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#405.キャメル地の話

Posted by KINN Tailor on 23.2020 生地の話   0 comments   0 trackback
 前回、キャメルのオーバーコートを紹介しましたので、今回はキャメルの
生地
についてお話したいと思います。

 キャメルラクダは皆さんご存じのように、中近東やアフリカの一部に住
んでいます。背中には油分を貯めておけるコブがあったり、腹部には水を貯
える事ができる袋を持っていたり…と、いかにも砂漠で生活をするのに適し
た身体をしています。
 では、毛はどうか・・と言いますと、少々問題があります。
 布は縦糸と横糸を織って作ります。この糸ですが、天然の動物性繊維や綿、
絹などを紡いで作ります。仕上げる布の厚さやハリの出し方よって、1本取り
の事もあれば2~3本取りにする事もあります。よく "2PLY" などと表記され
ているの場合は、「2本取り」という事になる訳です。
 さて紡いでできた糸ですが、動物の毛には「スケール」(うろことも言う)
というヒゲのような物がたくさん出ています。これらが絡みあって布としての
柔らかさを出します。つまり糸を何本か撚った時に上手く絡んで1本の糸に
なり、それらの糸を縦横にして織った時に絡んで柔らかい布になる・・と
いう具合です。
 ところが、ラクダにはこのスケールがとても少ないのです。ですからラクダ
の毛だけで織ってしまうとあまり肌触りの良い物にはならない訳です。
 「キャメル地」と言うと、柔らかい印象をお持ちの方が多いと思いますが、
意外とそうでもないのです。
 そこで昔から、ヨーロッパ中部のサキソニー地方にいる羊の毛と混ぜて
織って柔らかさを出し
「キャメル」と詠っていたのです。

〈キャメル〉
キャメル

 若い方は「キャメル」というと、「キャメル色」を想像されるかと思いま
すが、私を含め70歳以上の方ですと、何と言っても「キャメルのコート」を
想うのではないでしょうか・・。
 そして、もう一つ思い浮かぶのが「キャメルの下着」です。「サザエさん」
などの古い漫画で、波平さんはじめ"お父さん”達が、下着に腹巻をした
姿で登場する事があります。
 男性は年配になると「ラクダ色の肌着長袖長ズボンを着る」という
のが一つの象徴になっていました。
ラクダの下着**

 では「ラクダの肌着」に、ラクダの毛は使われていたのか?…という疑問
が出てきます。
 当時私はまだ若かったですし、実際にラクダ色の下着を使った事もない為、
よくわかりませんが、ラクダの毛を考えると(前述した通り)ちょっと難しい
のではないか?…と思います。
 ちょっと調べてみたところ、ウールの地色の事を「キャメル」と表現する
…とありましたので、"キャメル色"の下着が、いつの日か"ラクダの下着"
と呼ばれるようになったのでは?…と推測します。
 これにつきまして、本当の事をご存じの方がいらっしゃいましたら、是非
コメントを頂きたいと思いますので、宜しくお願い致します。

 さて本題に戻りますが…最近はあまり見かけなくなったキャメル地。柔ら
かさではカシミアに負けるかも知れませんが、耐久性保温性、そして何年
着込んだ時の味は、キャメルに軍配が上がるのでは?…と思います。

#404.お客様の服_ボックスプリーツのポロコート その弐

Posted by KINN Tailor on 09.2020 お客様の服   0 comments   0 trackback
 先週ご紹介しました「ポロコート」を、実際にご覧頂きます。

お客様のポロコート

〈正面〉               〈斜め〉
正面** 斜め**
・ダブル 6ツ釦の3ツ掛け
・襟、ポケットのフラップ、カフスは広め 全て縫い目に飾り星を入れた


〈襟元〉               〈裏地〉
衿元** 裏地**
・胸ポケット、肩にも飾り星が入っているので、華やかな印象に
・鮮やかな色の裏地 表地との馴染みも非常に良い


〈後〉                〈ブリーツ〉
後** プリーツ**
・プリーツが背中の上の方まで続いている
・5枚重なっているが、厚みを感じさせない仕上げにする事ができた
・3段重ねのプリーツ 歩くたびにプリーツが綺麗に動く

〈重ね正面〉
重ね正面**
・#402で紹介したスポーツジャケットと合わせて…

     *   *   *   *   *   *

 3回に渡り、お客様の服をご紹介させて頂きました。
 スポーツジャケットから観て頂きましたが、ご注文自体は、このポロコート
の方が先になります。
 キャメル地をご希望でしたので、色々と探したところ「Josua Ellis」のなか
なか良い生地が見つかり、このポロコートをお仕立てしました。
 その後、(前述しましたように)お客様がサイモン・クロプトン氏のブログ
を読んでいたところ、スポーツジャケットに合う生地として紹介されていた
生地が「Josua Ellis」のエスコリアルウールだったので、縁を感じて、ご自分
のジャケットの生地用にお求めになった…という事でした。

