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Posted by KINN Tailor on 06.2010 靴の話   6 comments   0 trackback
 私がこの仕事に就いた当時、洋服の流行は約30年で一回転すると云われて
いました。近年では短くなって15年位と云われています。
 お陰様で健康に恵まれ、仕事を始めて60年以上経ちましたので、このサイ
クルを3回程見てきたことになります。
 この間、多くのお客様や職人の方に出会い、色々教えて頂きました。近年
は私塾やセミナーを行っているお陰で若い方と話す機会も増え、とても刺激
を受けています。
 そんなたくさんの出会いや、今までに経験したことを、なんとなくお話し
したくなり「ブログ」を始めることにしました。

 記念すべき第一回目には、大変にお洒落で常に色々と工夫されるために、
私への要望やアイデアをたくさん出された方…として印象が強いN氏に登場
頂きましょう。


 #001.「エクセーヌの靴」

 私が大変お引き立てを頂いているお客様のN氏は、かつて大変珍しいもの
を作られました。

 東レが作った素材の一つに「エクセーヌ」という人工皮革がありまして…
私がこの方のジャケットのエルボーパッチにエクセーヌを使ってみたところ、
大変興味を示されて、「これで靴ができないかな?」とおっしゃいました。
 私には全く経験がなかったので何ともお返事しかねていましたら、「面白
いからやってみようよ!」とおっしゃって、当時頼んでおられたイギリスの
靴屋さんに注文を出されました。
 程なくイギリスから注文書と寸法表が届きましたが、それをお持ちになっ
て「メジャーの使い方は絶対に君の方が上手いんだから、靴の寸法を計って
くれよ」と言われます。
 これは責任重大だな…と思いましたが、とにかくお計りして寸法表に書き
込み、N氏は素材と一緒にイギリスへ送られました。

 しばらく忘れておりましたところ、ある日N氏が、「来た、来た!」と届
いたばかりの「エクセーヌの靴」を抱えて私の店へおいでになり、試着なら
ぬ "試履き" をされました。
 ところが少々窮屈そうなのです。これは採寸の失敗かな?…と思ってハラ
ハラしながら見ていましたら、その内になんとか履けたようでした。
 そしておっしゃるには「これは大したものだ、少し小さいかと思ったが、
履いたらピッタリで、全然余計な隙間がなくて実に具合が良い!」とお喜び
でしたので、ホッとしました。
 N氏は大変お気に召して、続けて2~3足注文されましたが、イギリスでも
エクセーヌの靴は大変珍しかったようです。

 エクセーヌは人工の皮ですが水洗いが可能ですから、ある意味では面白い
かも知れません。
 しかし「他にもエクセーヌの靴がある」という話は聞いたことがないので、
N氏の靴以外には存在しないのかも知れません。
    N氏の靴
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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