい…というご
要望がありましたので、少しお話します。
 ひと言で「麻」といっても種類があります。衣料として使われているのは、
亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)の3種類です。
 私が今まで扱ってきた麻は亜麻から採れる繊維で「フラックス」と呼ばれ
ている物で、輸入生地では主流のようです。苧麻は日本では良く使われて
いるようで、小千谷縮(おじやちぢみ)などがあります。
 大麻についてはあまり知識がなかったため、少し調べてみたところ・・・
日本ではかなり古い時代から使われていて、特に神道では「ぬさ」と呼ばれ
"お清め"をする素材として用いられてきたそうです。麻の中では堅い部類
で、麻縄や麻袋に使われる事も多いようです。
 最近では、一般的な服地の布としても出回っていますが、フラックスに比
べるとやや堅い
仕上がりで、質問なさったお客様も実際に見本を見られて、
やはり「堅い」という印象を持たれたようでした。
 麻は質感が良く、肌に触れた感触が何となく"ひんやり"しているのが魅力
です。この流行が続いてくれる事を願います。

     *   *   *   *   *   *

 先日久々に、お得意様から真っ白の麻のスーツをご注文を頂きました。

◇お客様のスリーピース(ダブル)

〈正面〉                〈ベスト〉
麻正面**   麻べすと**

〈寄り〉
麻 寄り**
・生地は、アルスター・ウェーバーズ(ULSTER WEAVERS)社(UK)製
 の100% Linen (700g)

・夏らしい爽やかな風合いと高級感の相まった、極めて良質な生地です。

#356.リーロイドの生地

Posted by KINN Tailor on 23.2018 生地の話   0 comments   0 trackback
 私が金洋服店の社員として仕事を始めた頃(1950年頃)、店があった港区
の辺りには洋服屋を営んでいる家が比較的多くありました。
 そこで、個々で生地を買うよりはまとめて買った方が値引きをしてもらえる
・・・という理由から「購入組合」なるものを作って、年に2~3回仕入れをす
るようになりました。
 その第一回目の時に、私も父について神田の生地屋さんに行きました。今
では生地見本(バンチ)で選ぶのが当たり前になっていますが、当時はまだ
バンチはなく、現物の生地か大き目にカットされたその見本を見て選ぶよう
になっていました。その中にとても魅力的な生地があったので、父と相談し
て注文する事に決めたところ、店の主任が「実はその生地は、これからウチ
で売り出して行きたいと思っているメーカーの物なので、是非沢山買って下
さい!
」と言われました。それが「リーロイド(Learoyd)社」の生地だった
のです。
リーロイド社**

 リーロイド社について、簡単お話ししますと・・・
 英国で1800年代の初め頃から「産業革命」が起こり、蒸気機関を使った
工場があちらこちらにでき始めました。服飾業界においては、主に生地の
表面の汚れを落としたり、整えたりするような大型の機械が発達し、飛躍
的に生産技術が向上
していったようです。

機械1** 機械2**
◇技術向上、生産力向上のために次々に新しい機械が開発された

 英国のウエストヨークシャーの南西部にハダスフィールド(Huddersfield)
という場所があります。英国生地の聖地とも呼ばれている場所ですが、18
22年
ウィリアム・リーロイドがここに毛織物工場を作り、高級な生地を
作る事を目的として仕事を始めました。
 仕事は上手くいったようで、1800年代の終わり頃にはかなり大きな会社
になっていたようです。
ハダスフィールド**

 私がリーロイドの生地を特に気に入った理由は、手で触った時の感触が
とても良かった
事です。生地自体はそんなに厚くないのに、しっかりしてい
…という印象でした。かなりの出来を期待して仕立ててみましたが、結果
としては「しっかりしていながら、しっとりと身体にフィットする」という、
私の予想を遥かに超えた素晴らしい仕上がりでした。加えて色味や柄が綺麗
な事も、お客様に人気があった理由です。

 話をリーロイド社に戻します。
 1900年代に入ると、ジョージ国王マリー女王が(後にはエリザベス女王
も)リーロイド社を訪問され、その評価は世界中のバイヤーの注目を集める
事となりました。
 1964年には、高級ウールを使用した世界で最高価格の生地を発表する
など業界に話題を提供していましたが、1970年後半になると業界の競争
激化のもとコスト削減を求められ経営が厳しくなり、数社との共同生産を
始めるようになります。そして1994年には工場が火災に遭う!という惨事
により、ついには閉鎖となってしまうのです。

 リーロイド社がなくなってしまった事は大変残念なのですが、うちと付き
合いのある生地屋さんが、自身で年に数回英国へ行き、ストックとして残
っている生地を探して
来てくれます。
 そのお陰で、今でもこの素晴らしい生地を使う事ができるのです。

#349.ビキューナ(Vicugna)

Posted by KINN Tailor on 15.2018 生地の話   0 comments   0 trackback
 あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します。

 今年は例年以上に寒さが厳しい気がします。そこで2018年最初ブログ
は、高級コート地として知られている "ビキューナ"について話したいと思い
ます。

 オーバーコートに使われる生地は様々あります。昔の生地は、重さが少な
くとも700g(/平方ヤード)、物によっては800gもありました。
 今は、グラム/平方メートル(1㎡あたり◯◯g)で表示してありますから、昔
の方が表示してある重さが今よりも重かった(約1.2倍)事になります。
 最近は、どちらかと言うと重いコートは敬遠されているようです。では、軽い
コート地
は?…と言えば、まず思い浮かぶのが "カシミヤ"(cashmere)では
ないでしょうか。
 カシミヤは、カシミール地方のカシミヤゴート(山羊の一種)の毛を使った事
からその名が付いたと言われていますが、最近はモンゴルで獲れるカシミヤ
の方が有名かも知れません。
 他には、"キャメル"(camel)や"アルパカ"(alpaca)等がありますが、何と言
っても高級な生地としてで有名なのが "ビキューナ"でしょう。

 ビキューナは南米ペルー産の山羊の一種で、毛の色は所謂ラクダ色です。
この毛をそのまま活かした生地が「ナチュラルカラー」と呼ばれ特に珍重され
ています。ただ、ビキューナは生産量がとても少ないため価格がグッと⤴︎・・・
と言うか、大変高価になります。
 「ビキューナの生地を使って…」と言うご注文は、そう滅多にある事ではない
のですが、昨年末に一着頂戴しました。
 
◾️ビキューナ裁断の様子
ビキューナー1**

カット4**

*ご依頼されたお客様は、「生地の味を楽しみたいので、できるだけ余分な
 物を取り除いたデザインで」と仰られて、ポケットも作らず、本当にシンプル
 なダブルのロングコートにされました。



◾️仮縫い〜完成

仮縫い3**

ビキューナーコート完成**

*風合いと言い、光沢と言い…、それは素晴らしいコートに仕上がりました。

      *   *   *   *   *   *

 ビキューナの産地ペルーといえば・・・実は私共の店のすぐ近くにペルー
大使館
があります。ある日、その前を通りかかったら、何やら展示会を催し
てしていました。何となく興味が湧いて中に入ってみましたところ、ペルーの
特産品など展示していましたが、さすがにビキューナはありませんでした。
 説明員の方にビキューナの事などを質問したりしましたら、「今日は残念
ながらビキューナはありませんが、せめてこれでもお持ち下さい」と、可愛
アルパカの置き物をお土産にくれました。↓↓↓

◾️アルパカの置き物
アルパカ**
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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