 仕立て屋をしていますと、ご注文を頂く際に、お客様がその洋服を注文さ
れる目的デザインの拘りなど、色々と伺う事ができます。
 その時々で様々なストーリーがあり、私もお客様と同じ気持ちになり、胸
が弾むものです。
 今回も思わぬ縁があり、良い物に巡り合う時は何かしら素敵なエピソード
がある
ものなのだ…と思いました。
 特にこのコートは、私としても「悩んだ末・・」でしたので、作る前のワク
ワク感よりは、仕上がった時の喜びが"ひとしお"でした。
 コートをお召しになり、歩くたびにプリーツが綺麗に動いていたのを見て、
これは上手くいった!」と自賛したものです。

 このブログの初期に、よく登場していたお客様のN氏は、「ロングコートは
裾の揺れが優雅
でなければならない・・」と仰っていましたが、まさにその
通りで、優雅さと華やかさがありました。
 何年経って味わいの出て来た頃、またこのポロコートを拝見するのも楽しみ
です。

#403.お客様の服_ボックスプリーツのポロコート その壱

Posted by KINN Tailor on 24.2020 お客様の服   0 comments   0 trackback
 今回も、お客様の服をご紹介します。
 前回、「スポーツジャケット」をご紹介しましたが、同じお客様の「ポロ
コート」
も、大変凝ったご注文でしたので、是非ご紹介したいと思います。

 お越し頂いた際に雑誌をお持ちになり、「このポロコートと同じデザイン
で…」とおっしゃいました。生地はカシミアではなく「キャメル」がご希望
との事でした。 キャメルは以前は良く使われていましたが、最近はあまり
お目に掛からなくなりました。それでも英国製の質の良いキャメルを運良
く入手でき、「これはいい!」と喜んだ迄は良かったのですが、問題はその
デザインでした。
 持参された雑誌には、ルチアーノ・バルベラ氏がポロコートを着て、幾つ
かポーズを取っている写真が載っていました。
 特徴的だったのが後姿で、「ボックスのプリーツが3段重ねて取ってある」
デザインでした。(下図参照)。

ポロコートデザイン**

 雑誌には、裾から腰の辺り迄の写真しかありませんでしたので、「多分、
背中にヨークを付けてプリーツを消しているのだろう」…と思い、その事を
お伝えしたところ、「ヨークは好きでないので、プリーツを背中まで付けて
欲しい」との事でした。・・・さて、ここから散々悩みました。
 プリーツ3段と言っても一番奥のプリーツは短めでしたので、裏から別布
を付ければいい筈なのですが、上の2段は畳んで重ねる事になりますので、
生地が5枚重なる事になります。
 5枚重ねた状態では背中が厚くなり過ぎるのでは?…とか、襟元が厚くて
衿が綺麗に付かない
のでは?…とか。そして背中の真ん中に縫い目がない
デザインなので、後身頃を1枚で裁つ事になるが、縫い目がないという事は、
一番奥の途中から付けるプリーツの縫い代などはどうすればいいのか?…
等々、心配事が山程ありました。

 とりあえず生地を畳んで厚さを確かめ、どうにか薄くする方法はないか
…を、まず考えました。
 今迄、かなり斬新なデザインの服も作ってきたつもりでしたが、デザイン
面では今回が一番悩んだかも知れません。
 色々とやってはみたものの結局良い方法が見つからず、仮縫いの際にもう
一度お客様と相談しました。
 お客様は、「厚くてもいいので、プリーツのままヨークは付けないで…」
とおっしゃいましたので、5枚重ねたまま背中を作り、襟元の内側の布
"さらって"付ける事にしました。
 散々悩みましたし、仕上がりが心配ではありましたが、でき上がってみる
と、とてもスッキリ!…いい味のコートになり、本当にホッとしました。

 その素敵なコートの写真は、次回たっぷりご覧頂きたいと思います。

〈つづく〉

#402.お客様の服_スポーツジャケット

Posted by KINN Tailor on 10.2020 お客様の服   0 comments   0 trackback
 今回ご紹介するお客様の服は、とても風合いの良い素晴らしい生地で仕立て
スポーツジャケットです。
 ご注文頂きましたのは、私共のお客様の中では比較的若い方ですが、海外の
著名なテーラーや色々な方のブログなどを読んで熱心に研究されているそうで、
既にご自分のスタイルをしっかりとお持ちでいらっしゃいます。
 今回はそのお客様が直接仕入れられた生地「エスコリアル ウール」を使って、
スポーツジャケットを仕立てました。


お客様のスポーツジャケット

表地:Joshua Ellis "ESCORIAL TWEED"

〈正面〉               〈脇〉
スポジャケ正面** スポジャケ脇**
・前は三つボタンの段返り 
・イタリアのデザインがお好みの為ゴージは高めで、ラペルの返りがゆったり
 するようにした
・大きめのパッチポケットと、脇の強めの絞りがスポーティな印象


〈後〉  
スポジャケ後**
・ご要望で背中にゆとりを持たせ、腰を絞ったデザインに

〈袖〉                〈裏地〉
スポジャケ袖** スポジャケ裏地**
・袖は本切羽の三つボタンで重ね付け
・薄い草色の裏地は華やか過ぎず、ツィードの色味を引き立てている


 お客様によりますと、英国人ジャーナリストのサイモン・クロプトン
のブログで紹介されていた生地だそうです。
 エスコリアウールはカシミヤよりも細く、繊細な仕上がりなのに、カシ
ミヤよりも耐久性に優れている
のだそうです。確かに、お仕立てをして
いた時に、驚くほど柔らかく、肌触りが良いけれども、力がない生地では
ないな・・という印象を持ちました。
 たまたま茶系のジャケットを考えていたところ、この生地の事を知り、
ご希望通りの茶色があったそうですが、そういった偶然の出会いがある方
は、洋服とのご縁も良い
のだと思います。
 お召しになった感想は、生地の素晴らしさは勿論の事、保温性も抜群だ
そうです。お客様のお陰で、また新しい素敵な生地で仕立てさせて頂く事
ができました。

#401.白内障の手術の話

Posted by KINN Tailor on 27.2020 白内障の話   0 comments   0 trackback
 昨年の11月に「老人性白内障」の手術の為に入院しました。
 実は8年程前に、片方の眼の手術を済ませて、直ぐにもう一方の目も手術を
する予定だったのですが、何となく調子が良かった為、ズルズル延ばし延ば
しにしていました。
 昨年の初め頃から徐々に不自由を感じるようになり、これはもう一方の眼
も手術
をせねば!…と覚悟を決めたのですが、以前手術をして下さった先生
は、もういらっしゃらなくなっていました。
 そこで、いつも診て頂いている内科の先生に、近くの眼科の先生を紹介し
て頂き受診したところ、やはり「手術をする時期」…という事でした。
 その先生が紹介して下さった、実際に「白内障の手術をして下さる先生
は、「慈恵医大病院」にいらっしゃるという事でした。
 前回は、かなり遠い病院を紹介され、事前の検査や術後の検査もそこまで
行かねばならず、とても大変でした。そういう事が続くのが煩わしく、もう
一方の眼の手術が延ばし延ばしになっていた理由でもあるように思います。

 このブログを読んで下さっている方は、まだ「白内障」にはなっていない
と思いますが、誰もが"通る道"かと思いますので、参考にして頂ければ…
と思います。
 まず手術の1か月前に検査をします。これは「眼」だけではなく、一般的
な健康診断で、手術に耐え得るか…を判断する為のようです。
 そして手術の3日前から、朝・昼・晩・就寝前と1日4回、「ガチフロ目薬
という、感染予防の薬を飲みました。
 当日は、軽い朝食をしてから朝8時ごろに病院に入りました。すぐに手術
待合室に案内され、手術前にもまた薬を飲みました。これが結構面倒で、
30分ごとに薬を3回…つまり1時間半かけて全ての薬を飲みました。
 そしていよいよ手術です。少し後ろに傾いた椅子に座った状態で、麻酔
を目に流し込まれました。

 ここからが、("当たり前"と言われればそれ迄でですが)皆さんビックリ
なさいます。
 白内障を治す為には眼球にメスを入れなければなりませんので、「目を大
きく開いたままでいて下さい!
」と言われます。つまり目を開けた状態です
から、先生がメスを近づけて来る様子などが全て見えている!訳です。
 ・・手術は10分程度で、痛みは全くありませんが、やはり目に何かされて
いる様子を主観で見る訳ですから、かなり緊張します。
 術後は車椅子で病室へ移されました。一応、大事を取ってその日は病院
に泊まる事にしていたのですが、昼食と夕食時以外はほぼ眠っていました。
 気持ちは"大丈夫"と思っていても、身体の方は想像以上に堪えていた
だろうな…と思います。

 翌朝の検査の時、眼帯を外すと、周りがパァ~っと明るくハッキリ
見えて少々驚きました。
 先生が仰るには、お陰様で手術は大成功で、0.2しかなかった視力が一気
1.0まで回復したそうです。
 手術が上手くいったので、その後の検査は慈恵医大病院ではなく、最初に
行った近所の眼科でいい…と言われたのも大変有り難かったです。
 その後は、4種類の目薬を1日4回、1か月間点眼しなければならず、これが
結構大変でした・・が、もっと大変なのが「入浴」です。お風呂に入っても
いいけれど顔を洗ってはいけないのです。顔は拭けばどうにかなりますが、
髪を洗えない事になります。
 床屋に行きましたが、毎日という訳にもいかず・・悩みましたが、フッと
思いつき、水泳用のゴーグルをしてお風呂に入ってみました。これが大正解
で、目を保護しながら無事にシャンプーをする事もできました。

ゴーグル その2

 手術の技術は、日々どんどん進歩していますから、皆さんがご厄介になる頃
にはもっともっと簡単になるといいですね。
  

プロフィール

KINN Tailor

Author:KINN Tailor
服部晋(はっとり すすむ)
金洋服店 2代目店主
10代半ばから父・金生に師事し、洋服作りを修業。
伝統的な裁断・縫製技術を磨きながら日々研究を重ね「斜面裁断」や「プルダウン」など独自の技法を開発。
近年では後進指導のための私塾やセミナーなどを開催する一方で、技術継承のためにDVD制作にも積極的に取り組んでいる。

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